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主な人権課題

主な人権課題

 

はじめに

 

「人権」という言葉からあなたはどんな印象を受けますか。

「とても大切なもの」それとも「何だか堅苦しくて難しいもの」,「自分には関係ないもの」でしょうか。

 

「人権」とは「すべての人々が生命と自由を確保し,それぞれの幸福を追求する権利」あるいは「人間が人間らしく生きる権利で,生まれながらに持つ権利」であり,だれにとっても身近で大切なもの,日常の思いやりの心によって守られるものだと私たちは考えています。子どもたちに対しては,「命を大切にすること」,「みんなと仲良くすること」と話しています。

 

「人権」は難しいものではなく,だれでも心で理解し,感じることのできるものです。しかし,現実の社会では,保護者からの虐待によって子どもの命が奪われたり,パートナーからの暴力によって心や身体に深い傷を受けることがあります。高齢だから,障害があるから,同和地区出身者だから,外国人だからということで差別を受けることもあります。ハンセン病に対する誤った認識や偏見により,現在でも故郷に帰ることができない方もいます。どれも悲しく痛ましい人権問題です。このようなことがどうして起こるのでしょうか。どうすればこのようなことをなくせるでしょうか。

 

ここでは,まず,日本国内でどのようなことが主な人権課題として取り上げられているのかについて触れ,それに続いて,法務省の人権擁護機関の仕組みや活動の概要,国際社会における人権擁護のための取組のあらましを説明しています。 皆様にこのホームページをお読みいただき,人権についての理解を一層深めるきっかけにしていただければ幸いです。

 

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主な人権課題(1)

 

女性

 

今でも,「女だから…。」などと言う人がいます。女性というだけで社会参加や就職の機会が奪われることはあってはなりません。また,女性を,パートナーからの暴力,性的な嫌がらせ,ストーカーなどから守る必要があります。

 

男女平等の理念は,日本国憲法に明記されており,法制上も男女雇用機会均等法などによって,男女平等の原則が確立されています。しかし,現実には今なお,例えば,「男は仕事,女は家庭」といった男女の役割を固定的にとらえる意識が社会に根強く残っており,このことが家庭や職場において様々な男女差別を生む原因となっています。

また,夫・パートナーからの暴力や職場等におけるセクシュアル・ハラスメント,性犯罪などの「女性に対する暴力」の問題も,女性の人権に関する重大な問題の一つです。

 
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このような女性の人権問題に対しては,近年,国際社会においても高い関心が寄せられており,平成11年(1999年)には,国連総会において,11月25日が「女性に対する暴力撤廃国際日」に指定されました。平成12年6月5日から9日にかけて行われた「女性2000年会議」では,女性に対する暴力への更なる対策の必要性などが強調されました。

国内においても,平成11年6月に,男女共同参画社会基本法が施行され,平成12年12月に男女共同参画基本計画(平成17年12月基本計画(第2次)策定)が作られました。同法の目的や基本理念に関する国民の理解を深めるため,毎年6月23日から29日までの1週間が,「男女共同参画週間」とされ,男女共同参画社会の形成の促進を図る各種行事等が実施されています。女性に対する暴力等への取組については,平成13年10月に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」が施行され(平成20年1月施行の改正法により保護命令制度が拡充),毎年11月12日から25日までの2週間に「女性に対する暴力をなくす運動」が実施されるなど,様々な取組が行われています。


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法務省の人権擁護機関では,専用相談電話「女性の人権ホットライン」を全国50か所の法務局・地方法務局に設置し,女性の人権問題に詳しい人権擁護委員や法務局職員が,夫やパートナーからの暴力,職場等におけるセクシュアル・ハラスメント,ストーカー行為といった女性をめぐる様々な人権問題に関する相談に応じるとともに,啓発活動や調査救済活動に取り組んでいます。

(平成22年度版「人権の擁護」より抜粋)

 

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主な人権課題(2)

 

子ども

 

「いじめ」を苦に自殺,親の養育放棄で乳幼児が衰弱死,体罰で中学生が重傷,児童ポルノをインターネットで販売した男性を逮捕…。

子どもが被害者である報道の一部ですが,このように痛ましい事案があとを絶ちません。子どもも一人の人間として最大限に尊重され,守られなければなりません。

 

