PROLOGUE
保険会社は、契約者の事故によって保険金の支払いが発生するため、将来の支払いに備えた準備金を用意する必要がある。確率的な事象を考慮した”将来の支払いと収入”を予測計算するのが、保険業界における「決算会計システム」だ。今回のお客さまである大手保険会社でも、本システムは基盤として導入されていた。しかし2025年から保険会社で適用される会計基準が切り替わることになり、既存システムで使用している国内会計基準から国際会計基準(IFRS)へとシステム改修を余儀なくされた。基準の切り替わりに先立ち、コムチュアの若手社員5名がシステム改修に挑む。
PROJECT MEMBER
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林 優太
デジタルイノベーション本部
データサイエンス・AI第二部
チームリーダー担当:プロジェクトマネージャー
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伊藤 栞
デジタルイノベーション本部
データサイエンス・AI第二部
サブリーダー担当:業務支援、試験運用
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堀内 和仁
デジタルイノベーション本部
データサイエンス・AI第二部
サブリーダー担当:運用保守
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齊木 雄高
デジタルイノベーション本部
データサイエンス・AI第二部担当:要件定義、基本設計、開発
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加藤 真依子
デジタルイノベーション本部
データサイエンス・AI第二部担当:業務支援、基盤更改のサポート
膨大なプロジェクトに対し、
一人ひとりが異なる領域を担当
それぞれの担当業務を教えてください。
林
システムの改修に必要な作業が膨大であったため、メンバーによって担当領域は異なります。私はプロジェクトマネージャーとして、主にシステムの開発サポートや運用・保守を担当しています。
堀内
私は保険会社の収支を予測する時価システムの開発、運用・保守を担当しています。作業工程の中では契約者の性別や年齢などの特性情報を分析する必要があったため、ビッグデータとしてシステムに取り込み、IFRS導入時にも問題なく収支予測が可能となるように準備を行っています。
伊藤
私は林さん、堀内さんと一緒に運用保守を行いながら、検証用データを利用して、主に改修中のシステムの試験運用を主に担当しています。また、堀内さんが開発している時価システムのテスト運用も実施しております。
加藤
私は伊藤さんが試験運用をするために必要となる、作業工程の分類を担当しています。作業工程によっては、自動で実行するものもあれば、手動調整が必要になるものもあるため、分類を管理するのに最適な「スケジューラー※1」の検討や、分類登録のための方針決めを担当しています。
齊木
私は大手保険会社さまのグループ会社へシステムを移植する工程を主に担当しています。また、お客さまからシステムのカスタマイズを要望されることもあるため、臨時でその開発も担当しております。他メンバーが大手保険会社さまにて改修対応しているシステムを、グループ会社でも問題なく利用できるように要件定義から基本設計、開発まで行いました。
※1:スケジュールを管理するプログラム
自ら課題を探し出し、
解決に向けて行動する
みなさんそれぞれが違う領域をカバーしていたのですね。
改めて、今回のお客さまが抱えていた課題を教えてください。
林
今回のプロジェクトが発足した最たる理由でもありますが、会計基準が2025年に国内会計基準から国際会計基準へ切り替わる、ということですね。
堀内
もともと保険会社では国内会計基準を基に決算報告をしていたので、その基準を変更することによる影響はとても大きいです。システムの改修も一筋縄ではいきません。
伊藤
そうですね。現在開発中のシステムには、今後本格的に国際会計基準(IFRS)を導入し業務を遂行するにあたり、運用面・性能面で多くの課題がありました。まずはその課題を見える形にして、一つひとつ解決に向かって検討していく必要がありました。
なるほど、それは大きな課題ですね。
導入に向けて苦労した点はどんなところですか?
