●ブキの流行り廃りは今後新たな流れに?

『スプラトゥーン』開発秘話。すべては長く楽しんでもらうために。多くの裏設定話も飛び出した、開発スタッフインタビュー【システム編】_07

――この取材時点(2015年6月)でのブキの使用比率などをおうかがいしたいのですが、どれがよく使われているのかといった傾向はありますか?
野上 シューターが多いですね。
佐藤 もともとシューター系は種類も多く作っていて人気が出るだろうなと思っていました。シューターはボタンを押せばインクが出るというわかりやすさもありますし、最初から持っていることもあって使っている方がすごく多いですね。あとは、ローラーも多いかな。
天野 使いかたは違いますが、ブラスター系もシューターのジャンルに入るので、ここで言うシューターにはブラスターも含んでいます。
佐藤 ブラスターはシューターの中の変わり種ですね。ちなみに、ひとつのブキを極める方もいると思うんですが、いろいろなブキをまんべんなく使っている方も多いと思います。僕らとしては、いろいろなブキを使ったほうが、相手にそのブキを使われたときに対策などを考えやすくなるので、さまざまなブキな試してもらうほうが楽しいんじゃないかと思いますね。
野上 ナワバリバトルは、塗りの強いものを使おうとする人が多いよね。
佐藤 そうですね。ゲームのルールが塗ったら勝てるというゲームなので、塗りやすいブキを持っていると戦況をコントロールしやすいんですよ。それもあって、ナワバリバトルでは人気になりやすいですね。
野上 ガチマッチのほうが、皆さんが使うブキのバリエーションは広いかもしれませんね。
佐藤 使い慣れているブキを持ってくる人もいれば、このマップはチャージャーで遠くから狙えるからと、チャージャーにする人もいますし。ナワバリバトルは塗れるブキを選ぶ方が多いと思いますが、うまくなってきた人は、相手に塗らせないためのブキ選びをしてみてもおもしろいかもしれません。

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▲週刊ファミ通2015年8月3日号『スプラトゥーン』特集より。“お気に入りのブキ”を聞いた当時のユーザーアンケート結果。

――いまだと、ナワバリバトルはプロモデラーが多い印象ですね。
天野 一応、お伝えしておくと、理論値としては、どのブキも時間あたりに塗れる量は、ほぼ同じになっています。
佐藤 時間あたりはどれもほぼ同じなんですが、連射が早くて自分の近くを隙間なく塗れるほうが塗りやすいと感じることが多いですね。チャージャーは一発に時間がかかりますが、遠くまで塗れるぶん、時間あたりの量としては同じくらいなんです。

――えっ、そうなんですか! 塗る量としては、プロモデラーなどが多いような気がしていました。
佐藤 そこの流行りも見ていると変わってきているんです。プロモデラーは接近戦では強いんですが、ちょっと距離があると弱いので、プロモデラーが流行っているからジェットスイーパーやデュアルスイーパーを使おうという人が出たりと、少しずつブキの変遷ができていくのがおもしろいですね。
野上 最初はエイム(ブキの照準を定めること)に慣れていない人が多くて、ローラーを使う人が多かったんですが、だんだんローラーでは勝てなくなってきたので、つぎのブキにシフトして、でも、ローラーの新たな使いかたが見つかって、またローラーが増えて……みたいな感じで、変わって来ていますね。
佐藤 開発中に、テスターの人たちにプレイしてもらったときにも、ブキの流行り廃りがあったんですが、それと同じような変遷をたどっているので、おもしろいなと思っています。だから、開発当時も最初は「ローラーが強すぎます」という意見をもらったんですが、変えずにいると、だんだん対策が生まれてくるんです。
野上 ローラー対策が生まれて、プロモデラーRGが出てきて、今度はプロモデラーRG対策が生まれて……とどんどん歴史をくり返していますね。人気のあるブキが出ると、それに対向するものが出てくるので、ぐるぐる変わっていきます。

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――ナワバリバトルでは「プロモデラーが強すぎる」といった意見がありますが、そういったものは想定済みだと。
野上 調整にはかなり時間をかけたので、いまはある程度予測できていますね。
佐藤 開発スタッフの知らない、新しいトレンドをぜひ生んでほしいです。
天野 僕は新しい流行りを作るために、なるべく流行っていないブキを使っています。それでも勝てたりしますし。
野上 僕もチャージャー使いだったりしますね。

――チャージャーはガチマッチのほうが増えますよね。
野上 地形によってはナワバリバトルでも使えますよ。直線の多いホッケふ頭とか。
佐藤 チャージャーを持つと、どうしても相手を1発で倒そうとする人が多いと思うんですが、当たらなくてもバンバン塗っているだけで相手の行動を邪魔できるので、サポートできるんです。
天野 チャージャーは慣れるまでたいへんですが、慣れると、倒すだけでなく、サポートの方法もつかめると思うので、どんどん使ってほしいですね。