子どもの人権については,平成元年(1989年)の国連総会で,子どもの人権や自由を尊重し,子どもに対する保護と援助を進めることを目的とした「児童の権利に関する条約」(54頁参照)が採択され,我が国も平成6年(1994年)4月にこの条約を批准しました。


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<いじめ>

 

最近の子どもの「いじめ」の実態は,巧妙で,「いじめ」の方法,手段も次第にエスカレートしていく傾向にあるなど,執拗しつよう・陰湿なケースが増えています。「いじめ」は,それが原因で自殺や殺傷事件などに至る場合があり,重大な人権侵害であるという認識が必要です。

「いじめ」をする子どもや「いじめ」を見て見ぬふりをする子どもが生じる原因や背景には,子どもを取り巻く学校,家庭,社会環境や核家族化などが複雑に絡み合った問題がありますが,その根底には,他人に対する思いやりや,いたわりといった人権尊重意識の希薄さがあると思われます。この問題を解決するためには,お互いの異なる点を個性として尊重するなどの人権意識を養っていくことが重要です。

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<体罰>

 

教育職員による体罰については,学校教育法11条で明確に禁止されているところですが,体罰による人権侵犯事件は依然としてあとを絶たない状況にあります。

体罰は,「いじめ」のモデルになったり,校内における暴力容認の雰囲気を作り出したりするなど,児童・生徒の「いじめ」や不登校を誘発・助長する要因になるとも考えられています。


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<児童虐待・児童買春・児童ポルノ問題>

 

昨今,幼児や児童を,親等がせっかん・虐待し,中には死にまで至らしめるという痛ましい事件が多発しています。また,国内外での児童買春や性的虐待,インターネット上における児童ポルノのはん濫など,児童を性的に商売の道具にする商業的性的搾取さくしゅの問題が世界的に深刻になっています。

これらの問題の解決に向けて,平成11年11月には,「児童買春・児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」が施行され,また,平成12年11月には,「児童虐待の防止等に関する法律」が施行され(平成16年10月施行の改正法により虐待となる行為及び通告義務等が拡大,平成20年4月施行の改正法により立入調査等の強化),積極的な取組が行われています。

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学校における「いじめ」の事案は,依然として数多く発生しており,家庭内における児童虐待の事案も増加し,中には死に至る深刻なケースも生じるなど,大きな社会問題となっています。

これらの事案は,事柄の性質上,周囲の目に付きにくいところで起こり,被害者である子どもは身近な人に相談することをためらうことが多いことから,重大な結果に至って初めて表面化するという例が少なくありません。

法務省の人権擁護機関では,これらの問題に対する施策として,全国の小・中学校の児童・生徒に「子どもの人権SOSミニレター(便せん兼封筒)」を配布し,これを通じて教師や保護者にも相談できない子どもの悩みごとを的確に把握し,学校及び関係機関と連携を図りながら,子どもをめぐる様々な人権問題の解決に当たる取組を実施しています。

また,全国50か所の法務局・地方法務局にフリーダイヤルの専用相談電話「子どもの人権110番」を設置し,人権擁護委員や法務局職員が子どもからの相談に応じ,子どもが相談しやすい体制をとるとともに,啓発活動や調査救済活動に取り組んでいます。

さらに,インターネットでも人権相談を受け付けています。相談フォームに氏名,住所,年齢,相談内容等を記入して送信すると,最寄りの法務局から後日,メール,電話又は面談によりお答えします。


SOSミニレター画像


ミニレター学年別受信件数
平成21年度 ミニレター学年別受信件数
 

(平成22年度版「人権の擁護」より抜粋)

 

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主な人権課題(3)

 

高齢者

 

介護の際に虐待を受けた,詐欺商法で被害を受けたなどの事案が発生しています。

豊かな知識と経験を基にまだまだ社会に貢献したい,地域の人たちと交流し,趣味を楽しみたい…。 高齢者が生き生きと暮らせる社会の実現を目指して,高齢者についての理解を深め,高齢者を大切にする心を育てる必要があります。

 

