信州人のソウルフード「牛乳パン」 ルーツは長野県駒ケ根市の“説”検証 人気は都内にも広がる
長野県民に親しまれる「牛乳パン」。最近は県外でも人気が広がったり、新商品の開発に業者が乗り出したり、注目が高まっている。牛乳パンは駒ケ根市在住のパン職人が最初に作ったという説があり、市は2018年に「牛乳パン生みのまち」を宣言。県内各地の業者の牛乳パンを集めた販売イベントを市内で企画するなど、魅力の発信に力を入れている。(徳永みなみ)
◇
東京・銀座の県情報発信拠点「銀座NAGANO」。売り場の中央に県内業者の数種類の牛乳パンが並ぶコーナーがある。来店客の目線に近い棚に、すずらん(駒ケ根市)の牛乳パン(255円)も。5日も、訪れた客が「牛乳パンって何だろう」「おいしそうだね」と立ち止まって手に取り、用意した計176個は午後3時に完売した。
県内の魅力ある商品を発信しようと、銀座NAGANOでは10店以上の牛乳パンを日替わりで販売。平日でも昼ごろに売り切れる日がある。同拠点の斉藤里絵次長は「大きくてクリームが詰まっていてインパクトが強い。レトロな包装も手に取る要因の一つでは」と人気の理由を推測する。
この日、ともに東京都板橋区の高野祐輔さん(26)と松本実晴さん(26)は2個を買った。千曲市出身で「実家にいた時によく食べていた」と言う高野さんに対し、都内出身の松本さんは初めて購入。牛の絵柄の「包装がかわいい」と辰野製パン工場(辰野町)の牛乳パン(237円)を選んだ。同じパンを買って食べた名古屋市のパート従業員喜邑(きむら)恭子さん(52)は「ふわっとしていておいしい。別のお店の商品も試したい」と話した。
牛乳パン人気を受け、すずらんは、駒ケ根市赤穂で運営する農産物加工販売施設「すずらんハウス」で「牛乳パンのクリーム」の商品化に力を注ぐ。好きなパンに塗って自分で牛乳パンを作る楽しみの提供と、販売中の牛乳パンに使うクリームの改良を目指して約3年前、開発に着手。生クリームと牛乳成分を攪拌(かくはん)することでバタークリームのような仕上がりになるという。
課題は日持ちと塗りやすさだ。要冷蔵のクリームを安全に長期間楽しめ、軟らかく滑らかで塗りやすい製品にしようと、来年春の販売を目指して試行錯誤を続けている。米山豊取締役営業部長(55)は「都内での人気はうれしい。ご当地パンとして駒ケ根の観光につながればいい。持ち帰ったクリームで家でも牛乳パンが楽しめる。そんな商品に育てたい」と張り切っている。
【関連記事】
■牛乳パンの「生みの親」を駒ケ根市で発見‼ 65年前の“誕生秘話”を語る 「ある日、来店したある女性が…」