歯周病に悩む人は多く、30代以上では3人に2人の割合だという。もはや国民病と言ってよい状況だが、その対処法といえば、せいぜい「歯周病にいい」なんていうCMを頼って歯磨きを替えてごまかす程度…という人も少なくないのでは? しかし、歯周病は、糖尿病や動脈硬化、狭心症、心筋梗塞、がんなど、さまざまな病気と深くかかわっていることが分かってきている、と専門家は警告する。

【長生きに歯周病は大敵】

「歯周病は皆さんが思っている以上に意外に怖い病気なのです。私たち歯科医がそう言うのは当然なのですが、最近は歯科医以外にも歯周病に警鐘を鳴らす人が広がっています。例えばスポーツジムのトレーナーとか、健康で長生きするための体質改善運動を提唱されている多くの方々が歯周病に気を付けろとアドバイスするようになっているんです」

 こう話すのは海老沢歯科医院(東京・杉並区高円寺南)の海老沢聡院長である

 それは歯周病が、さまざまな病気につながることがどんどん分かってきたからだ。すでに認知症になりやすいことはよく知られるようになって、この東スポ「健康コーナー」欄でも紹介したことがあるが、最近では、がんなどとの関連も判明している。

 特に、肥満気味の人は歯周病をより警戒する必要がある。肥満の人ほど歯周病になりやすいことが研究により明らかにされているからだ。

 その警告を世界で初めて発したのは日本の九州大学だ。その調査によると、体重のkgを身長のmの二乗で割った値であるBMIは22程度が正常値とされているが、その数値が20未満のやややせ形の人に比べると、肥満度の高い人は3・4倍から8・6倍も歯周病になるリスクが高いとされている。しかも、その後、米国やヨーロッパなどの多くの研究機関からも同様の肥満と歯周病の関係を指摘する研究が発表された。

【放っておくとこんな病気のリスクが高まる】

 歯周病は放っておけば軽い痛みだったものでも症状が進行する。やがて歯を失うまでに至ってしまうのが一番の問題だ。歯を失えばものを食べることができない。歯周病は、歯を失う原因のナンバーワンなのだ。

 さらに問題なのが、口腔の乱れが全身疾患にもつながること。冒頭で紹介したように歯周病菌がアルツハイマー型認知症の原因物質とされるアミロイドβを増やすことはすでに触れたが、それだけではない。歯周病菌は血液に入り込み、全身を巡って糖尿病や動脈硬化、心筋梗塞などの原因となることが近年の研究で明らかとなっている。

 さらに最近では、歯周病菌の一部が胃から腸管に入り込んで、腸管内の細菌叢(そう)を乱して大腸がんの原因になることも明らかになった。それだけでなく、がんの転移を促進したり、食道がんや関節リウマチなどの病気に関与する研究結果も発表されている。

 次回は、歯周病の予防法はないのか、そしてどんな治療をするのか、を教えてもらうことにする。