我が国の現状は,平均寿命の大幅な伸びや少子化などを背景として,人口の5人に1人が65歳以上の高齢者となっています。こうした状況の中,高齢者に対する就職差別,介護者による身体的・心理的虐待や,高齢者の家族等が本人に無断でその財産を処分するなどの経済的虐待といった高齢者の人権問題が大きな社会問題となっています。


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平成4年(1992年)10月の国連総会において,平成11年(1999年)を国際高齢者年とする決議がなされました。我が国でも,平成10年7月,国際高齢者年における取組の基本的考え方について,関係省庁の申合せがなされたほか,この間,平成7年12月には,「高齢社会対策基本法」が施行され,翌年7月,同法を受けて「高齢社会対策大綱」を作りました(平成13年12月に見直し)。また,高齢者の尊厳の保持にとって高齢者虐待を防止することが重要であることから,平成18年4月には,「高齢者虐待の防止,高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」が施行されました。

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法務省の人権擁護機関では,高齢者施設等の社会福祉施設において,施設の協力を得て,臨時に特設の人権相談所を開設して入所者等からの相談に応じており,普段,法務局に出向くことが困難な入所者やその家族も,施設内で気軽に相談できるような配慮を行っています。また,介護サービス施設・事業所に所属する訪問介護員(ホームヘルパー等)など,高齢者と身近に接する機会の多い社会福祉事業従事者等に向けて人権相談活動につき周知・説明し,人権侵害事案を認知した場合の情報提供を呼びかけるなど連携を図っています。

このように,法務省の人権擁護機関では,高齢者や身近に高齢者と接する人たちからの人権相談への対応を充実させながら,高齢者の人権に関する啓発活動や高齢者に対する人権侵害事案の調査救済活動に取り組んでいます。

(平成22年度版「人権の擁護」より抜粋)

 

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主な人権課題(4)

 

障害のある人

 

障害のある人が車いすでの乗車を拒否されたり,アパートの入居を断られる事案が発生しています。障害のある人に対する理解や配慮は十分でしょうか。

 

障害のある人 障害のある人が車いすでの乗車を拒否されたり,アパートの入居を断られる事案が発生しています。障害のある人に対する理解や配慮は十分でしょうか。 障害のある人を含むすべての人々にとって住みよい平等な社会づくりを進めていくためには,国や地方公共団体が障害のある人に対する各種施策を実施していくだけでなく,社会のすべての人々が障害のある人に対して十分に理解し,配慮していくことが必要です。

我が国は,平成5年3月に作られた「障害者対策に関する新長期計画-全員参加の社会づくりをめざして-」や,平成7年12月に決定された「障害者プラン~ノーマライゼーション7か年戦略」に基づき,「障害のある人も地域の中で普通の暮らしができる社会に」というノーマライゼーションを基本理念の一つとする障害者施策を進めてきました。

しかし,現実には,車いすでの乗車やアパートへの入居を拒否される事案が発生するなど,障害のある人に対する国民の理解や配慮はいまだ十分とはいえず,その結果として障害のある人の自立と社会参加が阻まれており,共生社会は十分に実現されているとはいえない状態にあります。


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このような中,政府は,平成14年12月に,「障害者基本計画」及び「重点施策実施5か年計画」(平成19年12月に新計画策定)を策定し,障害者施策を推進しています。

また,平成16年に障害者基本法が改正され,障害を理由とする差別禁止の理念が法律に明記されるとともに,12月9日の「障害者の日」が12月3日から9日までの「障害者週間」に拡大されました。この週間では,障害の有無にかかわらず,国民誰もが相互に人格と個性を尊重し,「共生社会」の理念の普及を図るための多彩な行事を集中的に開催しています。

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法務省の人権擁護機関も,国民の間にノーマライゼーションの理念を一層定着させ,障害のある人の自立と社会参加を更に促進するために,様々な啓発活動に取り組んでいます。

また,障害者施設等において,施設の協力を得て,臨時に特設の人権相談所を開設して入所者等からの相談に応じており,普段,法務局に出向くことが困難な入所者やその家族が,施設内で気軽に相談できるように配慮しています。さらに,介護サービス施設・事業所に所属するホームヘルパーなど,障害のある人と身近に接する機会の多い社会福祉事業従事者等に対して人権相談について説明し,人権侵害事案を認知した場合の情報提供を呼びかけるなど連携を図っています。

