ミストラルの旅路:前編
これはCR6の〈冒険者〉を対象とした『LHZ』のシナリオである。あなたがGMならば、このシナリオを使うことですぐに『LHZ』を遊ぶことができる。あなたがプレイヤーとしてこのシナリオを遊ぶつもりならば、これを読むのはセッションが終わるまで待ってほしい。このシナリオのガイダンスは以下の通りである。
【戦闘、ミッションの数】
このシナリオにおける戦闘・ミッションの数はそれぞれ2つずつである。
戦闘
①ミドルフェイズ戦闘
(ミストラル船内にて:〈Plant hwyaden〉の冒険者による襲撃)
②クライマックス戦闘
(ミストラル船倉内にて:ゼピュロスの移動大神殿の破壊)
ミッション
①船内探索
(ミストラル乗船後:船内の探索、およびカジノゲームなど)
②情報収集
(襲撃後:敵から隠れながら情報を探る)
GM向け情報
シナリオ背景
このシナリオでは〈神聖皇国ウェストランデ〉と〈Plant hwyaden〉による攻撃を描いたものとなる。
彼らは豪華客船「ミストラル」船内に「ボレアスの移動神殿」を象った「ゼピュロスの移動大神殿」なるものを設置し、アキバの冒険者と同盟都市の領主達を人質にしてミナミへと連れ帰る強攻策戦を計画する。
発案は〈十席会議〉の第三席に位置するゼルデュスという冒険者であり、今回の策戦における最大の目的は〈自由都市同盟イースタル〉に対しての先制攻撃、及び裏切り者の始末である。
当策戦では「ミストラル」船内へ両国領主の親族が集まる場となり、〈神聖皇国ウェストランデ〉と〈Plant hwyaden〉側にとっても派手な行動を取るための機会と成り得る。〈Plant hwyaden〉に懐疑的な領主を抹消する目的としても都合が良い。
また、これにより東西の大地人の関係性に大きな変化が訪れることだろう。
PC番号およびシーンプレイヤーの扱い
このシナリオでは、PC番号を使用せず、またシーンプレイヤーも指定しない。GMは必要であれば任意にシーンプレイヤーを指定してもよい。
任意判定について
任意判定には[運動判定][耐久判定][解除判定][操作判定][知覚判定][交渉判定][知識判定][解析判定]を想定している。
[命中判定][回避判定][抵抗判定]は含まれない。
プリプレイ
レギュレーション
このシナリオは以下の環境で遊ぶことを想定して作成されている。GMの決定した難易度によって【因果力】が増減するため忘れず反映すること。
使用ルール
-
『ログ・ホライズンTRPGルールブック』
-
『ログ・ホライズンTRPG拡張ルールブック』
GMが許可するのであれば「ログホラ・ウェンズデイ」や「セルデシア・ガゼット」の追加データを使用してもよい。
推奨キャラクター
このシナリオはCR6のキャラクター3人から5人を対象に遊ぶことを想定している。すでにいくつかの冒険を経験したプレイヤーがCRを上昇させた環境を念頭に置いているが、新たに「ハイコンストラクション」でキャラクターを作成してもよいだろう。4種類の「アーキ職業」のキャラクターが全て揃うようにすることを強く推奨する。プレイヤーの人数が少ないときは、「戦士職」と「回復職」のキャラクターを優先すること。
おすすめサブ職業
【シナリオにミッションがある場合などには以下を編集して使用する】
このシナリオにはミッションが存在する。このミッションにおいてボーナスを得られるサブ職業は以下の通りだ。
状況の解説
PCの立場
【同じギルドに所属している、ギルドホールの冒険斡旋所に偶然居合わせた等、シナリオ開始時のPCの立場を記述する】
ユニオンの結成
【同ギルド所属などの開始状況があれば、以下を編集して使用する】
このシナリオではPCたちは同じギルドに所属し、パーティーを組んで冒険している。話し合って、ギルドの名前やギルドマスターを決めること。決まったら、キャラクターシートのユニオンの欄に「ギルド名」を記入しよう。
PCが希望するならば、コネクション、ユニオンを取得してもよい。
セッション難易度
以下の難易度から1つ選択する。そのとき『ログ・ホライズンTRPG』未経験者がプレイヤーに含まれているのであれば「難易度:イージー」を選ぶこと。
オープニングフェイズ
GMはメインプレイとオープニングフェイズの開始を宣言し、次のシーンのシーン予告をすること。
インタールード
シーン予告の内容は、次のシーンのシーン定義を目的から順番に読み上げるとよい。プレイヤーからのシーン要望が無ければ、そのまま次のシーンを開始する。
