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この作品「黒き混沌たる超高校級の占い師に捧ぐ、確実なる受難。」は「ダンガンロンパ」「二次創作」等のタグがつけられた作品です。
黒き混沌たる超高校級の占い師に捧ぐ、確実なる受難。/OlyMizsawaの小説

黒き混沌たる超高校級の占い師に捧ぐ、確実なる受難。

4,943文字10分

※三部作二作目です※

ダンガンロンパシリーズ第二弾。
前回の石丸君主人公を、葉隠君主人公に挿げ替えています。
中身、行動が全て同じなので、前作からお読みくださいませ。

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2014年8月29日 08:48
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 黒き混沌たる超高校級の占い師に捧ぐ、確実なる受難。





 葉隠 康比呂。超高校級の占い師なる推薦を受け、「希望ヶ峰学園」に入学したはいいものの、白と黒の不愉快なクマのぬいぐるみにより拘束を受け、目下赤と黒を基調とした部屋に軟禁状態である。
 日の全く差さない部屋、時計だけが皆に共通項を与える環境で、彼はコロシアイという日々におびえつつも、残してきた数々の金銭問題、女性問題、占いにおいてのトラブルの数々を思い出しては、ある意味守られてるということではないかとどこか安堵を覚えていた。

 モノクマアナウンスという不愉快極まりない「朝」を伝える放送の後、朝食を同じ時間に取ると勝手に石丸が決めたため、起きた時間で適当に参加した後、彼は居室外で過ごそうかとうろうろしていた。
 白いシャツに腹巻、だぼだぼのズボン、草履という極めて高校生らしからぬ恰好。占い師は胡散臭さも大きな金額をポンと出させるポイントであることは熟知している。
 物音が、奥の方からしていた。居室の方ではない。彼はまず、そちらに向かってみることにした。

「・・・石丸のばーっか・・・」
 ふわふわのゴージャスな金髪、愛くるしいヘアアクセサリー。いまどきのギャル風制服に身を包んでいるのは、江ノ島盾子だった。マスカラのノリがわるい。昼過ぎというのに、なんだかひどくやつれて見えた。健康運ダダ下がりだべ、と彼は思う。
「あー、でも相変わらずかっわいー・・・」
「何やってんだべ、、江ノ島っち」
不意の声に立ち上がり、椅子をがたがたさせながら振り返る。明らかに挙動不審だ。案外気の小さい人間だべ、江ノ島っち。
「な、んな!え、えっと・・・なんだ、葉隠か」
「なんだとはなんだべ。江ノ島っちも洗濯?俺も昨日洗いっぱなしのヤツ、取りに来たんだべ」
「え、あ、そう。朝から洗濯してたから、取りに・・・来たの」
 ランドリーに他に人はいなかったが、数か所、乾燥させっぱなしの衣類が放り込まれていた。巨大な下着とダボダボのシャツを取り出して、くしゃくしゃのまま左手に持つ。
「なーんだ江ノ島っち、自分の写真みてたんか?シャバが恋しいべ?」
「あ、ああ、うん・・・」
「しかもアタシかわい~ってか?ま、実際江ノ島っちはかわいいけどな!」
 江ノ島の顔が赤くなる。雑誌の江ノ島は人形のように白い肌だが、それより二段階ほど浅黒く感じられるのはこのライティングのせいか。立ったまま雑誌を開いている江ノ島越しに、紙面を覗き込んだ。
「・・・だ、だよねーあたし、かわいいよね」
「おう、かわいいべ!フランス人形だべ!」
 女はストレートな言葉を喜ぶ。そして占いも信じる。彼の信念だ。江ノ島の顔が、ますます赤くなった。
「あ・・・ありがと・・・フランス人形、ちょい引っかかるけど」
「でもだな江ノ島っち」
 向かい合って立っていても案外葉隠は長身で、江ノ島のつむじが前に見える。
「この写真の江ノ島っちは乳がでけーけど、実際の江ノ島っちは『貧乳』なんだな!ここならいいけどシャバではいつも寄せあげブラつけとかないと、引かれんべ?」
「ん、んな・・・っ!!」
 江ノ島の顔が大きくゆがむ。顔は更に赤く、いまにも喚きだしそうな唇の形。
「う、うーっさい!!葉隠の大ばかっ!!」
「やー悪い悪い、貧しい乳ってのも悪くはないべ?でも江ノ島っちちょっと肌黒くて胸ないから、そういう人間は不幸になんだべ!人のためにやったことが無駄になんだべ!」
「はっ、はぁぁぁぁ??!」
 メイクごしにもわかるほど顔が紅潮し、眼尻まで赤くなってきている。やべ、石丸っちみてぇになってるべ。目が赤い人間はキレると暴力沙汰起こしやすいべ。
「な、何みてんのよ!へ、変態!!」
「幸薄いとかいって悪かったべ!でもほら、俺の占いは三割の確率でズバッと・・・だから、な?江ノ島っち」
 実際、雑誌で満足げに微笑む江ノ島はつややかな胸元を惜しげもなくさらしている。疑問を口にしただけなのにと、素直に彼は思う。
「雑誌じゃ胸大盛りにしてんの!いいのっ!もう出てってー!!!二回も言われたくない―!!」
「に、二回?俺は一回しか言ってないべ、貧・・・」
 雑誌が顔面に飛び、高いヒールのかかとが彼の裸足の足をぐいっと押した。
「い、痛ってぇぇぇぇ!!」
「なによっ!!」
「俺はありのままの江ノ島っちがいいって言いたかっただけだべぇぇぇぇ!!」
「うるさいうるさいうるさい!もぉ出てってよぉl!!」
 締めたドアに改めて、分厚い雑誌とパイプいすが数台、かなり高い位置でぶちあたる音が聞こえた。