このように,法務省の人権擁護機関では,障害のある人や身近に障害のある人と接する人たちからの人権相談への対応を充実させながら,障害のある人の人権に関する啓発活動や調査救済活動に取り組んでいます。

(平成22年度版「人権の擁護」より抜粋)

 

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主な人権課題(5)

 

同和問題

 

「あの人は同和地区出身だから…。」などと言われて,結婚を妨げられたり,就職で不公平に扱われたりするなどの事案があとを絶ちません。同和問題の解決に向けて,差別意識の解消のための取組などが必要です。

 

同和問題は,日本社会の歴史的過程で形づくられた身分差別により,日本国民の一部の人々が,長い間,経済的,社会的,文化的に低い状態におかれることを強いられ,今なお,日常生活の上でいろいろな差別を受けるなど,我が国固有の人権問題です。

この問題の解決を図るため,国は,地方公共団体とともに,昭和44年以来33年間,特別措置法に基づき,地域改善対策を行ってきました。その結果,同和地区の劣悪な環境に対する物的な基盤整備は着実に成果を上げ,一般地区との格差は大きく改善されました。


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しかしながら,結婚,就職問題を中心とする差別事案はいまだにあとを絶ちません。国は,同和問題の解決に向けた取組を積極的に推進しており,法務省の人権擁護機関も,問題の解決を目指して,啓発活動や相談,調査救済活動に取り組んでいます。


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<えせ同和行為>

 

同和問題の解決を阻む大きな要因になっているものに,いわゆるえせ同和行為の横行があります。これは,同和問題を口実として企業・行政機関等へ不当な圧力をかけて,高額の書籍を売りつけるなどの行為を指します。

平成21年1月に法務省が実施した「平成20年中におけるえせ同和行為実態把握のためのアンケート」結果では,依然としてえせ同和行為による被害が深刻な状況にあることがわかりました。

えせ同和行為に対しては,行政機関や企業などが密接に連携し,不当な要求には,き然とした態度をとることなどが必要です。

国は,昭和62年に全省庁参加の下,「えせ同和行為対策中央連絡協議会」を設置し,また,地方においても,全国の法務局・地方法務局を事務局として「えせ同和行為対策関係機関連絡会」を設置するなど,えせ同和行為を排除するための取組を行っています。

(平成22年度版「人権の擁護」より抜粋)

 

「えせ同和行為対応の手引」はこちらからダウンロードできます。

 

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主な人権課題(6)

 

アイヌの人々

 

アイヌの人々に対する理解が十分ではないため,就職や結婚などにおいて偏見や差別が依然として存在しています。アイヌの人々に対する理解と認識を深める必要があります。

 

アイヌの人々は,固有の言語や伝統的な儀式・祭事,多くの口承文学(ユーカラ)など,独自の豊かな文化を持っていますが,近世以降のいわゆる同化政策などにより,今日では,その文化の十分な保存・伝承が図られているとは言い難い状況にあります。特に,アイヌ語を理解し,アイヌの伝統などを担う人々の高齢化が進み,これらを次の世代に継承していく上での重要な基盤が失われつつあります。

また,アイヌの人々に対する理解が十分ではないため,就職や結婚などにおいて偏見や差別が依然として存在しています。

政府は,平成19年9月に国連総会で採択された「先住民族の権利に関する国際連合宣言」や平成20年6月に国会で採択された「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」に関する内閣官房長官談話を踏まえ,これまでのアイヌ政策を更に推進し,総合的な施策の確立に取り組むため,「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」を開催し、平成21年7月に報告書が取りまとめられました。同年12月には,同報告書を受けて,内閣官房長官を座長とするアイヌ政策推進会議の開催が決定されています。

法務省の人権擁護機関では,アイヌの人々に対する理解と認識を深めるとともに,偏見や差別の解消を目指して,啓発活動や相談,調査救済活動に取り組んでいます。


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(平成22年度版「人権の擁護」より抜粋)

 

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主な人権課題(7)

 

外国人

 

外国人であることを理由に,アパートへの入居や公衆浴場での入浴を拒否されるという事案が生じています。外国人の生活習慣等を理解・尊重し,偏見や差別をなくしていく必要があります

 