シーン予告とシーン要望の確認は以降のインタールードでも毎回行なうこと。また、このシナリオでは、基本的にすべてのシーンにPC全員が登場する。GMはこれもプレイヤーに伝えよう。
OP1:【ミストラル号の出船】
シーンが始まったら「オーバーチュア」を読み上げ、シーン開始時の様子を描写しよう。以降のシーンも、開始したらまず「オーバーチュア」を読み上げること。
大災害から一年が過ぎようとしていたある日の事。
ヨコハマの街に豪華客船「ミストラル号」が停泊する。
普段は穏やかな港町も見物にやってきた冒険者や大地人で溢れかえっている。
事は遡り1週間ほど前。
円卓会議と自由都市同盟イースタルへある一通の招待状が届いた。
それは西方の神聖皇国ウェストランデからのパーティへの誘いだった。
表向きとして領主やその家族と共に船上での晩餐会を開くというものであり、
同時に各首脳間で交渉を行う目的でもあるようだ。
噂はアキバ中に広まり、多くの冒険者達の間で持ち切りになる。
また、それは大地人の間でも衝撃を与えていた。
あなたたちのギルドはアキバの街で少しずつ名声を得て、
今では円卓会議からの依頼を直接要請されるほど信頼を得ていることだろう。
ギルドマスターはシロエから念話を受け、依頼を受注することになる。
シロエからの念話(リーダーへの秘匿)
彼はギルドマスターに対してこのように言うだろう。
「今回は依頼を引き受けてくれてありがとうございます。
内容についてはミストラル号に乗船する領主とその家族の護衛です。
今回の依頼は複数のギルドと協力して行うことになります。
各自、連絡役と護衛役を立てて万が一の状況に備えるようお願いします」
どこか落ち着いた声で彼は淡々と指示を与えていく。
「それと、今回の依頼に関してですが……。
神聖皇国ウェストランデの裏にはPlant hwyadenが付いています。
彼らの手によって何らかの策戦が行われる可能性は否定できません。
くれぐれも細心の注意を払ってください」
何かを警戒しているのだろうか。
彼は少し声を潜めながら言うだろう。
「依頼の詳細については後程資料をお配りします。
乗船については明日の16時よりとなります。
今回はよろしくお願いします」
そう言って、シロエからの念話は切れた。
ミノリの依頼説明
暫くすると神祇官の少女がやってくるだろう。
「ええと、●●(ギルド名)の方々ですよね?
私は記録の地平線<ログ・ホライズン>のミノリです。
明日の依頼についての資料をお持ちしました」
ミノリと名乗る少女はメンバー各員に用意した資料を渡す。
「今回の依頼についてですが、発注者は自由都市同盟イースタルです。
24人の領主の内、乗船するのは半数の12名とその家族。
また、使用人を合わせて84名です。
12名の領主一人一人に対して中小ギルドを1つずつ配置し、
連携して護衛にあたる予定です」
彼女は一枚の羊皮紙を広げ、指さしながら説明していく。
「護衛については2組に分かれて行動、指揮していきます。
1組は直接護衛対象に付随し、危機に備えます。
もう1組は船内を巡回しつつ異常探知を行います。
前者は護衛対象1人につき1人のマンツーマンで、
後者は1人以上であれば構いません」
続けてミノリは言う。
「今回●●(ギルド名)の方々に護衛していただくのは
ツクバのキリヴァ候とそのご家族になります。
護衛対象は領主と奥様、そしてご子息の3人です。
キリヴァ候は学問に対して熱心なお方で、
自由都市同盟イースタルにとっても重要な人物です。
どうか護衛のほどよろしくお願いします」
彼女は丁寧にお辞儀をし、荷物をまとめる。
「あわただしくて申し訳ありません。
これから他のギルドの方にもご説明しなければなりませんので、
これで失礼します!」
再びあなた方の方へとお辞儀をして、彼女は去っていくことだろう。
※依頼を受注した後、それを伝聞し共有する。
・役割決めについて
護衛の対象と配置について決定していく。
A:護衛対象と直接付随する(3名)
1、キリヴァ候
学問ギルドの勢力の強い都市、ツクバの街の領主。
知覚・知識判定が高いか、
サブ職業<魔法学者><学者><提督><機工師>がオススメ
2、奥様(エカテリーナ夫人)
流行や料理に興味があり、おしゃれ好きな夫人。
耐久・交渉判定が高いか、
サブ職業<メイド><エルダーメイド><料理人><裁縫師>がオススメ
3、子息(アルヴィス)
知的で頭の回転は速いが、どこか偏見の強い少年。
操作・解析判定が高いか、
サブ職業<魔王><武侠><勇者><狩人>がオススメ
