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コラム
風刺画で読み解く中国の現実 Superpower Satire (CHINA)
歴史は繰り返す──史上2回目の「洋務運動」の失敗で、再び没落する中国
©2022 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN
<ナンバー2だった李克強の降格・引退、胡錦濤を途中退席させるなど、「一党独裁」から毛沢東時代の「一尊独裁」に戻ったことを世界に宣告。「一尊独裁」は、清朝末期を彷彿させる>
中国共産党の第20回全国代表大会(以下「二十大」)について、未来の歴史家はこう書くだろう。この会議で中国は一党独裁政権から、さらに悪い毛沢東時代の「一尊独裁」政権に戻ったことを世界に宣告した、と。
二十大の開催前、「習下李上」の噂が中国語のツイッターユーザー間で拡散した。習近平(シー・チンピン)国家主席は降格し、李克強(リー・コーチアン)首相が昇格するという意味だが現実は真逆だった。
李は来年、首相から降りる。共産党の最高指導部である政治局常務委員会メンバーは習以外すべて習の腹心である。共産党の集団指導体制による独裁時代が終結し、これからの中国が習1人による独裁時代を迎えることは明白だ。
特に、二十大の閉幕式で前国家主席の胡錦濤(フー・チンタオ)が目の前の書類を見ようとしたとき、前例がない途中退席を促された件をめぐり、政治的な臆測が飛び交っている。
習は既に胡などの前指導者を眼中に置いていない。これからの中国は共産党の天下ではなく、習の天下である。官僚が出世できるかどうかの基準は、党に対する忠誠度から習に対する忠誠度に転換した。
例えば今回の最高指導部に入った前上海市党委員会書記の李強(リー・チアン)。李強は上海在任中、習のゼロコロナ政策を強制的に実施することで上海市民を苦況に追い込み、自殺などの「非正常な」死亡事件も起きた。
なのに、責任を問われるどころか、政治局常務委員会の新メンバーに入り、来年3月には第8代首相に就任する見込みである。能力より従順さと忠誠心のほうが重視されるのは、「一尊独裁」の特徴の1つだ。
さかのぼること19世紀、1860年代から1890年代にかけて、清朝は国力増強を目指し、ヨーロッパ近代文明の科学技術導入を進めた。中国近代史における有名な「洋務運動」だが、最終的に清政府の時代遅れの政治体制のせいで失敗した。
洋務運動と同じように、1980年代から改革開放によって開かれた世界との交流のドアも、習近平の「一尊独裁」政府により閉められるだろう。
中国史上における2回目の洋務運動の失敗だ。歴史は繰り返す。100年以上隔っているが、今の赤色帝国と大清帝国の末期はよく似ている。
ポイント
一尊独裁
一尊とは、ある地域の思想や制度の唯一の権威である人物のこと。司馬遷の史記に書かれた中国語の成語「定於一尊」に由来する。2018年頃から習近平に対して使われるようになった。
李強
1959年生まれ、63歳。浙江省出身。元排水・かんがい施設労働者。浙江省政府でキャリアを積み、省トップだった習近平に秘書役として仕え、出世のチャンスをつかんだ。
2022年11月15日号(11月8日発売)は「日本人が知らない アメリカの変貌」特集。中間選挙が示した「政治の衰退」。この数年の政治・社会・経済の変化を現地からの最新報告であぶり出す
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