今日,我が国で生活する外国人が急激に増え,平成21年末では218万人を超えています。そして,言語,宗教,習慣等の違いから,外国人をめぐって様々な人権問題が発生しています。

例えば,家主や仲介業者の意向により,外国人にはアパートやマンションに入居させないという差別的取扱いがされたり,公衆浴場において外国人の入浴マナーが悪いとして一律に外国人の入浴が拒否されたり,あるいは,外国人について根拠のないうわさが広まるといった事案が生じています。

平成14年9月の日朝首脳会談において,北朝鮮側が拉致の事実を正式に認めたことなどをきっかけに,在日韓国・朝鮮人児童・生徒に対する嫌がらせ,脅迫,暴行などの事件が相次いで発生しました。そこで,法務省の人権擁護機関は,在日韓国・朝鮮人児童・生徒が利用する通学路などにおいて,パンフレット・チラシなどを配布したり,ポスターを掲示するなどして,嫌がらせ等の防止を呼び掛けました。

また,全国8か所の法務局・地方法務局において,英語や中国語などの通訳を配置した「外国人のための人権相談所」を開設し,日本語を自由に話せない外国人からの人権相談に応じているほか,外国人に対する偏見や差別の解消を目指して,啓発活動や調査救済活動に取り組んでいます。


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(平成22年度版「人権の擁護」より抜粋)

 

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主な人権課題(8)

 

HIV感染者・ハンセン病患者等

 

平成15年11月,熊本県内のホテルにおいて,ハンセン病療養所入所者に対する宿泊拒否事件が発生しました。患者・回復者の方々などが偏見や差別に苦しむことがないよう,感染症に対する正しい知識と理解が必要です。

 

エイズウィルス(HIV)やハンセン病などの感染症に対する正しい知識と理解は,いまだ十分とはいえない状況にあります。これらの感染症にかかった患者・回復者などが,周囲の人々の誤った知識や偏見などにより,日常生活,職場,医療現場などで差別やプライバシー侵害などを受ける問題が起きています。

エイズウィルス(HIV)は,性的接触に留意すれば,日常生活で感染する可能性はほとんどありません。

ハンセン病は,らい菌という細菌による感染症ですが,感染したとしても発病することは極めてまれで,しかも,万一発病しても,早期治療により後遺症も残りません。

平成15年11月に起きた熊本県内のホテルのハンセン病療養所入所者に対する宿泊拒否事件は,今なお誤った認識や偏見が存在していることを明らかにしました。このような差別や偏見の解消を更に推し進めるため,「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律」が平成20年6月に成立し,平成21年4月から施行されています。

法務省の人権擁護機関は,中学生等をパネリストとしたハンセン病問題に関する「夏休み親と子のシンポジウム」を開催したり,ハンセン病への正しい理解と偏見や差別をなくすことを呼び掛ける新聞広告を全国紙に掲載するなどして,様々な啓発活動を行っています。

また,HIV感染者やハンセン病患者等に対する差別事案について,人権相談や調査救済活動に取り組んでいます。


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(平成22年度版「人権の擁護」より抜粋)

 

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主な人権課題(9)

 

刑を終えて出所した人

 

刑を終えて出所した人などに対する就職差別等が発生しています。

これらの人の社会復帰のためには,本人の強い更生意欲と併せて,周りの人々の理解と協力が必要です。

 

刑を終えて出所した人などに対する就職差別等が発生しています。これらの人の社会復帰のためには,本人の強い更生意欲と併せて,周りの人々の理解と協力が必要です。

刑を終えて出所した人やその家族に対する偏見や差別は根強く,就職に際しての差別や住居の確保の困難など,社会復帰を目指す人たちにとって,現実は極めて厳しい状況にあります。 刑を終えて出所した人などが,地域社会の一員として円滑な社会生活を営むためには,本人の強い更生意欲と併せて,家族,職場,地域社会の理解と協力が必要です。これらの人々に対する偏見や差別をなくすため,毎年7月に「社会を明るくする運動」が実施されるなど,様々な取組が行われています。

法務省の人権擁護機関では,啓発活動や相談,調査救済活動に取り組んでいます。

 

(平成22年度版「人権の擁護」より抜粋)

 

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主な人権課題(10)

 

犯罪被害者等

 

