ミストラルの旅路:後編
これはCR7の〈冒険者〉を対象とした『LHZ』のシナリオである。あなたがGMならば、このシナリオを使うことですぐに『LHZ』を遊ぶことができる。あなたがプレイヤーとしてこのシナリオを遊ぶつもりならば、これを読むのはセッションが終わるまで待ってほしい。このシナリオのガイダンスは以下の通りである。
【今回予告】
ミストラル号を降りて、ナゴヤの街へとたどり着いたPC達。
しかし、そこは<第一の森羅変転>とその後の混乱によって荒廃した地だった。
あなた達は<刀匠の里セキ>にて装備を整えつつ、アキバへ戻る事を決意する。
一方で神聖皇国ウェストランデ側は指揮系統は安定しており、
明日の昼頃には迎えが来るのだという。
一同はセキの里の中学校跡と思われる体育館廃墟にて休息を取ることにした。
大勢であるため、一般の宿屋では収まりきらず
狭いながらも一夜を明かすことに決めたのである。
次の日よりアキバ、ミナミの両方面へと帰還する算段となるが
アキバへの帰還手段である<蒸気機関船オキュペテー>が
大型レイドによる長期遠征で使用中のため出せないという。
そのため、代替となる2号船が来るのを待たなければならない。
連絡によるとそれが来るのは3日後のようだ。
果たして無事にアキバの街に戻ることができるのだろうか?
ログ・ホライズンTRPG
『ミストラルの旅路:後編』
魂の翼持つ〈冒険者〉たちよ、地平線の彼方にあらたな記録を刻め!
おすすめサブ職業
このシナリオにはミッションが存在する。
このミッションにおいてボーナスを得られるサブ職業は以下の通りだ。
※特になし
【戦闘、ミッションの数】
ミドル・クライマックス戦闘 計2回
メインミッション 計1回
オンラインでのセッションの場合は、通して遊ぶと時間がかかる場合もあるため、イベントごとにひと区切りし、2から3回に分割して遊ぶ事を検討しよう。
GM向け情報
シナリオ背景
キヨスの街に漂着したPCたちは、
<刀匠の里セキ>へと足を踏み入れ
アキバに帰るために応援となる連絡船を待つ。
しかし、その到着は3日後だという。
そんな最中、一人の少女と貴族の男性と知り合った。
彼らは伊豆の辺境伯であるガルシア=アルツベインと
その孫娘とされるアルミラだという。
アルミラの屈託のない笑顔に一同は癒されながらも
応援が来るまでの一時的避難を乗り越えようとしていた。
だが、その夜。
アルミラは何者かに攫われてしまい、
彼女を救い出すべくガルシア辺境伯から直接依頼を受ける。
アジトを突き止め、無事彼女を確保したその矢先。
ガルシアが取り逃したPlant hwyaden冒険者の手によって致命傷を受ける。
ガルシアは駆けつけた見張りの冒険者の治療は叶わず、
あなた方にアルミラを託して死亡する。
翌朝、何も知らないアルミラと共にアキバの街へ発つこととなる。
その際にガルシアに仕えていたメイドから真実を聞かされることとなる。
実は彼女は神聖皇国ウェストランデの現当主である
斎宮トウリの従妹、斎宮ユウリであるということ、
ガルシアは旧友の頼みを受けて彼女を預かっていたということ。
そして今なお彼女を略取するべく事件が発展しているということ。
メイドはPC達にアルミラ(ユウリ)を逃がすよう依頼する。
一方で、その事態を陰ながら後押しする者が居た。
その存在は<記録の地平線>のニャン太班長であり、
PC達へアキバの街へと向かう安全なルートを伝え、
さらにシロエへのコンタクトをオススメする。
こうしてPC達はアキバの街を目指すこととなる。
長い旅路を経て、アキバの街に到着したPC達一行。
<記録の地平線>のギルドホールへと向かうと、
そこには直継とアカツキが待ち受けている。
暫くするとシロエもギルド会館から戻ってくるだろう。
彼は今回の一件について精通しているようで、
アルミラが斎宮ユウリであること、
そして今彼女がウェストランデの貴族達に狙われていることを再確認する。
同時に、アルミラが"アルミラ=アルツベイン"として生きる道を提示し、
彼女本人の意志の元、口伝<契約術式>を執り行う。
これにより彼女は"アルミラ=アルツベイン"であること。
そして彼女が庇護下にある以上、害意ある他者からの侵害が行われないこと。
これらを契約によって成立させる。
こうしてミストラル号を巡る事件の真相が
人知れず解決するのであった。