林
まず第一にメンバーのほとんどが4年目以下の社員だったこともあり、チームとして統制をとることや知識不足を補うことに苦労しましたね。
加藤
特に私の場合は入社から1年も経っておらず、かつ初の案件だったこともあり、業界知識どころかIT知識も不足している状況でした。システムも複雑・膨大で、全体像を把握することが難しく、その点では苦労が絶えなかったです。
ただそうも言っていられませんから、通勤時間を利用してWebサイトや損害保険システム関連の書籍を読んだり、分からないことは先輩方に質問したりして、知識を補っていきました。
林
お客さまも専門的な保険用語はかみ砕いて説明くださったので、もちろん努力は必要でしたが、調べれば対応できることも多かったです。
林
一番苦労したのは、過去データの整理です。IFRSに切り替えるためのデータ分析には、10年以上の過去データが対象でした。中には分析基盤が導入される前のデータや、運用の方向性が決まっていないデータも山ほどあり今後使えるデータにするにはどうすべきか考えるのに、とても苦労しました。ただ、お客さまも専門的な保険用語はかみ砕いて説明くださったので、もちろん努力は必要でしたが、調べれば対応できることも多かったです。
伊藤
それから、IFRSの導入まであまり時間が無いですが、誤りが発生してはいけないシステムであるため、本番相当のテストを何度も実施する必要がありました。現行作業の合間をぬったタイトなテストスケジュールとなったことで、関係者とのスケジュール調整に苦労しました。試験的に導入している段階のため、突発的なトラブルが起きて計画通りに実行できないことも多くありました。
それは大変でしたね。
ではどのようにして切り抜けたのですか?
林
そうですね。大変だからこそ、少しでもトラブルを防ぐために、お客さまやメンバー関係なくコミュニケーションを密に行うよう心がけました。過去の業務資料の確認はもちろん、研修で得た知識や気づきを全員に共有するといった活動を繰り返していく中で、気軽に相談し合える関係を築き上げました。
伊藤
また日々の業務の中で効率化できるところはツールを作成し、ミスなく作業スピードをあげられるよう工夫しました。
堀内
お客さまの業務の中には、いまだに人力で取り組んでいる部分も多かったですからね。システム化して効率化できる部分は可能な限り自分たちから提案・発信することを心がけました。
自分たちからお客さまに提案し、
さらなる付加価値の提供を実現したんですね。
林
はい。こうした心掛けが功を奏したのか、お客さまとはもう4年のお付き合いになります。ここまで関係を継続できているのは、案件を通じてお客さまからの信頼を得ることができているからかな、と感じています。
齊木
そうかもしれないですね。実は以前、「コムチュアから来てくれる方々って、皆さん責任感があって、自分たちで仕事を見つけて対応してくれますよね。いい社員が集まっているのですね」と言っていただいたことがあります。自分たちの行動がお客さまからの信頼につながっていると思うと、嬉しくなりますね。
伊藤
私も、参画当初は決まった業務だけをお客さまから依頼されることが多かったのですが、段々とプロジェクト全体の管理なども任せていただけるようになり、信頼していただけたと感じています。
「一人ひとりがリーダー」の
強いチームをめざして
プロジェクトを通して得たもの、また今後の展望は何ですか?
堀内
以前担当していた案件は金融業界だったので、初めは戸惑いましたが、結果として新しい業界知識を得られたことは大きな財産になったと感じています。今後は業界知識を生かし、お客さま目線で提案できる人材になりたいです。
加藤
「新人」に関係なく、次々と仕事が回ってきたため、業務知識はもちろん、実務経験を通して社会人の基礎を学ぶことができたことはとても大きかったです。
林
私は入社当初から参画していたこともあり、このプロジェクトで業務知識や物事の進め方、仕事の進め方を一から学ぶことができました。
今回のプロジェクト体制は少し特殊で、「リーダーがチームを引っ張っていく」というよりは「メンバー全員がそれぞれ異なった領域を担当し、自ら作業内容を計画立てて取り組む」形式だったので、一人ひとりが責任感を持ち、リーダーシップを発揮して取り組めたことも貴重な経験だったと思います。今後はそれぞれがチームを引っ張っていける、一人ひとりがリーダー的な存在のチームをつくり上げていきたいです。
伊藤
「一人ひとりがリーダー」という意識をもって対応できたおかげか、それぞれの現場で全員が存在感を放っていたように感じています。新人の時は周りが優秀で、自分の存在意義を感じることができなかったのですが、今回の案件ではお客さまから「伊藤さんだから上手くいったよ」というお言葉をいただくことができ、成長を実感しています。今後はさらに担当領域を広げ、リーダー意識を持ったメンバーとして活躍していきたいです。
齊木
私はグループ会社さまへの移植案件ということで他メンバーとは担当領域が異なっていましたが、すぐ近くにお手本となる先輩がたくさんいたので、大変勉強になりました。これから新人が案件参画することが決まっているので、お手本となるリーダーを目指し、そして先輩方を越えていけるような存在になりたいです。