「全く、正直に言っただけだべ・・・」
 ひとりごちながら居室の方に向かい、そういや苗木っちは何をしてるんだろうと部屋のパネルを探していたとき。
「ひぃっ!」
 後ろから巨大な塊がぶつかる。左によけたつもりが、相手も同じ方向に避けてしまったらしく、彼の体は壁に押し付けられる格好となり巨体が覆いかぶさる。
「むふっ、おほう、これは申し訳ないでございます」
 巨体は両腕で自分の体を支えきれず、彼に圧し掛かる。半端ではない重さ。割と長身な方の彼だが、頭はそれに近くなんだか脂臭い口臭がする。口の臭いが悪いと直観力に鈍くなるんだべ。
「だっ、誰だべ!」
「ああー申し訳ございません、拙者に悪気はないでござるぅぅぅ」
 このねっとりとやたら多い口数、甲高い声は・・・。
「山田っち、重いべー・・・」
「あああ、葉隠康比呂殿、非常に面目ない!ああそれにしても葉隠康比呂殿は逞しいのですな、この拙者の巨体で圧し掛かってもべしゃんこにならず支えておられる」
 なかなか山田はどかない。というより、腕が短すぎて彼を挟んだままでは、壁に手が付けないのだ。
「山田っちー、人に寄り掛かりっきりの依存心の強さは粘りがあって、芸術家には向いてるべ・・・」
「ああこれがもし不二咲千尋殿だったら?ああん山田くぅん、重いよぉ、おにぃちゃぁん・・・なぁんてなんて!デュッフフフフでもそれも悪くない、いやむしろウェルカムでございますなぁ!江ノ島盾子殿にばーっかどけよとか言われて蹴られてもそれはそれでああ吾輩は二次元しか認めないと言っているのにとても妄想がハレーションですがなにゆえ??」
 首に、山田の生臭い息がかかっていた。。
「いーからどいて欲しいんだべ山田っち!せーの・・・」
「お、おう??葉隠康比呂殿、僕に心の準備をさせてくれないところがって・・・」
「よーいっしょっと!・・・気を付けてくれよー山田っちー。俺はこんなとこでサンドイッチになりたくねぇべ」
 ごろりと転がった山田を見て、手を振りながら去って行った。

 居室前は風水的にも運気が悪い。食堂方面に先に向かうことにした。厨房に、霧切がいる。
 珈琲を飲み終わったのだろう。インスタントものだと思うがいい香りが残っている。
「霧切っちー、珈琲か?いい匂いだなぁ」
「・・・霧切っち?」
 いぶかしげに眺める霧切。
「葉隠君、何の用かしら」
「いんや、特に用はねえ。ぷらっとしてるだけだ」
「そう、では私は失礼するわ」
「あ、え、そっか・・・んじゃなー霧切っち」

