■ディレクター 橋本祐介氏
(文中は橋本)

――まず、10周年を迎えての感想をお聞かせください。
橋本 あまり実感はないんですけどね。僕は『ベヨネッタ』と『ベヨネッタ2』を作ったのですが、遊んでくださったユーザーの皆さんの声で『スマブラ』にベヨネッタが参戦することになりましたので、10年やってきた甲斐はあったかな、と思っています。
――ユーザー投票で、(参戦を交渉できる)キャラクターの中で、ベヨネッタが1位だったとのことですからね。
橋本 そうなんです。ものすごくありがたかったです。つぎに作ったのが『スターフォックス ゼロ』だったので、(作ったタイトルの)主人公どうしが『スマブラ』でバトルできるという。そんなことはめったにないだろうなと。自分が『スターフォックス』に関わるなんてことも想像していませんでしたしね。『ベヨネッタ2』の中に、任天堂さんに許可をいただいて、お遊びとして『スターフォックス』を楽しめる要素を入れたのですが、それを見ていただけて、「いっしょに(『スターフォックス』の)仕事をしませんか」と言っていただけたのは本当にありがたかったです。
――では、橋本さんの今後の抱負をお聞かせいただけますか?
橋本 ぱっと見はプラチナらしくないけれど、遊んでみたら「あ、プラチナのゲームなんやな」と思ってもらえるゲームを作ってみたいですね。
――橋本さんが考える“プラチナらしさ”とは?
橋本 触り心地ですね。気持ちいいアクションだったりとか。
――最後に、『スターフォックス ゼロ』についてひと言いただけますでしょうか。
橋本 10年ぶりの新作になるのですが、Wii Uの2画面を使って、主観視点と客観視点で遊べるやり応えのあるシューティングゲームというものは、いままでにはなかったものです。新感覚のシューティングゲームを触ってもらえたらうれしいです。
■プロデューサー 稲葉敦志氏
(文中は稲葉)

――10周年を迎えて、いかがですか? いまのお気持ちを教えてください。
稲葉 ぜんぜん実感がないんです。パーティーの最初で、タイトルラインアップが流れたじゃないですか。「あれ、意外と少ないな」と思って。メンバーがみんな、ズタボロになりながら作ってきたはずなのに、そうか、10年でこれだけしか作れていないのか……と思ったので、もっともっと作りたいですね。僕はプロデューサーをやっていて、プラチナの全ラインを見ていますけど、その僕が「まだ少ないな」と思うくらいですから。
――神谷さんも同じことをおっしゃっていました。
稲葉 神谷は、自業自得(笑)。自分で自分の前に茨を投げつけて、そこで転げ回るのが大好きだから、神谷は(笑)。プラチナは、まだまだ(作品を)作らないとダメだと思います。そうしないと、すぐに名前を忘れられてしまいますから。焦りはずっとあります。いつ割れるかわからない氷の上を、強制的にスキップさせられているような気持ちなので。
――プラチナゲームズさんほどの知名度があっても、焦りの気持ちはあると。
稲葉 めっちゃ怖いですよ。本当に。つぎ一歩踏み出したら氷が割れて、水に落ちるんじゃないかとずっと思っている。
――だからこそ、ゲーム作りに妥協せずに続けていけるのですね。
稲葉 そうですね。「つぎ、何が出てくるのかな?」、「あいつら、つぎに何をやらかすんだろう?」と思っていただけるプラチナでありたいです。驚きがないと、僕も楽しくないですし。惰性で作るようになったら、すぐに水に落ちると思っているので、つねに緊張しています。
――では、緊張とともに11年目に突入して、今後はどのようなことに挑戦したいと考えていますか?
稲葉 僕自身の抱負は、“抜擢”ですかね。社内のスタッフの。橋本をディレクターやプロデューサーにしたり、『メタルギア ライジング リベンジェンス』で齋藤健治をディレクターにしたり。社内で「えっ、あいつにそういうことをやらせるの?」という驚きがあって初めて、外に驚きを作れると思うので。スタッフに、“一度ディレクターをやったら、つぎもディレクターだ”なんて安心もしてほしくないですし。スタッフの芽を伸ばして、自分が持っているものをどんどん渡していくことが、つぎの10年のために大事なことだと思っています。そうやって育てて育てて、「でも(自分には)追いつけないけどね」って言うくらい、先を進んでいたいです。
――20周年のパーティーのときに、冒頭で壇上に並んでいたメンバーの数が増えるくらい育てたいと。
稲葉 そうですね。きっとつぎの10年もあっという間だと思うので。まさか自分が、40代の中盤になる日がくるなんて思っていなかったですからね。クローバースタジオの社長になったのが32か33のときで、プラチナを立ち上げたのが35。それでいま45という。心と身体が分離している感じがします(笑)。あ、10年後、またインタビューしてくださいよ! 約束があると、お互いがんばれるじゃないですか。そういう約束を、たくさんの人としたいですね。