PC番号およびシーンプレイヤーの扱い
このシナリオでは、PC番号を使用せず、またシーンプレイヤーも指定しない。GMは必要であれば任意にシーンプレイヤーを指定してもよい。
プリプレイ
レギュレーション
このシナリオは以下の環境で遊ぶことを想定して作成されている。GMの決定した難易度によって【因果力】が増減するため忘れず反映すること。
使用ルール
-
『ログ・ホライズンTRPGルールブック』
-
『ログ・ホライズンTRPG拡張ルールブック』
GMが許可するのであれば「ログホラ・ウェンズデイ」や「セルデシア・ガゼット」の追加データを使用してもよい。
推奨キャラクター
このシナリオはCR7のキャラクター3人から5人を対象に遊ぶことを想定している。すでにいくつかの冒険を経験したプレイヤーがCRを上昇させた環境を念頭に置いているが、新たに「ハイコンストラクション」でキャラクターを作成してもよいだろう。4種類の「アーキ職業」のキャラクターが全て揃うようにすることを強く推奨する。プレイヤーの人数が少ないときは、「戦士職」と「回復職」のキャラクターを優先すること。
おすすめサブ職業
【シナリオにミッションがある場合などには以下を編集して使用する】
このシナリオにはミッションが存在する。このミッションにおいてボーナスを得られるサブ職業は以下の通りだ。
状況の解説
PCの立場
【同じギルドに所属している、ギルドホールの冒険斡旋所に偶然居合わせた等、シナリオ開始時のPCの立場を記述する】
ユニオンの結成
【同ギルド所属などの開始状況があれば、以下を編集して使用する】
このシナリオではPCたちは同じギルドに所属し、パーティーを組んで冒険している。話し合って、ギルドの名前やギルドマスターを決めること。決まったら、キャラクターシートのユニオンの欄に「ギルド名」を記入しよう。
PCが希望するならば、コネクション、ユニオンを取得してもよい。
セッション難易度
以下の難易度から1つ選択する。そのとき『ログ・ホライズンTRPG』未経験者がプレイヤーに含まれているのであれば「難易度:イージー」を選ぶこと。
オープニングフェイズ
GMはメインプレイとオープニングフェイズの開始を宣言し、次のシーンのシーン予告をすること。
インタールード
シーン予告の内容は、次のシーンのシーン定義を目的から順番に読み上げるとよい。プレイヤーからのシーン要望が無ければ、そのまま次のシーンを開始する。
シーン予告とシーン要望の確認は以降のインタールードでも毎回行なうこと。また、このシナリオでは、基本的にすべてのシーンにPC全員が登場する。GMはこれもプレイヤーに伝えよう。
OP1:刀匠の里セキにて
シーンが始まったら「オーバーチュア」を読み上げ、シーン開始時の様子を描写しよう。以降のシーンも、開始したらまず「オーバーチュア」を読み上げること。
「モンタージュ」には、シーンが変化した描写とそれを読み上げるべきタイミングが記載されている。これは厳密なものではないので、GMはPCたちの反応を見つつ、ロールプレイが一段落したなどの区切りの良い場面で「モンタージュ」による変化の描写を行うとよい。
ミストラル号を降りて、ナゴヤの街へとたどり着いたPC達。
しかし、そこは<第一の森羅変転>とその後の混乱によって荒廃した地だった。
あなた達は<刀匠の里セキ>にて装備を整えつつ、アキバへ戻る事を決意する。
一方で神聖皇国ウェストランデ側は指揮系統は安定しており、
明日の昼頃には迎えが来るのだという。
(魔導列車によるものだが、その事実は明かさない)
一同はセキの里の中学校跡と思われる体育館廃墟にて休息を取ることにした。
大勢であるため、一般の宿屋では収まりきらず
狭いながらも一夜を明かすことに決めたのである。
次の日よりアキバ、ミナミの両方面へと帰還する算段となるが
アキバへの帰還手段である<蒸気機関船オキュペテー>が
大型レイドによる長期遠征で使用中のため出せないという。
そのため、代替となる2号船が来るのを待たなければならない。
連絡によるとそれが来るのは3日後のようだ。
「さあ、みなさん。
たんと食べてくださいなのニャ」
ニャン太班長は特製の料理を冒険者、貴族問わずに振る舞っている。
緊急事態とはいえ、ミストラル号の一件を乗り越えたためか
大地人と冒険者の間でどこか信頼関係も生まれているのだろうか。
