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米中の共著論文、先端8分野で最大25%減…科学研究でも分断加速

読売新聞 / 2022年11月6日 5時0分

 軍事力や産業競争力につながる先端技術関連分野で、欧米などの学術誌に掲載された米国と中国の国際共著論文が2019年以降減少に転じたことが読売新聞などのデータ分析でわかった。21年の米中共著論文の総数は約5万9000本で、そのうち材料科学やエネルギー、コンピューター科学など8分野では、2年間で14〜25%減った。米国のトランプ前政権が中国に対する技術流出防止策を厳格化したことが影響したとみられる。

 安全保障や経済などの分野で米中関係の亀裂が深刻化する中、米中共著論文の減少は、科学研究の分野でも分断が進んでいることを裏付けた。強国路線をまい進する中国の 習近平 シージンピン政権に、米国のバイデン政権も対抗姿勢を強めており、共著論文の減少の流れは続く可能性がある。

 読売新聞が、研究力分析を専門とする小泉 あまね・自然科学研究機構特任教授と共同で、1996〜2021年に掲載された日米中の2国間の共著論文を調べた。用いたのは学術出版大手「エルゼビア」(本社・オランダ)の論文データベース「 Scopus スコーパス」。学術誌約2万7000誌の査読(審査)を通った論文約8800万本を収録している。

 分析の結果、米中の大学や研究機関が関わる共著論文の総数は、00〜19年は前年比8〜40%の割合で増えたが、20年はほぼ横ばいで、21年は同5%減となった。

 27の分野別にみると、先端技術の関連分野は19年を境に減少が顕著だ。21年の米中共著論文数は、「材料科学」が約7500本で、19年に比べ25%減と最大の減少幅となった。ほかに、「化学」が約6400本で19%減、「エネルギー」が約3400本で18%減、「コンピューター科学」が約8900本で14%減だった。これらは先端材料や半導体、人工知能(AI)などに直結する分野だ。

 一方、「社会科学」「人文科学」「心理学」など先端技術との関連が薄い分野は共著論文数の増加が継続していた。日中、日米の共著論文数も全体では増加傾向が続き、コロナ禍の影響は限定的とみられる。

 トランプ前政権は、18年頃から中国への警戒を強め、技術の輸出規制や中国などによる研究人材の招致プログラムへの参加制限などを進めてきた。米中の科学技術政策に詳しい 角南 すなみ篤・笹川平和財団理事長は「米国の対中政策が影響したのは間違いないだろう。中国への打撃は大きいのではないか」と指摘する。

 日本でも今年5月、中国などを念頭に置いた経済安全保障推進法が成立するなど、先端技術の育成や保護に向けた動きが加速している。角南氏は「日本も経済安保政策を進めていく中で、共同研究の動向を注視する必要がある」と話す。

 ◆国際共著論文=異なる国の大学や機関に所属する研究者たちが共同で作成した論文。国際的な研究協力の成果を測る指標とされる。日本はこの論文の割合がほかの先進国より低いとして、国際共同研究の拡大を目指している。

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