 時間が無駄に過ぎた。改めて居室スペースに向かうこととした。
 絨毯敷きの廊下にぺたぺたと草履の音を響かせる。居室は完全防音になっているらしく何の音もしない。まるで地獄の様だと少しだけ、思う。この暮らしは事実、コロシアイという地獄ではあるのだけれども。
 そういえば、セレスっち・・・、と彼は閃く。彼女は超高校級のギャンブラーだ。何かこの暮らしを楽しくする手段を知っているかもしれない、一声かけてみよう。
 セレスの部屋の前でチャイムを鳴らす。
「どなたですの?」
「セレスっちー、俺だー、葉隠だべー」
 不審げ声に不快感を浮かべた顔。冷静な態度に変わりはないが、不満を抱いているのは確かだ。口の端が下がった女は欲求不満だべ。
「あら、葉隠君、どうかなさいまして?」
「い、いや、セレスっちどうしてっかなーって思って、様子を見に来ただけだべ」
「お気遣いありがとうございます。少し気分がすぐれないだけですわ、御機嫌よう」
 五センチほどしかあけられていなかったドアが閉まるのには、コンマ数秒もかからなかった。オートロックの音と同じく、彼は踵を返す。

 何も出来ない時間は流れるのが遅い。ここで居室をめぐるのを中止し、食堂に向かうこととした。誰か彼か、いるだろう。一人で退屈でいる方が、彼には耐えられなかった。
「なんだ、葉隠か」
 十神が、エラそうにふんぞり返っていた。少し遠いところで腐川が十神を見ている。
「十神っち、お疲れ~」
「うるさい、俺は考え事をしているんだ。下がれ」
 腐川がおどおどしながら、珈琲の入っているらしい大きなお盆をささげ持ってふらふらと歩いている。十神に頼まれてもいないのに気を利かせたつもりであろう。相変わらずマイナスオーラを漂わせて、傍にいるだけで金運が下がりそうだべ。
「腐川っち、大丈夫か?」
「何よ、放っておいてよ・・・どうせあたしなんか、何とも思ってないくせに」
 お盆の中のカップが音を立てる。躓いたらしく、珈琲と角砂糖が宙を舞おうとした。
「おっと、危ない!」
 彼はお盆を素早く持とうとして、ひったくった。非力な腐川がすぐに手を放してくれたのが幸いして、手からお盆は奪えたが、珈琲は盆に返らず。反射的によろけた腐川の腰を抱き、珈琲の直撃だけは避けようと前に出る。
「きゃ・・・」
 受身を取れず倒れたため、ちょうど腐川を組み敷いたまま、絨毯敷きの床に彼は転がっていた。腐川の首と腰を支えていたため、頭を強打することはなかったが、自分の首への衝撃はなかなかのものである。
「腐川っち、大丈夫かー?」
「や、そんな、な・・・」
 耳朶の脇から子猫の鳴くような、か弱くて優しい腐川の声がする。
「あーよかった、でっけぇ怪我はしてねぇべ、九死に一生を得るタイプだな、腐川っち」
「九死に一生を得る、だと?この女がか・・・?」
 後ろから押し殺した十神の声がする。振り向くと、珈琲で白いスーツをびっしょりと濡らした十神が、はらわたここに煮えくり返りけり、といった風情で、メガネと髪からも黒い液体を垂らしていた。
「と、十神っち・・・ごめ・・・お盆助けたつもりだったべ・・・」
「そうか。貴様にとっては俺など盆以下か。よし、今コロシアイの一番の犠牲者になるか?」
「あ、あの、あの・・・ど、どきなさいよ、もうあたし立ちたいのよ、ば、ばかっ」
 冷静に見てみれば明らかに、女性を強引に押し倒しているの図、そのものである。しかしそれよりも十神の顔が、何より恐ろしい。眉間にしわが寄ると、経済の上昇運がなくなるべ。
「すまん腐川っち!!」
 あわてて起き上がると、腐川もゆっくり立ち上がる。十神がダストシュートを見るより冷ややかな目で、ふたりを見ていた。
「十神っち、悪かった、あ、あの、お詫びに占いを・・・」
「必要ない。ここから去れ」
 普通に話しているだけなのに、いつも上から押さえつけられている気がする。ヤクザのボスの方がなんぼかマイルドだったべ。
「ふ、腐川っち、もう平気か?」
「な、何よ・・・もういいわよ、さっさと十神君の前から・・・で、出て行きなさいよ」
「あと、お前。珈琲など誰が頼んだ。お前のせいでもあるぞ」
「え・・・あ・・・その・・・もっ、申し訳ございませんでした!あの・・・」
 今日は厄日だべ。
 とりあえず直感だけでなくて手相でも勉強すっかな、と彼は、おとなしく居室に向かっていた。




















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