アキバ！プロデュース大作戦！

秋風の吹くアキバの広場前。
そこではいつもとは違う人だかりができていた。
「おい、なんだあれ」
「アイドルコンテスト？」
「マジか！？これは見物じゃねぇか！」
生来よりお祭り好きの<冒険者>にはうってつけの
特大イベントが掲示板に張り出されている。

先月には天秤祭が行われたばかりだというのに、
余韻が消えぬ内に新たなイベントを画策したようだ。
それもどうやら大手生産ギルドが一枚噛んでいるらしい。

人ごみをかき分け、そのチラシを見てみると
そこにはこのように書かれていた。

『求む！アキバを代表するアイドル！
　※ソロアイドルも可

この度、円卓会議はアキバ広場に大型モニターを設置し
宣伝・告知目的のために運用テストを行う予定。

モニターの生産は海洋機構・ロデリック商会・第八商店街
これらを筆頭とする生産ギルド連合によって完成間近である。

ここでモニターで放映する映像の作成として、
街のプロモーションビデオにアイドルを活用したい。
そのため、アイドルコンテストを開きたく思う。

参加条件：何でもあり
応募期限：11月10日18:00まで
我こそはこの街のアイドルに、と思うそこのあなた！
うちのギルメンなら絶対にアイドルになれる、と考えたあなたも！
アキバの街のアイドルを自分たちの手で作り上げてみませんか？！
１位に輝いたアイドルにはプロモーションビデオの参加、
及び３位以内のアイドルには豪華賞品・賞金も用意！
日時は参加者が集まり次第、再度公表予定。

追記：
会場設営や技術者、軽食販売などの
希望者を募集中。
活動内容に応じて資金提供・報酬の贈与を行います。

協賛：円卓会議、生産ギルド連合』

これを見た時、どのような反応をするのだろうか。
アイドルへの興味から参加を希望するか。
賞品・賞金に目を輝かせるのか。
もしくは祭りを裏方から支えようと思うのか。
十人十色の考えが巡ることだろう。

１１月の１３日。
アイドル希望者が集まり、コンテストの予選が決定する。
今回の予選メンバーは８０組近くにも及ぶという。
参加アイドルはソロから４８人、
それどころか１８０人のユニットまであるようだ。
参加種族もバラバラ、大地人まで出るようだ。
（ちなみにレイネシア姫も推薦されたが、
本人が丁重にお断りしたのだとか…）

再び広場には告知のための張り紙がされている。

『アイドルコンテスト予選！

今回の参加アイドルは、なんと８４組！！！

本コンテストでは組織票を防ぐため、
同ギルドメンバーによる投票は無効としています。
もちろん他アイドルへの投票はＯＫ！
一人３票まで投票可能としています。

本選に出場できるのはこの中で６組のみ！！
倍率はな、な、な、なんと…！！１６倍！！！！

さて、壮絶な戦いで勝ち抜くのはどのアイドル達か！

開催日時：11月20日12：00～
場所：中央通り広場前

アキバアイドルコンテスト広報部』

その隣には参加受付した際に撮影した
アイドルたちの写真がズラリと並んでいることだろう。
すでに衣裳に身を包みポーズを決めている者もいれば、
おっかなびっくり顔で映っているものまでいる。
中にはマッチョ軍団の写真もある。
メイド集団が４８人揃っているものまであるし、
仮面を付けたアイドルユニットもいるようだ。

そんな掲示板を大勢の人が食い入るように見ているのだ。
「おいおい、この子可愛くね？」
「待てよ、こっちのグループの方が断然推しだな」
「お前たちわかってないね。俺は圧倒的この子だよ」
「ウホッ！いい男」
それぞれが色々な目を持ってアイドルたちの写真を見定める。
そう、もうこの時点から戦いは始まっているのだ。

コンテスト予選は一週間後の２０日。
それまでに衣裳や歌・踊りの練習が必要だ。
多くの希望者が素人であることは目に見えているが
付け焼刃でも他とは差異をつけなければ。

あなた方は衣裳の素材を手に入れるため、
街の近くのフィールドへと探索に行くだろう。

糸や安全ピンといった簡易素材はアイテムの分解や
マーケットでの購入でなんとかなるものの、
装飾や個性的なものを求めるのであれば
花や鉱石・宝石の類を手に入れる必要がある。

今回必要になる素材は
・<宝石土偶兵士-ジュエルテラコッタゴーレム→ 蒼麗の宝石
・<魅惑の死血花-魅惑のアルラウネ→ 鮮紅の花飾り
である。

その地点に向かうにはそこそこの道を歩く必要があるだろう。
●消耗表：体力
※休憩しながら歩くため、レストタイムを挟んでも良い。

フィールドを歩いているとガサガサと森がざわめく。
あなた方の五感が敵の気配を感じ取るだろう。

コンテスト予選まで残り３日を切った。
会場設営のためにあなた方は広場へ集まるだろう。
中にはここで設営をする時に
自分たちの名前を売る人もいるのだとか。
一緒に仕事をした仲間という点もあり
親近感が湧くのかもしれない。