B:船内の巡回(1名以上)
船内の構造の把握、及び探知能力が必要とされる。
運動・解除判定が高いか、
サブ職業<辺境巡視><筆写師><地図屋><追跡者><軽業師>がオススメ
役割が決まったところで
Aは[護衛]タグをBは[巡回]タグを獲得する。
このタグは当シナリオ終了時まで持続する。
ミストラル号への乗船
いよいよミストラル号へと乗船する時刻が近づいてくる。
領主に付随する以上、身だしなみや立ち振る舞いは整えておくべきだろう。
時刻は16:00の少し前、ヨコハマの別宮にて。
あなた方はキリヴァ候と対面することになる。
「君たちが今回護衛してくれる方達か。宜しく頼むよ」
目を細めながら笑みを向けてくるのは一人の男性である。
「どうぞ、よろしくお願い致しますわ」
ドレスを身にまといキリヴァ候に腕を絡める女性はエカテリーナ夫人だ。
「君がボクを護衛してくれるんだね、よろしくね」
どこか人懐っこいメガネをかけた少年は子息のアルヴィスだ。
彼らは一様に挨拶し、あなた方を見定めることだろう。
ヨコハマの港に停泊しているミストラル号は
まさしく現実世界の豪華客船に劣らない出来栄えである。
あなた方には大地人の元来の技術ではないことは予想できるだろう。
ミストラル号から桟橋が架けられ、領主と護衛達は次々に乗船していく。
あなた方もそれに続き、船へと入っていくのだった。
シーン終了
これにてオープニングフェイズは終了となる。
以降はサブミッションフェイズへと移行する。
サブミッションフェイズ
インタールード
ここからはサブミッションフェイズとなる。GMはサブミッションフェイズの開始をプレイヤーに宣言しよう。
オープニングフェイズが終了したので、各PCには【因果力】1点づつを配布しよう。
SMF1 ミストラル船内にて(護衛・探索)
ミストラル号へと乗船したPC達はキリヴァ候家族と共に会場へと入る。
そこには200人以上の領主達や護衛、使用人が集まっている。
中には神聖皇国ウェストランデの貴族もちらほら伺えるだろう。
「お待たせいたしました!本日はお集まりいただき、誠にありがとうございます!」
司会と思われる男性の声が増幅器によって会場全体に響き渡る。
声に合わせて周囲の話し声は小さくなり、自然と前方へ注目が集まる。
「ささやかながらではありますがどうぞ、パーティーをお楽しみくださいませ」
彼の言い終わると、拍手と共に楽団が音楽を奏で始める。
それはエルダーテイル時代のBGMをオーケストラ演奏したものだ。
「さて、では我々も動き始めましょうか!」
キリヴァ候はどこか張り切った様子で辺りを見渡している。
この機会に西方の技術を吸収するつもりなのだろうか。
「私はお料理やドレスを見て回りたいですわ」
エカテリーナ夫人は会場の料理や商業スペースの服に目が行っている。
船内には大商人も乗り込んでいるようで、品揃えはかなりのようだ。
「僕はデッキで海を見てみたいな」
アルヴィス子息はツクバでは中々見ることのできない海に興味津々のようだ。
デッキには望遠鏡も設置されており、遠くの街も見れそうだ。
巡回班は別行動で船内の探索へと移る。
他のギルドメンバーとの合流を果たすことができるだろう。
ミッション説明
このフェイズは3ラウンドのサブミッションを行う。
目的は
・護衛対象との親密度の向上
・船内の異常探知および探索
である。
親密度…各護衛対象にあり。上限なし、マイナスあり
探索度…船内の探索度(全PC共通)上限20点
集中力…このシーン中のあらゆる判定に修正を加える。累積上限5点。
ミッション中の動作は以下の通りである。
ハプニング
◎1ラウンド終了時
「君たちの技術について聞きたいのだが…」
キリヴァ候からの急な質問が来る。
「所謂、電気と呼ばれるものがこの世界における魔法回路に相当するのだろうか。
ともすれば、大気中にマナと同様の電気エネルギーが存在し、それらを使用し…」
彼は暴走気味に自身の持論について語り始める。
早口でもあるため、完全に聞き取ることができなかった。
「それで、君はどう思うかね?」
さて、あなたはどう答える?
A:「大体そんな感じですね」
B:「電気はマナとは違い科学的に生成することができます」
C:「ちょっとよくわからないですねぇ(苦笑)」
Aを選んだ場合:
「うーむ、君…ちゃんと話を聞いていたのかね?」
どこか不信そうな目で見られてしまった。
適当に相槌を打ったのがバレてしまったか…?
キリヴァ候との親密度に-2
Bを選んだ場合:
「ほう…。これは面白い事を聞いた!
