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膨らむ電気料金 自治体悲鳴、不足分の補正計上続出

産経ニュース / 2022年11月4日 10時0分

家計や企業を直撃する最近の電気料金の高騰は、自治体の財政も圧迫している。膨らむ電気料金を当初予算ではカバーできず、補正予算で追加経費の計上を迫られる自治体が続出。公共施設の利用に支障が生じない範囲で庁舎などの節電も徹底する。ただ、暖房費がかさむ冬が近づく中、電気料金高騰の長期化が懸念され、自治体の苦しい財政運営は続きそうだ。

栃木県は今年度当初予算で、県庁舎や県立学校など県関連約430施設分の電気料金として約14億円を計上していた。ところが、高騰の影響に加え、契約を結んでいた料金の安い民間の電力会社の撤退も重なり、9月補正予算でほぼ同額の約13億円の上積みに追い込まれた。

1年分が半年で…

1年分の電気料金を見込んでいた予算が半年ほどで消え、予算倍増となる思わぬ〝出費〟に、県財政課は「繰越金などで充当したが、かなり大きい額だ」と悲鳴を上げる。来年度予算も高騰を念頭に編成せざるを得ない状況だ。

教育現場に支障が生じないよう、9月補正予算で県立学校の電気料金約1億7200万円を追加で手当てしたばかりの群馬県は、県庁舎分についても予算措置を講じる方向だ。県によると、8月の県庁舎の電気料金が前年同月に比べて約7割もアップしたという。合同庁舎や美術館など県関連施設で想定される不足分を合算すると、必要経費は一気に膨らみ、財源確保に頭を悩ませる。

神奈川、福島両県なども9月補正予算に不足額を計上した。電気料金をカバーするために補正予算を組むのは異例の対応といえ、山梨県は「現在の予算では不足するのは確実。今後、補正予算を編成せざるを得ない」(庁舎管理室)と身構える。

節電対策に知恵

電気料金の値上がりは、ロシアのウクライナ侵攻を背景とした発電燃料の高騰と最近の円安が要因。政府の試算によると、電気料金は昨年から2~3割上昇している。今回、発電燃料の調達費用が上昇した分について、大手電力10社はこれまで電気料金に上乗せできる燃料費調整制度でしのいできたが、上乗せが認められる上限に達している。

高騰を受け、政府は10月28日、電気やガス料金の負担軽減を柱とした総合経済対策をまとめたが、これに先立ち全国知事会は同月17日、電気料金を含めた物価高騰対策に関する提言を政府・与党に提出。電力料金高騰に苦慮する自治体が相次ぐ事態を念頭に、提言で「公共施設や公営企業などの運営圧迫に直結する」と訴え、負担軽減策を求めた。

一方、かさむ出費を少しでも抑えようと、各自治体とも節電対策を継続する。多くの自治体が庁舎内のエレベーターの稼働台数を減らしたり、蛍光灯などから省エネルギーのLED照明に切り替えたりするなど知恵を絞る。電力料金高騰を契機に、山形県は本庁舎と県議会庁舎の照明をLED照明に前倒しで切り替える方針を決めた。「蛍光灯に比べて消費電力は3分の1程度に抑えられる」(県の担当者)と見込む。

さらに上昇の恐れ

新型コロナウイルス感染拡大防止策との兼ね合いもある。感染防止には室内の換気が欠かせず、新潟県教育庁財務課は所管する県立学校の対応について「電気料金が高騰しているとはいえ、コロナ対策に影響のない範囲で(教室の)空調を節電している」と話す。

とはいえ、ウクライナ情勢は先行きが見通せず、電気料金が一段と上昇する恐れもあり、節電効果が帳消しになる事態も予想される。山形県管財課の担当者は「使用電力を減らしても電力料金が上昇しているため、前年に比べて毎月約1・5倍という状況に変化はない」とこぼす。新潟県も「戦々恐々として電気料金の推移を見守っている」(管財課)といい、今後の値上がりに警戒感を強めている。(伊沢利幸、風間正人、本田賢一、柏崎幸三)

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