「おお、これはおいしい!」
「一体なんという料理ですかな?」
「肉じゃがという料理ですニャ」
男爵イモに人参、ワイルドボアの肉で作ったそれは
彼らの舌をうならせるだけのものだったのだろう。
どこか穏やかな空気が流れているようだった。
向こうの方から小さな少女が盆を持って歩いてくる。
「お兄さん、お姉さん。どうぞ!」
身なりの整った少女は肉じゃがの入ったカップをあなた方の前に差し出す。
あなた方がそれを受け取ると彼女は飛び切りの笑顔を向けてくることだろう。
「助けてくれてありがとうございます!」
空になったお盆を片手に、もう片方の手でドレスの裾を掴み挨拶をする。
幼いとはいえ貴族なりの挨拶のつもりなのだろう。
そんな少女の後ろに一人の老紳士が近づいてくる。
「おや、アルミラ。こんなところにいたのかね」
メガネの奥にはどこか優しい瞳が映りこんでいる。
「あ!おじいさま!」
少女は嬉しそうに紳士へと寄っていく。
「これはどうも、冒険者の皆さん。
あなた方のおかげで助かりました。
私はガルシア=アルツベインと申します」
彼はあなた方にお辞儀をする。
彼の傍にあるアイコンには<イズ領辺境伯>と表示されている。
「どうやら孫娘までお世話になったようで」
彼はアルミラと呼ばれた少女の頭を撫でながらも、
あなた方へと語りかける。
「まさか、こんなことになってしまうとは
思いもよりませんでしたが。
ここでお会いできたのも何かの縁でしょう。
今後ともよろしくお願いしますね」
彼はアルミラの手を取り、体育館の奥へと向かう。
「お兄さん、お姉さん。またね!」
アルミラはあなた方に手を振りながら彼に引かれていく。
インタールード
※パーティの中で一人選ぶ(感知能力の高いキャラ)
夜、寝静まった頃合い。
あなたは誰かがこの体育館を出ていく扉の音を聞き、目が覚める。
どうやら見張りの立つ表口からではなく、非常扉のある裏口からのようだ。
(以降は追跡すると)
どうやら出ていったのは大地人の貴族のようだ。
彼は非常に焦った様子で辺りをキョロキョロとしている。
「アルミラっ……どこにいるんだ…アルミラっ!」
青ざめた表情で頭を抱えこむ貴族の老紳士。
先ほど会話をしたガルシア=アルツベイン辺境伯のようだ。
こちらの動揺にどうやら相手も気づいたのだろうか。
警戒するように振り返り、あなたを見て浅く息を吐く。
「あ、あなたは…冒険者の……」
困った様子でこちらを窺うガルシア。
様子を見るに尋常ではなさそうだ。
話を聞くにも一旦ギルドのメンバーを集めた方が良さそうだ。
あなたは寝ている彼らを起こし、ガルシアの元へと急がせる。
少し戸惑いつつも、彼は事情を打ち明けることだろう。
「実は……アルミラの姿が…見当たらないのです…」
彼は苦しそうに言葉を紡ぐ。
「つい先刻…アルミラと一緒に寝ていたはずでした…。
あの子が眠りにつくまで昔話を聞かせて、
そのまま私も眠りについて…。
ふと、物音がしたような気がしたのですが……
目を覚ました時には…アルミラの姿がなく……」
言葉が喉につかえるようにポツリポツリと出る。
「アルミラは…少し目を離すとどこかへ行ってしまう…
お転婆な子であることは、わかっています……
それでも…こんなことになるなんて……」
後悔と罪悪感が彼の胸中に渦巻いているのだろう。
苦しそうに俯くガルシア。
アルミラの捜索は女中、執事にも行わせているようだ。
しかし、事が周りに知れれば問題にも成りかねない。
何よりアルミラの身に危険が及びかねない。
ふと、ガルシアの視線が地面へと向かう。
暗闇の中に何かを見つけたのだろうか。
慌てて駆け寄り、それを拾い上げると
彼の顔はより一層青ざめることだろう。
「こ、これは……アルミラのっ!」
彼の持ちあげたそれは、彼女がつけていた髪飾りだった。
あなた方は薄々感じていたことだろう。
彼女が誘拐されたという可能性を。
そして、ガルシアはこう告げる。
「冒険者様!どうか、アルミラを…助けてくださいませんか…?!」
たとえ権力はあれど戦闘スキルの無い彼にとって
誘拐した相手と対峙することは至極困難なことだ。
彼は迷いもなくあなた方に頭を下げて願うことだろう。
「不躾であることは承知です。
しかし、どうか…お願いします…」
(以降は引き受けた後)
あなた方がそれを受け入れると、彼は言う。
「ありがとうございます!!
