寒河江市の古刹(こさつ)・本山慈恩寺で、国の重要文化財に指定されている本堂の大規模な修理工事が10月に始まった。約70年ぶりにかやぶき屋根の全層を取り外す作業が行われる。外観は足場に覆われて2年ほど見られなくなるが、修理は技術継承の貴重な場となる。伝統的な建築技術の価値を見直し、後継者育成の大切さを改めて考える機会としたい。
慈恩寺は746(天平18)年、僧の行基から景勝の地と伝え聞いた聖武天皇の勅命により、開かれたと伝えられる。本堂は3回の火災に見舞われ、現在の建物は1618(元和4)年に最上氏が再建した。ひさしが四方に大きくせり出した入り母屋造りで、力強く豪快な桃山様式を現代に伝える。厚みのある屋根には、防水機能を高めるために5層に分けてヨシが重ねられている。雪で抜け落ち、くぼむなどした箇所にはヨシを毎年入れ直し、10~15年おきに全面的なふき替えが行われてきた。屋根が厚い分、一般的なかやぶき屋根よりも長い90センチ以上のヨシが用いられる。
今回は、経年劣化によるヨシの損傷が屋根の骨組みにも影響を及ぼしかねないとして、足場と素屋根で本堂を覆い、屋根全層を取り外す。ふき替え作業は4月以降となる見通しだ。本山慈恩寺の大江幸友管長は「形状に合わせた独特のふき方が取り入れられているので、技術継承を図る機会としたい」と大規模工事の意義を強調する。
かやぶき屋根をはじめ、瓦屋根、建具、畳の製作のほか、建物の外観や内装に施す装飾や彩色、漆塗りといった伝統建築技術は2020年12月、「伝統建築工匠(こうしょう)の技 木造建造物を受け継ぐための伝統技術」として国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された。草や木、土など自然の素材を用いたこれらの技術が、地震や台風に耐える構造をつくり、世界最古の現存する木造建築物である奈良・法隆寺に代表される日本の伝統的な建築文化を支えてきた。このことが、登録に値すると判断された。
登録を最終決定した政府間委員会は、特にかやぶき屋根を「20年ごとにふき替えなければならず、多くの人手を必要とする」と例に挙げ、協力と社会の一体性を促進し、日本人の文化的アイデンティティーの強化という社会的機能を持つ-とも評価した。対象となった技術の保存団体の一つとして、国に認定された全国社寺等屋根工事技術保存会(京都市)は檜皮(ひわだ)ぶき、杮(こけら)ぶきも含めた屋根ふき職人の技術研修事業を行っており、若手も徐々に育っているという。
同会役員で、慈恩寺本堂の屋根修理工事に当たる業者は、技術継承の課題を「指導者の高齢化と材料の確保」とする。材料については、山間地での造成などにより全国的には栽培地が減り、採取者も高齢化しているのが現状だ。しかし、山間地の有効利用を図るため、材料を育てる逆転の発想も必要なのではないか。工事では一般公開も取り入れ、伝統技術を間近に確かめられるようにしたい。自然の素材を生かし、定期的な修繕で長期保存を可能とした先人の知恵は、持続可能な社会の創造という観点からも、多くの示唆を与えてくれるはずだ。
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