ずっとおもしろく感じてもらうためのステージ設計

――ステージはコンスタントに追加されていますね。
野上 お客様がひとつの地形を覚えて、それぞれが戦略を生み出してからが本番になるので、しっかり地形を覚えたくらいでつぎのステージを出すというイメージで、配信しています。

――ステージが4時間で交換されるというシステムも、なかなか珍しいと思いますが、4時間という時間の意図は?
阪口 24時間を均等に割れる時間として、4時間に設定しました。
野上 開発当初は、4時間をぶっ続けで遊んでいただけるとはあまり思っていなくて、どちらかというと、ちょこちょこ遊んでいただくイメージだったんです。そういう風に遊んでいただくと、4時間ごとにステージを入れ換えることで、いま遊んでいる時間帯ではふたつの地形をくり返して遊んで、地形を覚えつつ、戦略を自分に染み込ませて、「さっきこの試合でこう立ち回ったけど、うまくいかなかったからつぎはこうしよう」とか、そういった遊びをしていただけると思って、ステージ固定をしていました。
天野 ステージを固定化したほうが、いろいろな戦略を早く試せるので、上達も早くなるんですよね。みんながだんだんうまくなっていって、味方も相手も一定以上のパフォーマンスを出して、ギリギリのせめぎ合いでバトルを遊ぶのがおもしろいと思っているので、そのためにも、ある一定時間のあいだで、同じステージを何度も遊ぶというものをやりたかったんです。

――ヒーローモードには、スポンジやレールなどのギミックがありますが、ああいったギミックを対戦のステージに入れなかった意図は?
天野 最初からあったステージは、ステージ構造自体でナワバリバトルのおもしろさや戦略性を知ってほしかったので、あえてそういうギミックは入れないベーシックなものにしました。アップデートで追加されたステージは、徐々に凝ったものになっていったと思いますが、それと同じように、今後のステージについては、現在研究中ですので、これから追加されるものについては、もうちょっと振り幅のあるステージになるかもしれません。

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――各ステージとも、必ず激戦区があって裏道があってと、バランスが絶妙だと感じるのですが、かなり調整をされているのでしょうか? 先日、E3で発表されたときの映像を見ましたが、デカライン高架下などの地形も変わっていましたね。
阪口 E3のときは、シューターしか実装していなかったのですが、そのあとにいろいろとブキが増えたので、チャージャーで戦えるようにしたり、特定のブキが有利だったり不利だったりとするのを調整したりと、いろいろ地形を修正して、現在の地形になっています。
天野 E3の後に新しくスタッフが入ってきたり、もともとステージを作っていた人がコツを覚えてステージ作りがうまくなったりと、だんだんスタッフのスキルが上昇してきて、開発の後半になるほど、「ステージはこうすべきだ」という意見が出るようになったんですね。ですので、その調整の成果は大きかったと思います。
阪口 天野が当初から言っているんですが、「ずっと“おもしろい”と思いながら遊び続けられることに、いちばん重点を置いて設計をしよう」という意志で、みんなで制作をしてきていますので、瞬間的なおもしろさだけでなく、継続することでおもしろさが見出だせることも重視しています。ですので、遊び続けていると、「ここから狙撃できるな」とか「ここから裏が狙えるな」といった発見があって、今度はそれに対する対策ができて……という流れがあると思いますが、そういった部分はスタッフのみんながかなり深く考えて作ってくれたおかげですね。
野上 僕は、以前バスケットボールをちょっとやっていたんですが、自分がすごく調子がいいとき、いいプレイができているときは、時間が本当に止まって見えたり、まわりがゆっくり流れているように見えたりする瞬間があるんですね。『スプラトゥーン』でも、最後の最後で一気に逆転ができた瞬間は、そういう感覚に陥ることがあるんです。
天野 ああ、そういう瞬間ありますよね。昨日、チャージャーでガチエリアをやっていたんですが、すごく調子が悪かったんですよ。同じチームの人の足を引っ張ってるなーと思って、「今日は、これで最後にしよう」と思って挑んだバトルで、めちゃくちゃすごいプレイができて、そのときに似たような感覚になりました。
野上 ガチエリアで、エリアの真ん中にひとりで取り残されて、3人から攻められたときに、全員倒した瞬間は「うぉー! きたー!」と興奮しましたね(笑)。

――最高に気持ちいい瞬間ですね(笑)。
阪口 皆さん、勝つためにプレイをしていると思うんですが、それと同時に、中には、周囲がスローモーションのように見える、あのゾーンを感じたくてプレイをしている人もいると思うんですよね。一度、あの瞬間を味わうと、もう一度感じたいと思ってしまうはずですから(笑)。