JA全農は31日、11~5月に供給する春肥の価格を発表した。単肥では硫安や塩化カリを中心に前期(秋肥)比で8~31%上げと、輸入尿素を除く6品目で値上げとなった。窒素・リン酸・カリを各15%含む基準銘柄の高度化成肥料は同10%上げで、2021年の春肥からは7割の上昇。原料の国際相場は一部で落ち着きが見られるも、急激な円安が調達コストを押し上げた。
単肥で最大94%上げと、過去に例のない値上げとなった秋肥より上げ幅は抑えられたものの、全体としては高止まりが続く。
円相場は、日米の金利差拡大を意識した円売り・ドル買いが加速。10月下旬には、約32年ぶりに150円台にまで下落。調達コストに大きく影響した。
単肥では塩化カリが前期比31%と、上げ幅が最も大きい。ロシアによるウクライナ侵攻が始まって以来、ロシア・ベラルーシからの供給が停滞し、市況では高値が続く。
窒素質では、輸入尿素が同9%下げと、単肥で唯一の値下げ。穀物相場の下落や、肥料需要が端境期を迎えたことで落ち着いた国際市況を反映した。しかし、中国の輸出制限の継続や、肥料消費大国のインド・ブラジルがこれから需要期に向かうため「予断を許さない状況」(全農耕種資材部)という。
リン酸質では、過石が同15%、重焼リンが同16%上げ。中国の輸出制限や、同国での電気自動車の普及を背景にしたバッテリー向けの工業用リン酸液需要が、原料のリン鉱石市況を押し上げている。
価格の変動率は、県域JA、経済連向けの供給価格に基づくもので、JA、農家向けとは一致しない。
全農は、調達先の多角化などで原材料の確保は例年並みにできているとしている。