つまり、マナとの違いは人為的にそれを生成できるかどうか。
その他にも相違点が考えられそうだ…。
ありがとう!新たな学術的観点が生まれたよ!」
どうやらキリヴァ候の納得のいく回答が得られたようだ。
キリヴァ候との親密度に+3
Cを選んだ場合:
「ハハハ、失敬。つい悪い癖が出てしまったようだ。
だが、これは今後の学術的課題としても良いかもしれないな。
君と話をしていると色々なことが考え付くよ」
よくはわからないがキリヴァ候は楽しそうだ。
キリヴァ候との親密度に+1
◎2ラウンド終了時
「あら、この服いいんじゃないかしら?」
ご機嫌そうにエカテリーナ夫人は大商人の品物を手に取る。
「奥様、とってもお似合いですよ!ぜひとも我が商会の商品を」
「そうかしら?とっても迷ってしまいますわ」
しかし、彼女が手に取るその品物は400Gだ。
いくら流行の品物とはいえ少し値段が高いような気がする…。
「冒険者さんはどう思いますの?」
エカテリーナ夫人はあなたへと質問を投げかける。
さて、あなたはどう答える?
A:「400Gはお高いですね。300Gくらいでしたら買えるのですが」
B:「お似合いではありますがやめておきましょう」
C:「とってもお似合いです!是非とも買うべきですよ!」
Aを選んだ場合:
「そうですわね、お気に入りではあるのだけれど…」
「お、奥さん…300Gはちょっと。せ、せめて350Gくらいなら…」
「あら?よろしいのですの?んーでも…」
「な、なんならこちらもお付けいたしますので…!」
どうやら交渉がうまくいったようだ。
「あなたのおかげでお得に買えてしまいましたわ、フフッ」
エカテリーナ夫人は大満足のようだ。
エカテリーナ夫人との親密度に+3
Bを選んだ場合:
「そうね…これだけ高いとちょっともったいないかしら…」
「奥様、それでは370Gにおまけ致しますよ」
「あら、それなら買ってしまおうかしら」
少し値下げしてくれたようだ。
「ちょっとお得にお買いものできましたわ」
彼女はあなたに少し微笑みかけてくるだろう。
エカテリーナ夫人との親密度に+1
Cを選んだ場合:
「そうかしら?うーん……」
「奥様、こちらをお買い上げで?」
「……やっぱりやめておきますわ」
何か気に召さなかったのだろうか、彼女は大商人から離れていく。
「…ごめんなさい、何だか本当に似合っていると思えなくて」
言い方が気に障ってしまったのだろうか。
露骨に言うべきではなかったのだろう。
エカテリーナ夫人との親密度に-1
◎3ラウンド終了時
「ねぇ、冒険って楽しい?」
アルヴィスは水平線を見ながら問いかける。
「僕はさ、お屋敷でいっぱい本を読んで勉強しているんだ。
だからたくさんの事を知ってるし、いずれはお父様のような領主になるんだ」
彼は眼を輝かせながら言う、が。
声は段々と小さくなっていく。
「…だけど、本当にこれでいいのかなって…。
本は色んなことを教えてくれるけど、
結局それは誰かが見つけたことを僕が知るだけなんだ。
なんだか…本当にそれでいいのかなって…」
彼はあなたに振り返る。
「僕が冒険に出たいって言ったら、君はどう思う?」
さて、あなたはどう答える?
A:「あなたは次期領主としてこのままでいいと思います」
B:「じゃあ今度一緒に冒険でもしてみますか?」
C:「良い経験になると思いますよ」
Aを選んだ場合:
「……君はそう思うんだね」
彼の瞳に憂いの色が出る。
選択を間違えたのだろうか。
「僕は、本当にこのままでいいのかな…」
彼の呟きが脳裏に焼き付いた。
アルヴィス子息との親密度に-3
Bを選んだ場合:
「え…?!」
咄嗟の一言に彼は驚きを隠せない。
まさかこんな返しをされるとは思ってもみなかったのだろう。
「僕が君と一緒に…冒険…」
彼はどこか思い浮かべるように呟く。
きっと楽しいことでも思いついたのだろう。
彼の頬は緩んでいる。
「面白そうだな…!今度お父様に相談してみるね!