本当に、このご恩は何としてでも…!」
その姿は孫娘を心配する老紳士であり
彼の人柄を表していた。
髪飾りが落ちていた場所は森へと入る道の手前だ。
恐らくこの先に誘拐犯が逃げて行ったのだろう。
あなた方は夜の道を進んでいく。
シーン終了
この後ミドルフェイズ戦闘に伴うブリーフィングシーンへと移行する。
この時点でPCは因果力を1点獲得すること。
ミドルフェイズ
インタールード
ここからはミドルフェイズとなる。GMはミドルフェイズの開始をプレイヤーに宣言しよう。
MD1:アルミラを救出せよ!
誘拐犯の跡を追うあなた方。
行きついた先は廃墟ビル群のある場所だった。
静まり返ったそのビルの一角に僅かな光が灯る。
どうやら犯人グループはあそこにいるようだ。
そんな最中にヒュン、という音が近くで鳴る。
地面には一本の矢が刺さっている。
どうやら見張りがこちらの様子にも勘付いているようだ。
まずはそれらをどうにかしなければならないだろう。
シーン終了
MD2:状況の把握
戦闘準備
[偵察]タグを持つ行動に成功したPCがいたなら、以下のカットインを読み上げること。
シーン終了
戦闘の準備が整ったら、シーン終了となる。ブリーフィングシーンもシーンの一種なので、【ヘイト】はリセットされることに注意しよう。
インタールード
次はいよいよ戦闘シーンとなる。使用するエンカウントシートやマーカーなどを用意しよう。プレイ時間に不安があるなら「消耗表」による処理も可能である。
MD3:見張りを倒せ!
戦闘データ各種
<漆黒の狙撃手>ブラック・スナイパー[人間][冒険者][UnderGround]4体
<古代砲>エンシェント・キャノン[ギミック][物品]3体
PC配置 D7~8、E7~8
<漆黒の狙撃手>ブラック・スナイパー B2、B5、G2、G5
<古代砲>エンシェント・キャノン D2、E3、F7
◆特殊ルール
シーン効果:落下ダメージ
高低差が2Sq以上ある地点から
[通常移動][即時移動]で降りた場合、
高低差×7点分の直接ダメージを受ける。
ただし、[飛行]状態の場合はこの限りではない。
闇夜の漆黒
プロップ ランク:7 シーンエフェクト
探知難易度 自動
解析難易度 自動
解除難易度 不可
▼効果・解説
このシーンは薄暗がりとして扱う。
マップデータ
この戦闘では縦横のSqの他に高さのSqも活用している。
もし用意ができない場合には◆特殊ルールは適用しなくても良い。
◎高さSq
0Sq:A7~8・B7~8・C6~8・D4~8・E4~8・F8・G8・H8
1Sq:A6・B6
2Sq:A4~5・B4~5・D3・E3・F6~7・G6~7・H6~7
3Sq:C4~5・D2・D4橋・E2・E4橋・F4~5・G4~5・H4~5
4Sq:G3・H3
5Sq:A1~3・B1~3・C1~3・D3橋・E3橋・F2~3
6Sq:D1・E1
7Sq:F1・G1~2・H1~2
MD4:真実
あなた方は戦闘に勝利し、誘拐犯の潜伏するビルの一角へと足を運ぶ。
そこには手足を縛られた状態で眠っているアルミラと数名の冒険者の姿があった。
「ちっ…ここまできやがったか…!」
ギルド名[UnderGround]のリーダーと思われる男が舌打ちをする。
他のメンバーも一様にあなた方を睨み付ける一方で、
一人の冒険者が後ろの窓から飛び降りる。
その冒険者の所属するギルドは一瞬だが見えることだろう。
[Plant hwyaden]だ。
「くそっ…このままじゃ…」
「頭、どうしやすか?!」
「うるせぇぞ、おめぇら!!」
統率があまり取れていないようだ。
彼らは混乱状態に陥っており、
今のあなた方であれば余裕で取り押さえることができるだろう。
そしてアルミラを無事に救い出すことに成功し……
「うっ…ぐあぁっ…!」
外で悲痛な叫びが聞こえてくる。
その声の主はガルシアのものだ。
「ふっ…どうやら作戦は成功したみたいだな」
「ギャハハ!ざまぁみやがれ!!」
取り押さえた連中が顔を歪ませ声を上げて笑う。
(その後、声の方へ向かうのであれば)
体育館近く森の中。
