アメリカ人の陰謀論好き

 Qアノンにしろ、“闇の政府”にしろ、アメリカ人はどうしてここまで陰謀論にのめり込むのか。日本人からすると、アメリカ人の陰謀論好きは理解を超えている。だが、そこにはアメリカの歴史が深く絡んでいた。アメリカ人の陰謀論好きには、この国の原型がキリスト教の信教の自由のために作られたことが深く関係している。

 また、キリスト教と陰謀論には親和性がある。

 キリスト教では、この世界の背後には神という目には見えない支配者がいて、自らの意思で宇宙全体を導き、計画を実行しているというのが、その基本的な考え方。現実世界で見えている点と点を結ぶと、いつの間にか大きな絵が浮かび上がってくる。これは陰謀論と同じ構図だ。

 アメリカは近代の合理主義と啓蒙主義から生まれた国なので、物事はすべて合理的に進むという歴史的認識がある。だから、少しでも不合理なことや、意図せざる物事が起き始めると、何かがおかしいのではないか、だれかがよからぬことを企んでいるのではないかという論理が自然に発生する。

 説明のつかないものを、どうにかして納得しようとする時、キリスト教の基本構造とアメリカ固有の合理主義史観が合わさることで、陰謀論の温床ができあがる(「中央公論」21年5月号 国際基督教大学教授・森本あんり談)。

 アメリカ史において陰謀論の対象とされてきたのが、魔女やカトリック教徒、フリーメイソンやアメリカ先住民などである。

 トランプが2016年に大統領になったことと、陰謀論がアメリカの隅ずみに浸透したことには深い関係がある。