許しが出たら、約束だよ?」
彼は満面の笑みで右手を差し出す。
あなたとアルヴィスは約束の握手を交わすことだろう。
アルヴィス子息との親密度に+5
Cを選んだ場合:
「そっか…!そうだよね!」
彼はどこか肯定された事が嬉しかったのだろうか。
先ほどまでの迷った顔は笑顔へと変わるだろう。
「ねえねえ、もっと冒険の話聞かせてよ!」
彼はあなたに冒険の話をせがむのだった。
アルヴィス子息との親密度に+2
【GM情報】
探索度・各NPCとの親密度はメインミッションにて使用。
そのため、データは保管しておくこと。
※集中力はこのサブミッションのみ
サブミッション終了
各々が船内で楽しい時間を過ごしている中。
どこかでトラブルが発生したのだろうか。
「おい、貴様!!一体何のつもりだ!?」
貴族と思われる男性が大声を上げる。
「ギャハハハハ!!死ねぇ!!!!」
狂ったような笑い声。
周囲の息を呑むような悲鳴。
ガシャン、と食器の割れる音。
そして…
周囲に鮮血が飛び散る。
つんざめくような悲鳴とざわめきが会場をパニックへと導く。
倒れている大地人の貴族の首元からは血が流れ、赤い水たまりを作っている。
虚ろな目で彼は口を動かす。
「謀った…な…」
その一言を皮切りに、彼は絶命した。
「動くなっ!!!!」
「お前ら全員妙な真似はするなよ?」
「へっへっへ、動けばこいつらが死ぬぜ??」
大地人の貴族達を人質に取る冒険者集団。
周囲は静まり返り、彼らに注目が集まっている。
人数は見えているだけで数人。
もしかするとまだ隠れている奴がいるのかもしれない。
けれど迂闊に動くことはできない。
まずは状況を確認するところからだ。
▼ミドルフェイズへと移行
インタールード
この後ブリーフィングシーン、および戦闘シーンが予定されている。次のシーン
はブリーフィングフェイズとなることを宣言する。
エンカウントシート(ミドルフェイズ)
A | B | C | D | E | F | G | H | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ||||||||
2 | ||||||||
3 | 暗殺者 | |||||||
4 | PC | PC | 暗殺者 | |||||
5 | PC | PC | ||||||
6 | ||||||||
7 | ||||||||
8 |
ブリーフィングシーン
戦闘準備
偵察行動(達成値10.20)
20成功時
→偵察は完璧だ。あなたは
・<破滅の暗殺者>ルイン・アサシン
・<破滅の武闘家>ルイン・モンク
・<破滅の召喚術師>ルイン・サモナー
の存在を知る。
成功時
→気配は計8体、しかし視認できないものもいるようだ
失敗時
→人影に隠れて相手の姿を視認できなかった。
ファンブル時
→思ったより近くに居た敵に気づかず敵愾心を得てしまう。
戦闘参加PC全員のヘイト+2
消耗表での戦闘スキップ
このの戦闘は消耗表を用いることでカットすることもできる。もしも戦闘をカットする場合は「消耗表:体力」と「消耗表:気力」の両方をそれぞれ1回ずつロールすること。
シーン終了
戦闘の準備が整ったら、シーン終了となる。ブリーフィングシーンもシーンの一種なので、【ヘイト】はリセットされることに注意しよう。
インタールード
次はいよいよ戦闘シーンとなる。使用するエンカウントシートやマーカーなどを用意しよう。プレイ時間に不安があるなら「消耗表」による処理も可能である。
戦闘シーン
【戦闘データ各種】
破滅の暗殺者《ルイン・アサシン》[人間][冒険者][Ruin Cluster]3体
破滅の武闘家《ルイン・モンク》[人間][冒険者][Ruin Cluster]2体
破滅の召喚術師《ルイン・サモナー》[人間][冒険者][Ruin Cluster]3体
人ごみ《ひとごみ》[プロップ][人間][オブジェクト] 12体
戦闘MAP、エネミー・プロップ配置などは他MAPにて記載。
PC配置 D4~5・E4~5
破滅の暗殺者 C3、D7、G4(すべて隠密)
破滅の武闘家 PC配置後、人ごみのいずれか(D12)×2
破滅の召喚術師 PC配置後、人ごみのいずれか(D12)×2
人ごみ B4・5、C3・6、D2・7、E2・7、F3・6、G4・5
【戦闘マップ画像】
【戦闘敵配置画像】
※クリンナップごとに人ごみの中にいないエネミーに対して
護衛をしている冒険者から1d6×4点の直接ダメージを与える。
追撃が付与されている場合、それは起動する。
また、人ごみの中にいないキャラに対して1d6×4点の回復を行い、
さらにヘイトを1減少させても良い。
シーン終了
戦闘に勝利したら、シーン終了となる。倒したエネミーのドロップ品を入手するのを忘れないようにしよう。
インタールード
あなた方は戦闘に勝利し、無事人質は解放された。
誰もが動けない中、勇気ある行動がみなの心に響いたのだろう。
あなた方は会場の拍手に包まれる。
しかし、そんな最中。
船内に声が響き渡る。
「さて、諸君。この船は我々『Ruin Cluster』が占拠した。
この船は時期にとある場所へと到着するだろう。