そこには、ガルシアが倒れていた。
彼は胸のあたりに刺突された傷がある。
ダガーでやられたのだろう。
犯人の姿はもうない。
大方、帰還呪文で逃げ出したのだろう。
彼の周りには見張りの冒険者と応援の者が駆けつけ、
止血のために傷跡を抑えている。
「冒険者…様……申し訳……ありま、せん」
彼は今にも消え入りそうな声で告げる。
口元は震え、しかし何かを伝えんとばかりにしている。
「どう…か…アルミラ…を……。
本当は……私の…孫では……。
あの子は……斎宮家の……。
皇国に……狙われて……」
断片的に言葉を紡いでいく。
最期に手を握り。
「あの子を…ユウリを…救って…くだ……さ……」
そうして。
彼は力なくその手は崩れ落ちた。
その身体は次第に落魄を始め、
そして後には何も残らなくなる。
大地人としての死の定めなのだろう。
あなた方の近くには寝息を立てるアルミラがいる。
彼女はまだ知る由もない。
祖父と慕うガルシアがいなくなってしまったことを。
そして、自身に隠された真実を……。
インタールード
ガルシアの死を経て、朝が来る。
彼女はいつもの朝が来ると信じて起き上がり、
そしてガルシアがいないことに疑問を抱くだろう。
「お兄さん、お姉さん。おじいさまを知りませんか?」
どこか不安げにあなた方へと問いかけるアルミラ。
その問いに、どう答えるのだろうか。
(以降はRP次第)
※急いで帰ったというのであれば一旦は信じる。
真実を明かすのであれば泣き始める。
その一方であなた方に近づく者が一人。
それはアルツベイン家に仕えているメイドである。
「冒険者様、差支えなければお話を聞いていただけますか?」
彼女はアルミラに聞き及ばないようにあなた方を呼び出すだろう。
そして、隠された真実について語り始める。
「主亡き今、あなた方がアルミラ様をお守りできる唯一の味方と判断し
お伝え申し上げたいと思います。
アルミラ様…いえ、ユウリ様はガルシア様の本当の孫娘ではありません。
旦那様はとある旧友からユウリ様を託され、赤子の頃より見守っておりました」
彼女は一呼吸置き、そして言葉に発する。
「ユウリ様は神聖皇国ウェストランデの統治者である
<斎宮家(さいのみやけ)>のご息女であられます。
現在の当主である斎宮トウリ様の従妹にあたり、
本来であればキョウの内裏にいらっしゃるお方です。
しかし、女性でありトウリ様とあまりに歳が離れているため
継承権が与えられることはなく、
むしろ政治の道具として扱われかねないと
ウェストランデから東国の旦那様の元へ預けられました」
彼女は聞き届けたことを次々に明かしていく。
「ユウリ様には両親は生まれた時に亡くなったと説明され、
ガルシア様が祖父として保護したように伝えられていました。
そして、彼女が成人した折に本当のことを伝えるおつもりでした」
メイドの顔は曇りを見せる。
「しかし、今回の出来事でこの秘密を知る西方の貴族の一人が裏切り
ミストラル号の船内にて協力者であった方が暗殺されました。
おそらく、皇国のイースタルへの和平交渉は
この一件のためのカモフラージュだったのでしょう。
同時にユウリ様を誘拐するべく冒険者を雇い事に至った…。
これが、この事件の真実と言えるでしょう」
彼女はゆっくりと息を吐き、そして告げる。
「我が主に代わりお願いがございます。
どうか、ユウリ様と共に安全な場所へとお逃げくださいませ」
深々と頭を下げて彼女はあなた方に頼み込む。
すでに彼女の手には負えない状況なのだろう。
成り行きとはいえ、主人が信じたあなた方へと
無礼を承知で託すつもりのようだ。
「神聖皇国ウェストランデの斎宮擁立派はなんとしてでも
ユウリ様を略取し、王権復活の道具に使う算段です。
そんな者たちにユウリ様を絶対に渡してはなりません。
どうか…どうか…お願いいたします」
感極まったためか、彼女の目頭には涙が溜まり
それが地面へと滴り落ちる。
彼女にとっては大事な主の一人であり、
もしかすると妹のように可愛がっていたのかもしれない。
(受け入れるのであれば)
「…ありがとうございます…っ!