消耗表：体力（会場設営希望者だけで良い）
注目度効果に+1修正×人数分（最大４点）

設営は着々と進んでいく。
これなら予定通りに行えそうだ。
「皆ーお疲れ様ー！」
声をかけてくるのはロデリック商会のミカカゲだ。
その後ろには小さな精霊のアルラウネ（アリー）が隠れている。
ミカカゲは試作品のお菓子を持ってきてくれたようだ。
「疲れた時には甘いものが一番！皆に差し入れだよ！」
ここで差し出されたお菓子を食べるならば
受けている疲労を５回復できる。
「それじゃあ、頑張ってねー」
彼女は精霊のアリーと手をつなぎ去っていく。

今日は広場に大型モニターを設置する日だ。
モニターは巨大であると同時に壊れやすい素材のため、
大人数で声を掛け合って正確に設置しなければならない。

判定[操作or解析/10]
→成功
注目度効果に+1修正×人数分（最大４点）

「よし、３時の方向に移動するぞ！」
声をかけているのは海洋機構のトップであるミチタカだ。
完成したモニターの様子をいち早く見たいがために
自ら持つ役まで買って出たようだ。
「あーもう少し上。そうそう、そこでお願いします」
遠目から指示を出すのはロデリック商会のトップ、ロデリック本人だ。
彼もまた出来上がったモニターを確認したいのだろう。
「テステス、聞こえますかー？」
水晶玉に声を投げかけているのは第八商店街の若旦那、カラシンだ。
彼はモニターにテスト放映する動画を撮っていたようだ。

ここには大手生産系ギルドのマスター３人が介している。
このモニター設置はそれだけに期待の大きなものなのだろう。
「こちらは接続完了です」
「よし、それじゃあ映してくれ！」
ロデリックの言葉をきっかけにミチタカが合図する。
すると巨大モニターにカラシンの顔が映し出される。
『テステス、聞こえますかー？』
映像を見て飛び上がって喜ぶ者もいれば、
ガッツポーズで騒いでいる者もいる。
「こう皆に見られてると思うと恥ずかしいなぁ…」
そこには頭を掻きながら照れるカラシンの姿があった。

今日は１１月２０日。
待ちに待ったアイドルコンテスト予選の日。
今日勝ち抜くことができれば明日の本選に出場できる。
アイドル志願者たちはやる気満々のご様子。
『この度はこのようなお祭りにご招待下さりありがとうございます』
モニターを通して聞こえてくるレイネシアの言葉に
思わず冒険者たちは歓声を上げている。
一方で大地人達は頭を下げたり、膝をついたりと
一様に敬意を払っているようだ。

パーンッと花火が上がる。
そして広場に進行役とコメンテーターが現れる。
『さぁて、皆さん！
これからアイドルコンテスト予選を始めたいと思います！！』
進行役の声に観客達は大盛り上がりで騒いでいる。
アイドル達は会場裏の楽屋で皆待機しているのだろう。
広場の熱は秋の寒さなどまるでなかったかのように
ボルテージが上がっていった。

大盛り上がりの会場脇の屋台にて。
あなた方はクレセントムーンの販売所にいる。
目の前にはギルマスのマリエールが笑顔で迎えてくれる。
「やぁー！ よぉ来てくれたなあ。
みんなにはこれを売ってもらうさかい。
まずは食べたって！」
彼女はあなた方にクレセントバーガーをくれるだろう。
ここで食するのであれば疲労を８回復してよい。

判定[交渉or運動/9]
→成功
注目度効果に+1修正×人数分（最大４点）

「ほんまにおおきにな！
うちのところもアイドルやるっちゅう子がおって
丁度人手が足りんかったんや！」
どこか誇らしげに語るマリエール。
「みんなもアイドルなるん？
せやったらうちが投票したる！」
自分のギルドの子たちには投票はできない仕組みのため、
彼女はあなた方のアイドル希望者に投票してくれるそうだ。

「なぁ梅子ぉ～うちも見たい～見たい～！」
念話をしているのだろうか。
マリエールは耳に手を当ててヘンリエッタと話しているようだ。
「え、ほんま？！まだ間に合う？？！」
そんなことを呟きながらマリエールは会場の方へ行ってしまうのだった。

予選は全アイドルの演目が終了した。
本日の19:30に広場にて本選メンバーが発表される。
発表まではとても長く感じられるだろう。
広場はざわつきを見せ、進行役が現れる。
『お待たせいたしましたぁ！！
今から本選メンバーの発表です！！！』
彼の一言に観客は大盛り上がりを見せる。