君達は全員が人質としてこの船の中に拘束させてもらう。
そう、逃げようとしても無駄だ。
冒険者諸君は念話や帰還呪文を試みるものもいるだろう。
中には自死を行って大神殿への転移を考えるやもしれない。
だが、敢えて言わせてもらおう。
それらはすべて無効化させてもらった。
つまり今の君たちは袋のネズミというわけだよ。
残念だったな!ハッハッハ!」
声の主は高笑いをすると、その音声は途切れる。
会場は再びパニックに陥るだろう。
今回は大地人だけではない、冒険者もだ。
こんな形でテロ行為があり軟禁されるなど思ってもみなかっただろう。
これよりその組織を発見し、追放しなければならない。
こうしてあなた方はうごき始める。
▼ミッションフェイズへ移行
シーン終了
ミドルフェイズの終了にともない、PC全員に【因果力】を1点ずつ配布すること。次はミッションフェイズに以降する。
ミッションフェイズ
インタールード
ここからはミッションフェイズとなる。GMはミッションフェイズの開始をプレイヤーに宣言しよう。
MF1 テロリスト集団を捕縛せよ!(護衛・探索)
騒ぎは収まる気配を見せず、今なお混乱に包まれるパーティ会場。
そんな最中で一人の猫人族の冒険者が声を上げる。
「みなさん、落ち着いて聞いてほしいのニャ。
今、我々はあるテロリスト集団から攻撃を受け軟禁状態にあるのニャ。
しかし、戦力としてはこちらも同じかそれ以上あることに変わりないニャ。
だから、まずは団結するのニャ!」
低い声の主はニャン太班長だった。
「これより我々は反撃に出るのニャ。
ます、相手がどこに潜伏し拠点にしているのか探るのニャ。
そして、相手を確実に拘束するのニャ。
先ほどの発言と事前の調査から、相手は『ゼピュロスの移動大神殿』と呼ばれる
移動型大神殿装置に類似した何かをこの船に搭載しているようだニャ!」
彼は『ゼピュロスの移動大神殿』について語る。
それは、オデュッセイア騎士団の所持している『ボレアスの移動神殿』を象り、
蘇生時の復活ポイントを最後に訪れた街の大神殿ではなく、
その移動神殿の傍に変更することができるというものだ。
その副次的な作用として、念話へのジャミング効果もあるのだという。
つまり、彼らはそれらの効果を利用して船内と他の冒険者を分断したようだ。
「この『ゼピュロスの移動大神殿』を壊さない限り、
Ruin Clusterと名乗る集団は追放できないのニャ。
護衛班と探索班に分かれてその『ゼピュロスの移動大神殿』を探すのニャ!」
彼の発言によって船内の雰囲気は重々しいものから希望の光が見え始める。
たとえ船が占拠されたとはいえ、人数では圧倒的にこちらが有利なのだ。
相手の目論見は見えないものの盤面をひっくり返すだけの駒はそろっている。
彼の指示の元、冒険者たちが動き始める。
※『ゼピュロスの移動大神殿』は『ボレアスの移動神殿』と異なり、
蘇生するポイントが操作している者によって配置できるようになっている。
そのため、移動大神殿のすぐ傍に蘇生できるわけではなく、
万が一死亡しても船内のどこに配置されるのか見当がつかない。
また、念話機能に関しても船内で使用することができない。
(パーティチャットは別機能のため使用可能である)
ミッション説明
このフェイズは3~5ラウンドのミッションを行う。
目的は
・敵の捕縛
・船内の重要拠点『ゼピュロスの移動大神殿』の調査
である。
「敵位置」
A1体、E1体、デッキ3体、廊下右1体、船倉2 2体、船倉3 2体
勝利条件は
◆敵を10体捕獲し、探索度を40まで上昇させること
であり、
敗北条件は
◆PC全員が戦闘不能状態に陥ること
◆船内のパニック度が5に達すること
である。
※敗北した場合、シナリオは継続するが
シナリオ報酬が大幅に減少する。
(Gの報酬が0になる)
※勝利した場合、シナリオ終了時に財宝表を1回好きなもの。
40を超過分/3だけ財宝表に+修正。
修正が15を超えた場合、財宝表を2回振れる。
新密度…各護衛対象にあり。上限なし、マイナスあり
10以上の時、1+(超過分/3だけ)プラス修正を与える。(切り上げ)
探索度…船内の探索度(全PC共通)上限なし
捕縛数…敵集団の捕縛した数。上限10体
パニック度…船内のパニック状態の比率。
毎クリンナップごとに1上昇していく。上限5、初期値1
パニック度が上昇するごとに値だけ-修正が付与される。
(4人の場合は初期値0、6人の場合は初期値2)
ミッション中の動作は以下の通りである。
ハプニング
◎1ラウンド終了時
「敵の捕縛は俺たちに任せてくれ!」
他の巡回メンバーがマップのどれかを確認してくれるらしい。
2d4点分の探索度上昇と選択した(4-巡回タグのPC)マスに敵がいた場合、自動的に捕縛してくれる。(1、2ラウンド終了時に適応)
◎2ラウンド終了時
「おい!どうにかならないのか?!」
「私たちはどうなってしまうのよ?!」
「ああ!終わりだ!!我々はここで死ぬんだ!!」
大地人貴族たちのパニックが起きている。
なだめようと護衛が声をかけるが効果がないようだ。
※ここでキリヴァ候との親密度が10以上であればイベント発生。
「皆のもの!聞いてくれ!!