事態は急を要します、2日後の連絡船を待てば
皇国の者や間者に狙われかねません。
ここは相手に気づかれる前にこの場からお逃げくださいませ…!」
そう言いながらも、彼女はユウリ(アルミラ)の旅支度を纏めた
風呂敷包みをあなた方へと託すことだろう。
「それと、これをユウリ様に被っていただくようお願いいたします」
渡されるのは<ワーディングクローク>と呼ばれる
重要人物を呪詛や毒、悪意から守る高位マジックアイテムの外套を手渡す。
(システム的処理のため、PCは獲得することはできない)
「どうか、ご無事をお祈りしております……」
彼女はそう言い、ユウリの元へと向かう。
ユウリ(アルミラ)は彼女に抱きしめられ、
訳も分からぬまま涙を流している。
ただ、これがメイドとの別れであることだけは
ちゃんと理解しているのだろう。
これから大移動が始まることになる。
アキバの街へ向かう途中でいくつか山を越えなければならない。
逆にそこさえ越えてしまえば後はスルガミ街道を行くだけでアキバに戻ることはできる。
この先には強力な飛竜モンスターが出現するらしい。
今の内にしっかり休んでおこう。
エンカウントシート(ミッションフェイズ1)
A | B | C | D | E | F | G | H | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ||||||||
2 | ||||||||
3 | ||||||||
4 | ||||||||
5 | ||||||||
6 | ||||||||
7 | ||||||||
8 |
MD5:アキバへの旅
旅支度を整えて、他の人に気付かれないように動き出す。
冒険者たちは警戒や食料・燃料探しに集中しているようだ。
貴族や大地人は基本的に屋外にはあまり出ていない。
これならばうまく抜け出せそうだ。
そう思った矢先に、
「この先はなるべく南側から侵入するといいニャ」
それはニャン太班長の声だった。
彼はいつもの余裕ある表情でニッコリと笑う。
「こっちの護衛は吾輩たちに任せてほしいのニャ。
アキバについたら<記録の地平線(ログ・ホライズン)>を訪ねるといいニャ。
きっとシロエっちならすぐにいい案を思いついてくれるはずニャ」
そう呟いて、彼はあなた方に背を向けて体育館へと向かうだろう。
まるですべてを悟ったかのように。
こうして運命の歯車は回り始めるのだった。
ミッション説明
◎ここからは竜の聖域を越えてアキバへと向かうミッションとなる。
このミッションでは計8回の探索表を振る。
2回の探索表(CR+1)のあと、クライマックス戦闘を行い、
再びミッションへと戻る。
3回の探索表(CR)のあと、レストタイムへ。
そのあとまた3回探索表(CR-1)を振り、アキバの街へ到着する。
シーン終了
◆探索表を2回振った後
ミドルフェイズの終了にともない、PC全員に【因果力】を1点ずつ配布すること。
次はいよいよクライマックスフェイズである。ここでプレイに休憩を挟むと良いだろう。
クライマックスフェイズ終了後は
再びこのミッションフェイズへと戻る。
ハプニングシーン
※4回目の探索表の後のハプニングイベント
ユウリ(アルミラ)が立ち止まる。
「もう、歩けないです……」
今までこんな距離を歩いたこともないのだろう。
彼女の顔には疲れが見える。
結構距離も歩いたことだ、このあたりで休憩しようか。
(以降はRP次第、レストタイムへ)
クライマックスフェイズ
インタールード
ここからクライマックスフェイズとなる。GMは、クライマックスフェイズの開始をプレイヤーに宣言しよう。
CL1:竜の咆哮
あなた方は山脈を抜けるべくトンネルを進んでいる。
そこは大きく切り開かれており、
不意打ちやバックアタックはないものの
大型の竜モンスターも多く生息しているようだ。
ふと、奥の方から竜の咆哮が聞こえてくる。
どうやら、この先戦闘が予想されそうだ。
声を聴いたユウリ(アルミラ)はどこか怯えた様子で
あなた方の後ろに隠れるだろう。
彼女はセーフゾーンで待機してもらうほかあるまい。
まずは安全な場所で準備しつつ臨戦態勢に入ろう。
戦闘準備
【戦闘前の注意点等があればここに記述する】
次の戦闘シーンは、ミドルフェイズでの戦闘に比べて手ごたえのあるものになる。[準備]タグの特技やアイテムの使用をうながし、万全の状態で戦闘に挑めるようにしよう。
[偵察]タグを持つ行動に成功したPCがいたなら、以下のカットインを読み上げること。
シーン終了
戦闘の準備が整ったら、シーン終了となる。
インタールード
次はいよいよ戦闘シーンとなる。使用するエンカウントシートやマーカーなどを用意しよう。
CL2:月光の閃飛竜を倒せ!