犯罪被害者やその家族は,直接的な被害のほかに,いわれのないうわさや中傷により傷つけられたり,プライバシーが侵害されたりするなどの二次的な被害を受けることがあります。犯罪被害者とその家族の人権に配慮することが必要です。

 

近時,犯罪被害者やその家族の人権問題に対する社会的関心が大きな高まりを見せています。犯罪被害者等は,犯罪そのものやその後遺症によって精神的,経済的に苦しんでいるにもかかわらず,追い打ちを掛けるように,興味本位のうわさや心ない中傷などにより名誉が傷つけられたり,私生活の平穏が脅かされるなどの問題が指摘されています。その対策として,平成16年12月には,犯罪被害者等のための施策を総合的かつ計画的に推進し,犯罪被害者等の権利や利益の保護を図るため,「犯罪被害者等基本法」が制定されました。同法に基づき,平成17年12月には,「犯罪被害者等基本計画」が作られ,毎年11月25日から12月1日までの1週間を「犯罪被害者週間」として,犯罪被害者等が置かれている状況や犯罪被害者等の名誉又は生活の平穏への配慮の重要性などについて,国民の理解を深めることを目的とした活動が展開されています。

法務省の人権擁護機関としても,犯罪被害者等の人権に対する配慮と保護を図るため,啓発活動や相談,調査救済活動に取り組んでいます。

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(平成22年度版「人権の擁護」より抜粋)

 

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主な人権課題(11)

 

インターネットによる人権侵害

 

インターネット上においては,匿名による書き込みが可能なことを悪用して,個人の名誉やプライバシーを侵害するなどの種々の人権問題が起きています。インターネットを正しく使用し,人権侵害をなくすことが必要です。

 

我が国のインターネットの利用人口は年々増加し,平成21年末には約9,408万人となっています。こうしたインターネットの普及に伴い,その匿名性,情報発信の容易さから,個人の名誉を侵害したり,差別を助長する表現など,人権にかかわる様々な問題が発生しています。そのため,一般のインターネット利用者等に対して,個人の名誉やプライバシーに関する正しい理解を深めるための啓発活動を推進していくことが必要です。


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法務省の人権擁護機関では,インターネットを利用した悪質な人権侵害について,プロバイダー等にその情報の削除を求めるなど,適切な対応に努めています。 また,小・中学生などの青少年の利用が年々増加している一方,学校裏サイトなどにおける誹謗中傷の書き込みなど,子どもが加害者や被害者になり,トラブルに巻き込まれる事案も発生しています。そうした状況を踏まえ,政府は,「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」を平成21年4月から施行し,インターネット関係事業者にフィルタリングの提供を義務化するなど,対策に取り組んでいます。


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法務省の人権擁護機関においても,インターネット上における人権問題などについて中学生・高校生とその保護者を対象とした人権啓発ビデオ「インターネットの向こう側」を作成したり,法務省ホームページにおいてインターネットの適切な利用についてクイズ形式で学ぶことができる「はなまる人権学校」を掲載しています。さらに,パソコンや携帯電話からの相談を24時間受け付ける「インターネット人権相談受付窓口」を開設するなど,青少年のインターネット利用環境の向上に取り組んでいます。

(平成22年度版「人権の擁護」より抜粋)

 

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主な人権課題(12)

 

ホームレス

 

ホームレスとなった人々に対して,嫌がらせや暴行を加える事案が発生しています。ホームレスの人権に配慮するとともに,地域社会の理解と協力が必要です。

 

自立の意思がありながら,やむを得ない事情でホームレスとなり,健康で文化的な生活ができない人々が多数存在し,嫌がらせや暴行を受けるなど,ホームレスに対する人権侵害の問題が起こっています。そのため,平成14年7月,「ホームレスの自立支援等に関する特別措置法」が制定され,同法に基づき,平成15年7月,「ホームレスの自立支援等に関する基本方針」が作られました。

ホームレスの自立を図るためには様々な取組が必要ですが,法務省の人権擁護機関では,近隣住民の人権にも配慮しながら,ホームレスに対する偏見や差別の解消を目指して,啓発活動や相談,調査救済活動に取り組んでいます。


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(平成22年度版「人権の擁護」より抜粋)