今が最悪の状況であることは周知の通りだ。
けれど、ここで慌ててはいけない。
我を忘れてはいけない。
ましてや、冒険者の方々に責任を押し付けるなどあってはいけない!」
彼の言葉に大地人は注目するだろう。
「私は…かつて、亜人族の襲撃の際に責任を冒険者に押し付けたことがあった。
そして、彼らに言われたのだよ。
『俺たちは犬猫じゃない!!』ってな。
たとえ彼らが元よりこの世界の住人ではないとしても。
我々を遥かに超越した存在であったとしてもだ!
我々はそれに甘えてはいけない。
対等な存在であり続けるためにも、弱さと向き合わなければいけないのだ!」
彼の言葉に聞きいる大地人達。
その姿は過去の失態をバネに成長した一人の男の輝かしい姿だった。
「我々にできることはなんだ?
ただこの場を悔い、絶望することだけなのか?
考えるんだ。闘うんだ。
たとえ力が及ばずとも、きっと状況を打破する何かを掴めるはずだ!」
思わず、その言葉に賛同する者が立ち上がる。
「そうだ!俺たちにだってできることがある!」
「ええ!私にも何かできることは!」
「たしかこの客船の地図があった!その中に神殿とやらがあるんだな」
彼らの中で絶望は希望へと変わりつつある。
一人の男の言葉によって。
以降、パニック度によるマイナス修正はプラス修正へと変化する。
エンカウントシート(クライマックスフェイズ)
A | B | C | D | E | F | G | H | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 大神殿 | |||||||
2 | ||||||||
3 | 魚騎士 | 魚騎士 | ||||||
4 | 魚人 | 魚人 | ||||||
5 | 魚人 | 魚人 | ||||||
6 | ||||||||
7 | PC | PC | PC | |||||
8 | PC | PC | PC |
CL1 ゼピュロスの移動大神殿を停止させよ!
ついに『ゼピュロスの移動大神殿』の位置を突き止めたPC達。
そんなあなた方へニャン太から声をかけられる。
「吾輩は船首にいるRuin Clusterの奴らを取り押さえるニャ。
キミたちは『ゼピュロスの移動大神殿』を破壊するニャ。
それを壊して念話ができるようにするのニャ」
彼は他の冒険者へと呼びかけながら、戦闘の準備を始めていく。
あなた方は計画に則り、船倉へと向かうことだろう。
『ゼピュロスの移動大神殿』があるとされる船倉。
暗い闇に覆われたその場所は光もなく、ただ静寂が横たわっている。
そんな最中、船が大きく揺れ始めるだろう。
そして爆発音が鳴り響く。
どうやら上で大がかりな戦闘が始まったのか、
それともRuin Clusterの仕掛けなのだろうか。
轟音と共に海水が船倉に入り込んでくる。
同時に、半魚人たちがあなたたちへと襲い掛かる。
奴らは興奮状態にあるのか頭に血が上っているようだ。
その後ろで巨大な装置が光を放っている。
どうやらこの状況も『ゼピュロスの移動大神殿』の効果なのだろうか。
早く装置を止めなければならないだろう。
インタールード
ここからクライマックスフェイズとなる。GMは、クライマックスフェイズの開始をプレイヤーに宣言しよう。
戦闘準備
【戦闘前の注意点等があればここに記述する】
次の戦闘シーンは、ミドルフェイズでの戦闘に比べて手ごたえのあるものになる。[準備]タグの特技やアイテムの使用をうながし、万全の状態で戦闘に挑めるようにしよう。
[偵察]タグを持つ行動に成功したPCがいたなら、以下のカットインを読み上げること。
【戦闘データ各種】
水棲緑鬼《サファギン》
[モブ][人型][サファギン][水棲][暗視]4体
水棲緑鬼の鮫騎兵《サファギン・シャークライダー》[人型][水棲][暗視]2体
ゼピュロスの移動大神殿《いどうだいしんでん》[プロップ][オブジェクト] 1体
戦闘MAP、エネミー・プロップ配置などは他MAPにて記載。
PC配置 D~F78
水棲緑鬼 D45、F45
水棲緑鬼の鮫騎兵 C3、G3
ゼピュロスの移動大神殿 E1