【戦闘データ各種】
月光の閃飛竜 《ムーンライト・リントヴルム》
[ボス][幻獣][竜] [暗視] [光輝] 1体
PC配置 D7~8、E7~8
月光の閃飛竜 《ムーンライト・リントヴルム》 D1
柱 B2・B5・B8・G2・G5・G8
インタールード
あなた方は戦闘に勝利し、アルミラ(ユウリ)の元へと向かう。
「お兄さん、お姉さんすごいですっ!!」
アルミラ(ユウリ)は遠くから見ていたのだろうか。
どこか興奮した様子で目を輝かせている。
「私も、いつかこんな風に冒険してみたいです!」
どうやら彼女のお気に召したのだろう。
元気いっぱいに前へと進み始めるのだった。
エンディングフェイズ
インタールード
ここからはエンディングフェイズとなる。GMは、エンディングフェイズの開始をプレイヤーに宣言しよう。
エンディングは、すべてのフェイズの中でも比較的変更が容易な部分である。エンディングの目的は物語を終わらせ、プレイヤーに満足をしてもらうことだからだ。
E1:契約術式
長い旅路を経て。
ついにアキバの街に辿り着くのだった。
どうやらナゴヤに居る彼らより先に着いたようだ。
アルミラ(ユウリ)はアキバに来たのが初めてであり、
見る景色全てが新鮮に感じ取れるのだろう。
「うわぁ…すごい……っ!」
興味深々で右や左にうろついている。
道理でガルシアが彼女を見失う訳だ。
(以降、シロエの元へと向かうことになる)
アキバの街の外れにある大きな木のギルドホール。
そこが彼ら<記録の地平線>の拠点だ。
あなた方がそこの扉にノックをすると
一人の鎧を着た重戦士が出迎えてくれるだろう。
「おう、シロと班長から聞いてるぜ!
これで安心祭りだぜ!!」
グッジョブポージングをして屈託のない笑みを浮かべる直継。
ちなみに後ろに黒髪の暗殺者の少女が見張っている。
「ん?ああ、シロならギルド会館の方にいるぜ。
俺はこれからおぱっ…?!」
ゲシッともの凄い音を立てて飛び蹴りが彼の頬へと直撃。
ガシャンという音と共に受け身を取る直継。
「すまん、蹴りを入れてもいいか?」
「おぉい!?蹴ってから言うなよ!」
彼らのコントのようなやり取りを見て、
アルミラ(ユウリ)は楽しそうに笑う。
「おお!超絶美少女祭りだぜ!!」
「………(ジト目)」
「わ、わかった。
とりあえずシロがもう少ししたら来ると思うから
まあ中でゆっくりしていってくれよな!」
そう言って彼は案内してくれるだろう。
暫くするとシロエがギルドホールへ入ってくる。
「まずはみんな、お疲れ様。
色々あって疲れたと思うから
これが終わったらゆっくりと休んでください」
彼は労いの言葉を掛けながら目の前の席へと座る。
「それで、まずは彼女についてだけど…」
シロエがアルミラの方をちらっと見ると
彼女は緊張したようにあなた方の服の裾を掴む。
その様子を見て苦笑しながらシロエは言う。
「彼女が<斎宮家>の直系である以上、
これからも狙われる可能性はゼロではありません。
このアキバの街は他に比べれば安全ですが、
いつどこにスパイが潜り込むかもわからない。
現状は盤石とは言い難いです」
彼は状況の説明を行う。
「彼女の身の安全を保障するためには、
ユウリさんが"ユウリさんではなくアルミラさん"
である必要が出てくるわけです。
ただの"アルミラさん"であれば
相手の貴族たちにとって価値はありませんから」
こう言ってから、シロエはメガネをクイッと持ち上げる。
所謂"腹黒メガネ"と呼ばれる所以である。
「ならば、"ユウリさん"を"アルミラさん"にしてしまいましょう。
さて、これから行うことは他言無用でお願いします。
もし約束できない場合はこのギルドホールから退出してください。
お願いできますか?」
(以降は肯定)
あなた方が同意すると、
「わかりました。
その上で、アルミラさん。
あなたにいくつか質問をします」
おおよそ会話についていけてない少女に対して、
シロエは視線を向けて話しかける。
アルミラは戸惑いつつもコクンと頷く。
「まず、1つ。
あなたは平穏な生活……
あー、楽しく毎日が過ごしたいですか?」
言葉を選び直しながらもアルミラに伝わるように訪ねる。