 

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主な人権課題(13)

 

性的指向

 

「男性が男性を,女性が女性を好きになる」ことに対しては,根強い偏見や差別があり,苦しんでいる人々がいます。性的指向を理由とする偏見や差別をなくし,理解を深めることが必要です。

 

性的指向とは,人の恋愛・性愛がどういう対象に向かうのかを示す概念を言います。具体的には,恋愛・性愛の対象が異性に向かう異性愛(ヘテロセクシュアル)同性に向かう同性愛(ホモセクシュアル),男女両方に向かう両性愛(バイセクシュアル)を指します。

同性愛者,両性愛者の人々は,少数派であるがために正常と思われず,場合によっては職場を追われることさえあります。このような性的指向を理由とする差別的取扱いについては,現在では,不当なことであるという認識が広がっていますが,いまだ偏見や差別があとを絶たないのが現状です。

 

法務省の人権擁護機関では,これらの人々の人権擁護を図るため,啓発活動や相談,調査救済活動に取り組んでいます。


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(平成22年度版「人権の擁護」より抜粋)

 

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主な人権課題(14)

 

性同一性障害者

 

からだの性とこころの性との食い違いに悩みながら,周囲の心ない好奇の目にさらされたりして苦しんでいる人々がいます。性同一性障害を理由とする偏見や差別をなくし,理解を深めることが必要です。

 

性同一性障害とは,生物学的な性(からだの性)と性の自己意識(こころの性)が一致しないため,社会生活に支障がある状態を言います。性同一性障害の人々は,社会の中で偏見の目にさらされ,昇進が妨げられたりするなどの差別を受けてきました。

平成15年7月,「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」が公布され,平成16年7月から施行されました。この法律により,性同一性障害者であって一定の条件を満たすものについては,性別の取扱いの変更の審判を受けることができるようになりました(平成20年6月に改正法が成立し,条件が緩和)。

 

法務省の人権擁護機関では,性同一性障害を理由とする偏見や差別の解消を目指して,啓発活動や相談,調査救済活動に取り組んでいます。

(平成22年度版「人権の擁護」より抜粋)

 

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主な人権課題(15)

 

北朝鮮当局によって拉致された被害者等

 

北朝鮮当局による人権侵害問題に関する国民の認識を深めるとともに,国際社会と連携しつつ北朝鮮当局による人権侵害問題の実態を解明し,その抑止を図ることを目的として,平成18年6月に,「拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律」が施行されました。この法律では,国及び地方公共団体の責務等が定められるとともに,毎年12月10日から同月16日までを「北朝鮮人権侵害問題啓発週間」とすることとされました。

この週間においては,政府主催によるシンポジウムの開催,関係省庁や地方公共団体におけるポスターの掲出,チラシなどの配布,メディアによる周知・広報,講演会・写真パネル展の開催など,様々な活動を行っています。

拉致問題は,我が国の喫緊の国民的問題であり,これを始めとする北朝鮮当局による人権侵害問題への対処が,国際社会を挙げて取り組むべき課題とされる中,この問題についての関心と認識を深めていくことが大切です。

(平成22年度版「人権の擁護」より抜粋)

 

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主な人権課題(16)

 

人身取引(トラフィッキング)

 

性的搾取,強制労働等を目的とした人身取引(トラフィッキング)は,重大な犯罪であり,基本的人権を侵害する深刻な問題です。

我が国では,平成16年4月5日,内閣に「人身取引対策に関する関係省庁連絡会議」が設置され,同年12月7日,同会議において,人身取引の撲滅,防止,人身取引被害者の保護等を目的とする「人身取引対策行動計画」を取りまとめました。

また,人身取引その他の人身の自由を侵害する行為に対処するため,平成17年6月に刑法等の一部が改正され,同年7月から施行されています。 さらに,人身取引をめぐる近年の情勢を踏まえ,政府一体となった人身取引対策を引き続き推進していくため,平成21年12月22日,犯罪対策閣僚会議において,「人身取引対策行動計画2009」が策定されました。 この問題に関係省庁が協力して取り組んでおり,法務省の人権擁護機関としても,啓発活動や相談,調査救済活動に取り組んでいます。

(平成22年度版「人権の擁護」より抜粋)

 

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