船倉の闇(薄暗がり+阻止能力無効)
【戦闘マップ画像】
【戦闘敵配置画像】
シーン終了
戦闘の準備が整ったら、シーン終了となる。
インタールード
次はいよいよ戦闘シーンとなる。使用するエンカウントシートやマーカーなどを用意しよう。
戦闘ラウンド制限:8ラウンド
(5ラウンド目からはフィールドをプールとしても扱う→水泳状態へ)
勝利条件:『ゼピュロスの移動大神殿』のプロップ解除
※解除できなかった場合、財宝表はなし、
気力・体力消耗表を1回ずつ振る。
また、装備しているアイテムを一つに[破損]タグをつける。
船は港に漂流し、乗客は無事に済むものの
疲労困憊状態にあるだろう。
シーン終了
戦闘に勝利したら、シーン終了となる。倒したエネミーのドロップ品を入手するのを忘れないようにしよう。
また、冒険者たちは、「財宝表」のいずれかの欄(PC人数×1~2)回ぶんの財宝を見つける。(ミッションの報酬)財宝表ロールを行うこと。魔法素材、換金アイテムのどちらで振るかはプレイヤーが自由に選択してよい。
エンディングフェイズ
インタールード
ここからはエンディングフェイズとなる。GMは、エンディングフェイズの開始をプレイヤーに宣言しよう。
エンディングは、すべてのフェイズの中でも比較的変更が容易な部分である。エンディングの目的は物語を終わらせ、プレイヤーに満足をしてもらうことだからだ。
E1:ミストラル号の行方
『ゼピュロスの移動大神殿』が壊された頃、
置かれていた船倉は浸水が酷くなっていることだろう。
船は自動修復機能が作動しているものの、
このまま航海を続けられる状況にはない。
一方、装置が壊れたためか周囲のモンスターは
気が付けばあなた方から離れていく。
どうやら船首にいた彼らの戦闘は終わったのだろうか。
ニャン太から念話が飛んでくるだろう。
「皆、大丈夫かニャ?
『ゼピュロスの移動大神殿』は無事破壊できたみたいだニャ。
そっちの状況が落ち着いたらパーティ会場まで来てほしいニャ」
そうして念話は途切れることだろう。
会場に集まる頃には大地人とニャン太を中心とした
冒険者達がそこに居ることだろう。
ただ、冒険者の数は若干少なくなっているようだ。
転移呪文を使ったのだろうか、この状況では致し方ないのかもしれない。
ニャン太が声を上げる。
「今、この船はナゴヤ方面に向かっているニャ。
これ以上の渡航はできないようだニャ。
とりあえずはキヨスの港で力を蓄えてアキバの街に戻るのニャ」
こうしてあなた方は一時キヨスの街へ辿り着くのだった。
シーン終了
PCたちのロールプレイが一段落したら、このシナリオは終了となる。
【報酬配分に関して追記事項がある場合はここに記述】
エンディングフェイズが終わったら、メインプレイを終了し、アフタープレイに移ること。
アフタープレイ
「アフタープレイ」にしたがってアフタープレイを行なう。
このシナリオで配布するログチケットは以下のとおり。
上記にくわえて、セッションに最後まで参加したプレイヤーとGMには「因果力ゲット」が1枚ずつ配布される。さらに、活躍したPCのプレイヤーには「因果力ゲット」を追加で1枚配布しよう。
この「因果力ゲット」配布は優れたプレイヤーを見つけ出すための措置ではない。その日のプレイを振り返って互いの健闘をたたえるためのものである。ぜひ全員の好プレイを思い出して、チケットを配布しよう。
セッションの終了
すべての処理が終わればセッションは終了となる。これにて今回の冒険は幕を閉じた。次なる冒険のためにいまは一時の休息としよう。お疲れ様でした!
データセクション
エネミーデータ
シナリオに登場するオリジナルのエネミーデータを記載する。ディベロッパーはこのエネミーデータを他のシナリオに使用してもよい。
プロップデータ
シナリオに登場するオリジナルのプロップデータを記載する。ディベロッパーはこのデータを他のシナリオに使用してもよい。
シーンエフェクト
シナリオに登場するオリジナルのシーンエフェクトデータを記載する。ディベロッパーはこのデータを他のシナリオに使用してもよい。