アメリカ人の心の奥底にある恐怖と嫌悪感

 アメリカのサブカルチャーの泰斗であるカート・アンダーセンは次のように説明する。

 アメリカで陰謀論が社会の傍流から主流に入ってきたのは80年代のロナルド・レーガンの時代。それが完成したのは、半数以上のアメリカ人がネットにつながるようになった2000年代のこと。そして、フェイスブックやツイッターなどSNSの利用が拍車をかけ、陰謀論はアメリカに大きな徒花を咲かせた。

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 トランプが大統領になると決意したきっかけは、アメリカ人の心の奥底にある2つの気質と結びついた新たな陰謀論が人びとの間に根付いたと信じたからだ。その気質とは、非白人や外国人への恐怖と嫌悪感である。また、トランプは、政治はショーでありでっち上げだとアメリカ人の一定数が信じるようになるまで待ってから、大統領選挙に出馬した(『ファンタジーランド』)。

 12年の大統領選挙に出馬しようと考えたトランプは、初の黒人大統領となり再選を目指していたオバマに対し、ケニアで生まれたので大統領になる資格はない、という国籍陰謀論を主張し、メディアの注目を一身に浴びた。しかし、オバマが正式な出生届を公開すると、トランプは陰謀論の撤回に追い込まれると同時に、自分自身の大統領選出馬を見送ることを余儀なくされた。

 その直後、ホワイトハウス特派員協会の晩餐会に招かれたトランプは、オバマによって陰謀論を逆手に取られ、嘲笑の対象となった。