初の全国弁護士フォーラム/朝・日の法律家など約180人が集う


無償化裁判を総括する初の全国弁護士フォーラムが10月22日に催された。

朝鮮学校を支援する全国弁護士フォーラム2022 in 東京が10月22日、東京・北区の東京中高で催された。会場には、総聯中央権利福祉局の任京河局長、東京都本部の高徳羽委員長、東京中高の尹太吉校長をはじめとする同胞や日本市民ら約180人が参加した。また日本各地から54人の弁護士が会場参加、オンラインまで含めると総勢87人の弁護士が勢ぞろいするなど、内外から多くの関心が集まった。

この日のフォーラムは、昨年終結した高校無償化裁判と関連し、各地で司法闘争を牽引してきた弁護士らが中心となり企画したもの。2013年の愛知、大阪での提訴を皮切りに各地5カ所で行われた裁判では、現役の朝高生や朝鮮学園が原告となる一方、在日朝鮮人弁護士と日本人弁護士などで構成される「無償化弁護団」が法廷代理人を務め、全面的なサポートを施した。

フォーラム実行委員会では、裁判の進行過程に形成された弁護士らのネットワークを発展させ、朝鮮学校に通う子どもたちの学習権を法的に確立するためには、法律家が集う議論の場が継続的に必要であることを共有。その第1回目として行われた同フォーラムは東京弁護団が主管した。

開始に先立ち、尹太吉校長があいさつした。

尹校長は、はじめに、民族教育権の擁護運動に参与する各地の弁護士や支援者らに謝意を示したうえで、今月起きた同校の生徒に対するヘイトクライム事件と、それに伴う法務省要請について言及した。事件は、朝鮮のミサイル発射に対するJアラートが発出された10月4日の夕方に発生。下校途中の中級部生が50代とみられる男性から「お前、朝鮮学校の生徒だろ」、「答えろよ!」などと電車内で言い寄られ、「日本にミサイルを飛ばすような国が高校無償化とか言ってんじゃねーよ」と足を踏みつけられる暴言・暴行を受けた。

尹校長は「事件直後、生徒本人は恐怖を感じ、学校にも通えないという状態だった。その後、事件が報道されると、ネット上には加害者に対して同調するようなひどい書き込みがあふれた。生徒は、事件で苦しみ、さらにネットの書き込みによって恐怖にさらされた」と述べた。そして、このような朝鮮学校に対するヘイトスピーチ・ヘイトクライムの根本には、民族教育が始まった当初から、率先して差別・弾圧政策を振りかざしてきた日本政府の存在があると指摘。尹校長は「高校無償化の対象から朝鮮高校を排除したことを筆頭に、21世紀に入っても朝鮮学校に対する日本の差別政策は何も変わっていない」と非難しながらも「無償化裁判では私たちの主張が退けられたが、今日が新たな出発点」だとして、この間に培った連帯の力を、今後の民族教育権擁護運動における重要な糧にしていこうと、強く呼びかけた。

つづいて、フォーラムを通じ、初めて朝鮮学校を訪問した参加者らを念頭に、朝鮮学校の紹介VTRが上映されたのち、第1部としてシンポジウム「朝鮮学校無償化裁判の到達点と課題」が行われた。また第2部では、朝鮮学校支援などに関する12の地域関係者から報告があった。

第1部のシンポジウムで基調報告を行った東京弁護団の金舜植弁護士(在日本朝鮮人人権協会会長)は、無償化裁判について振り返ったうえで、「朝鮮学校に通う子どもたちは、排外主義的風潮が強まる日本社会のなかで、差別とヘイトに晒されている。その象徴が国が行った高校無償化制度からの除外問題であった」と指摘。記念すべき第1回目のフォーラムでは、「無償化裁判の成果と課題を整理し、朝鮮学校とそこで学ぶ生徒の民族教育権を歴史的文脈および現状から位置づけ、その法的権利性を考察する」と強調した。そのうえで、参加者たちに向けて、長きにわたり放置されてきた朝鮮学校差別政策を、日本社会の責任として解消していこうと呼びかけた。

一方、閉会に先立ち、来年秋頃に第2回目のフォーラムが愛知で開催されることが発表された。

(韓賢珠)