日本、ついにアジアで最も「豊かな国」の座を台湾に譲り渡す

1人あたりGDP比較、やがて韓国にも
野口 悠紀雄 プロフィール

日本の劣化は高齢化のためか? 円安のためか?

なぜこうなってしまったのか?

日本の経済パフォーマンスを低下させている原因として、人口の高齢化がある。総人口に占める生産年齢人口の比率が低下し、労働人口が減少するという現象だ。

これが、大きな問題であることは間違いない。しかし、これはだいぶ前からあった問題だ。この10年間に急に悪化したというものではない。

10年間で日本の地位が下がったのは、人口高齢化のためではなく、経済政策のためだ。

異次元金融緩和で金利が低下し、対ドルで円安が進んだ。では、上に見た日本の地位低下は、円安でドル換算値が下がったためだろうか?

アメリカとの1人あたりGDPの格差の拡大に円安が寄与したことは、間違いない(実際、上で見たように、日本の1人あたりGDPの値は、2012年から22年にかけて減少している。これは円安が進んだためだ)。

しかし、対ユーロで見ると、2013年5月も2022年2月も、1ユーロは約130円で、大きな変化はない。

だから、上で見た独仏などとの相対的な地位の変化は、為替レートの変化によるものではない。独仏などの経済成長率が日本より高かったためだ。

このことは、自国通貨建ての成長率を比較することによって、確かめられる。以下にみるように、日本の成長率は、異常といえるほど低いのだ。

図表2に示すように、自国通貨建ての1人あたり名目GDPの2012年から2022年の間の増加率をみると、日本は10.4%で、先進国40カ国中で第38位だ。

日本より増加率が低いのは、スイスとマカオだけである。

経済パフォーマンスが悪いと考えられているイタリアも19.3%だ。フランス、スペインは20%台だ。ドイツ、イギリス、オランダは30%台。

アメリカ、韓国、スウェーデンなどは40%台だ。

このように、日本の成長率は、世界の中で例外的に低いのである。

ただし、日本の成長率は、アベノミクス以前から低かった。1990年代の中頃に成長がとまり、それ以降、成長していないのだ。これは、中国工業化に対して、日本が産業構造を転換できなかったからだ。さらに、IT革命に対応できなかったからだ。

それをアベノミクスで反転できなかっただけだとも言える。

それに円安が重なったために、ドル表示の日本の1人あたりGDPの地位が大きく落ち込んだのだ。

 

図表2 自国通貨建ての1人あたりGDPの成長率

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