「ライオンがいるぞ!」 鉄道各社が悩む鹿除け対策 上田電鉄は小諸市動物園「ナナ」の“ふん”おかげで手応え
上田電鉄(上田市)は本年度、線路内に侵入するなど列車運行の妨げになる鹿対策として、鹿が嫌うライオンのふんを水に溶かして線路に散布する取り組みを始めた。小諸市動物園にお願いし、雌ライオンのナナのふんを利用。同社運輸部は「鹿の目撃件数が減り、今のところ効果が出ている」としている。
運輸部によると、昨年から別所線八木沢―別所温泉間で運転士が鹿を目撃する件数が増加。昨年9月には列車と接触し、車両の安全確認のため数分間の遅れが出た。対策として今年7月、ライオンのふん2、3キロほどを45リットル入りのバケツで水に溶かし、同駅間の線路約100メートルに散布。その後、鹿の目撃件数はほぼなくなったという。
この試みは業界誌やネット情報に載っている県外の鉄道会社の取り組みを参考にした。JR東日本盛岡支社(盛岡市)は、ライオンのふんの成分を使った薬剤を地元の岩手大と共同開発し、10年以上散布を続けている。昨年度は鹿との衝突事故が多い釜石線と山田線の計約7キロに散布、一定の効果が出ているという。
ただ、同支社広報室は「散布のみでは鹿との衝突などを全て防ぐのは難しい」と説明。侵入防止ネットの設置やレーザー光の照射など「さまざまな対策を試している」とする。上田電鉄はコストや散布区間の短さを考慮し、薬剤ではなく、ふんそのものを試験的に使った。小諸市動物園にはライオンはナナ1頭しかおらず、2、3キロのふんをためるには約3週間かかる。同社運輸部は鹿の目撃情報を注視しつつ、「散布しながら効果の持続期間などを確認していきたい」としている。