一方のアルミラも理解したのか頷いた。
「では、2つ目。
これから誰と一緒に暮らしたいですか?」
彼女の中で戸惑いが生まれていたのだろう。
きっとガルシアを思い出したのだろうか、
しかし彼女の視線は次第にあなた方へと向かう。
アルミラなりに現状は理解しているのだろう。
それで、彼女にとっての選択肢の一つがあなた方であり
もしくはあのメイドだったのかもしれない。
(ここはPCたちの選択)
「それでは最後に。
これからアルミラさんの運命は大きく変わります。
今この時のこの答えを、ちゃんと受け止められますか?」
その言葉に対して。
彼女は、彼女なりに考えていた。
もう迷いなどなく、まっすぐにシロエの方を見て。
そして頷いた。
「私は大丈夫です!」
少女の意志は固い。
生まれてきた血に呪われ、弄ばれながらも
彼女は短くもこの歳まで生きてきた。
血に選ばれ、他の貴族に狙われて。
今まで自分で決めた事などなかったのだろう。
けれども、今日この日この時を以て。
アルミラという少女は自分の運命を掴もうとしている。
そして、目の前にはこの世界の法則さえも
捻じ曲げてしまうほどの大魔導師が手を差し伸べている。
まさに奇跡的瞬間なのかもしれない。
「わかりました」
彼は一言だけそう言って、
魔法の鞄から羊皮紙と羽根ペン、インクを取り出す。
そこに流れるように筆写を進めていった。
「それでは、アルミラさん。
ここにあなたの名前を書いてください」
羊皮紙には以下の通り書かれていた。
『1、この時を以て斎宮ユウリはアルミラ=アルツベインとする。
2、アルミラは以下の者の庇護下となり、害意ある他者により侵害されない
3、契約中、互いが得たものは、契約がたとえ失効したとしても保持される。
<記録の地平線>シロエの名において以上を契約とする』
その文字の下の空欄にアルミラは羽根ペンを走らせる。
貴重なマジックアイテムを使用したインクは光を放ち、
羊皮紙は踊るように文字を浮かび上がらせる。
彼女が"アルミラ"という名前を書き終えた時。
契約書と彼女を中心に光輝き始めることだろう。
そして、契約は為された。
「以上で、終了となります。
アルミラさん、みなさんお疲れ様でした」
シロエは淡々と告げる。
今、この場で行われた大事など
まるで日常の一コマと言わんばかりに。
当の本人であるアルミラも
どこか混乱した様子だが、どうやら本当に無事終わったようだ。
「また何かあった時に念話かチャットを下さい。
いつでも対応できるように心掛けますので。それでは」
彼はそう言うとどこか忙しそうに
ギルドホールを出て行ってしまうのだった。
シーン終了
PCたちのロールプレイが一段落したら、このシナリオは終了となる。
エンディングフェイズが終わったら、メインプレイを終了し、アフタープレイに移ること。
報酬:
CRチケット1枚
アザーゲット2枚
財宝表(自由)2回
因果ゲット1枚
一人400G(アルツベイン家より報酬)
一人150G(円卓会議より報酬)
アフタープレイ
「アフタープレイ」にしたがってアフタープレイを行なう。
このシナリオで配布するログチケットは以下のとおり。
上記にくわえて、セッションに最後まで参加したプレイヤーとGMには「因果力ゲット」が1枚ずつ配布される。さらに、活躍したPCのプレイヤーには「因果力ゲット」を追加で1枚配布しよう。
この「因果力ゲット」配布は優れたプレイヤーを見つけ出すための措置ではない。その日のプレイを振り返って互いの健闘をたたえるためのものである。ぜひ全員の好プレイを思い出して、チケットを配布しよう。
セッションの終了
すべての処理が終わればセッションは終了となる。これにて今回の冒険は幕を閉じた。次なる冒険のためにいまは一時の休息としよう。お疲れ様でした!
データセクション
エネミーデータ
シナリオに登場するオリジナルのエネミーデータを記載する。ディベロッパーはこのエネミーデータを他のシナリオに使用してもよい。
プロップデータ
シナリオに登場するオリジナルのプロップデータを記載する。ディベロッパーはこのデータを他のシナリオに使用してもよい。