『それでは発表です！！！』
こうして本選メンバーが明らかになっていく。
１組目は西風の旅団、ソウジロウ
２組目は三日月同盟、クレセントガールズ
３組目は獣人族部隊、アニマルケモナーズ
４組目は謎のアイドル集団、ELD48（エルダーテイル48）
５組目は大地人美少女メイドユニット、プリンセスメイド
６組目は１８０人の冒険者からなる、セルデシアファミリー
７組目はモア・プロテイン、マッチョクラブ
そして最後の８組目はあなた方のアイドルだ。
（パーティで１を選択している場合）
（していない場合は記録の地平線、五十鈴とルンデルハウス）

「キャー！ソウジロウ様！！！」
「クレセントガールズ、激マブじゃね！？」
「ケモ耳最高！！アニマル最強！！！」
「秋〇康に怒られるぞ？？」
「はぁ……メイド……もう、俺死んでもいい……萌え……」
「おいおい、なんだあの集団」
「てかマッチョクラブって誰得だよ」
さまざまな観客の声が耳に届くことだろう。

もはや負けるわけにはいかない。
アイドル戦国時代、まさしくここが関ヶ原。
熱い戦いは明日へと持ち越しになった。

今日は１１月２１日。
本選は１２時から開催される。
今こそ本気の見せどころ。
まずは一回戦の勝ち抜きだ！
相手は１８０人の冒険者集団、セルデシアファミリーだ。
あんな烏合の衆に負けるわけにはいかないだろう。

（素材を入手していない場合はここで脱落。
やはり数には勝てなかったのだろうか……）

１回戦は圧勝だった。
というより１８０人のはずが３～４人が時間に集まらず
結局相手の連携もバラバラ。
きちんと準備をしたこちらが勝つに決まっていたのだ。

そんなこんなで話していると、
向こうから声が聞こえてくる。
「よう頑張ったなぁ、みんな。
まあ運が悪かったんや、よしよし」
どうやら一回戦敗退してしまったギルメンを
マリエールが慰めているようだ。
「キャー！！さすがソウ様！！」
「やっぱソウジならこれくらいやるよねー」
「皆が応援してくれたおかげですよ」
ナズナを筆頭にソウジロウ親衛隊が愛しの彼を応援している。
一方のソウジロウははにかんで照れている。

これで決勝に参加するのは４組。
こんな結果を誰が予想しただろうか。

魅力たっぷりイケメン貴公子のソウジロウ。
丹精に織られたメイド服を着る大地人美少女２人組のプリンセスメイド。
ほとんど注目度だけで這い上がってきたマッチョクラブ。
そして、あなたたちのアイドルだ。
ここからが最後の勝負となる。

アイドルコンテスト決勝戦の全部の競技は終了した。
後は結果発表を待つまでだ。
本部では現在集計を行っているようだ。

会場はざわめきを見せる。
どうやら集計が終わったようだ。
『おまたせいたしましたぁ！！
アイドルコンテスト決勝戦。
輝かしく一位に選ばれたアイドルは…』

太鼓の音が鳴り、皆が結果を待つ。
そして司会者は言う。

『●●です！！！』
（結果次第で変更）

会場は大きな拍手や武器を鳴らす音に包まれる。
妖術師の誰かが花火を打ち上げたようだ。

『さあさあ、一位の●●さん（達）は会場中央へどうぞ！！』

こうしてアイドル決定戦は最高潮の盛り上がりを見せた。

時期は１１月２７日。
あなた方はアキバの各所を巡っていることだろう。
これからプロモーションビデオを撮影するのだ。

「はい、こちらに目線ください！！」
スタッフがアイドルに声をかける。
「そうそう、いいですねー！
それじゃあ今から本番入りまーす！！」
そんな声と共に水晶による映像撮影が始まる。

アイドルはアキバを紹介していくことだろう。
時に大手ギルドを見学してみたり、
また時には銀行や酒場に顔を出してみたり。
その光景は大災害当時の暗いアキバなどではなく、
活気に満ち溢れたアキバの姿があった。

１２月１日。
アキバの広場にて。
設置された大型モニターには多くの冒険者や大地人が集まっている。
どうやら撮影した映像が映されるようだ。

「どれどれ、ちゃんと映るのか？」
「いやー楽しみだなー！」
「すげぇ…もうこんなに技術進歩したのか？！」

彼らの声は楽しそうなものばかりだ。
映し出されたアイドルを見てはしゃいだり、
ここに自分が映ってると自慢をしたり。
どこか無邪気で微笑ましいものだ。
今回の作戦は大成功だったらしい。

これからいつ現実世界に戻れるかわからない。
それでも。
こんな活気のある町なら。
あなた方はそう思いながら
今日もこの世界を生きていくのだろう。

ＦＩＮ.