●ヒーローモードの話は、いつしか裏設定の話に……
――ヒーローモードのほうもおうかがいします。ヒーローモードは、ステージの入り口になる“やかん”を探すフィールドの部分もゲーム性がありますね。
阪口 インクを塗りながらいろいろ探索する遊びを入れたかったんですね。もともと、『スーパーマリオ64』も同じような作りで、わりとクラシックな構造ではあるのですが、本作のヒーローモードのステージは一本道ですので、ステージを見つける探索と、一本道のステージをクリアーしていくアクションの緩急をつけられる構造が、本作のひとり用に適しているのではないかと考えて、作りました。
野上 ヒーローモードに入るといきなりバトルが始まるのではなく、まだ操作に慣れていない人に、イカの操作に慣れてもらう役割も持たせたかったので、敵に追われることなく、じっくりタコツボバレーを上ったり探索したりできるようにしています。
阪口 初めてプレイした人は、助走をつけてジャンプするだけでも難しいと思うんです。でも、タコツボバレーなら時間制限もありませんし、何もペナルティーがないところで、ジャンプも壁を上るのもインクを撃つのも練習もできるので、練習用としての効果もあったかなと思います。
野上 ヒトとイカ、それぞれのジャンプの距離を覚えるのにもいいかもしれません。
――後半になると、アクロバティックな地形になりますからね。後半はやかんを見つけるのも難しいですよね。Wii U GamePadのマップを見て、「この辺が空いてる」と探したりしますし。
野上 マップの空いている部分を探すのは、皆さんやられるでしょうね(笑)。「ここなの!?」という場所に隠されていたりしますし。
――タコたちがいるあの地下世界は、どういった世界なんでしょうか?
阪口 毎回、こういう答えになってしまうんですが、僕らも研究中なんです(笑)。ヒーローモードを進めていくと、ミステリーファイルでちょっとずつ紐解かれていきますが、僕らもあのレベルまでしか知らないんですよ。ひとつ言えるのは、タコとイカによる大ナワバリバトルが行われた跡地のようですね。
――跡地だから、ビルのような廃墟が沈んでいたりするのでしょうか?
野上 あれは、さらに古い時代の遺跡のようなイメージですね。
――なるほど。ヒーローモードの各ステージは、地下世界ながら空が広がっていたり、宇宙空間のような場所に出ていますが、あれは各所へワープをしているのでしょうか?
阪口 あれは、地下ドームと言いますか、コロニーのような場所に転送されているんですね。半地下のようなタコツボバレーがあって、そこに点在するやかんから、各ステージ代わりのコロニーへワープしています。
――では、アタリメ司令が顔を出している、ハイカラシティのマンホールも、タコツボバレーへのワープに?
天野 いえ、あそこはハイカラシティとタコツボバレーが地続きになっていると言いますか、まさにマンホールで地下へ潜っている状態です。
野上 イカよりもタコのほうが、文明は進んでいるんですよ。
阪口 タコは、物を拾ってきて自分たちなりにうまく工夫して使うのが得意なんです。ですから、彼らはありあわせのもので巣を作っているようなイメージですね。
佐藤 大ナワバリバトルの結果で、どうもタコたちは追いやられたらしく、その影響で、地下世界に暮らしている……らしいです。
――らしい(笑)。
阪口 ですから、タコツボバレーの上のほうに上っていくと、遠くにイカスツリーが見えるという。
佐藤 あそこは、タコの世界とイカの世界の境目、最前線なんですよ。
――では、タコたちはタコツボバレーからイカスツリーを見ているようなイメージでしょうか?
野上 タコツボバレーにもいるのかもしれませんが、基本的には、さらにあの地下にタコの世界が広がっているイメージですね。
――な、なるほど。わかったようなわからないような……。
阪口 謎は深まるばかりですね(笑)。
――ヒーローモードに登場するタコは、1本足よりも2本足のほうが強いといった設定があったりと、いろいろと設定が細かいですよね。
阪口 ああいった設定は、デザイナーがすごくこだわっているんです。1本足のタコは、レバーを操作しながら攻撃ができないので、単発の弾しか撃てないんですね。
佐藤 それが、2本足のタコは、手……というか足が多いのでレバーを操作しながらボタンを連射できるので、攻撃でも連射してくるんです。
阪口 すごく近づいて、タコの手もとを見てもらえるとわかるのですが、めちゃくちゃ連射しているんです(笑)。
野上 ちゃんと動いていて、ボタンを叩くエフェクトも出ていますから。
――こちらがインクを塗った場所を、タコが一生懸命に塗り返すところがおもしろいです(笑)。
阪口 タコたちは、とても真面目なんですよ。すごく勤勉なタコという設定です。
野上 タコとイカは性格が正反対なんですよね。イカはすごく享楽的で、タコは真面目。タコたちは侵入者を排除したり、塗られた場所を塗り返したりと、職務に忠実にがんばっているんです。
阪口 ステージを一度クリアーしてデンチナマズを取り返すと、同じステージのゴールにぬいぐるみのデンチナマズがいると思うんですが、タコたちは真面目なんで、ぬいぐるみにすり替わったことにも気づかずにずっと守っているんです。
――あれは、やっぱりぬいぐるみだったんですね! あのぬいぐるみの失敗作のようなものが、ハイカラシティのマンホール側のゴミ箱や、タコツボバレーのアタリメ司令の家にあったんですが……。
野上 気づかれましたか。
阪口 あのぬいぐるみは、アタリメ司令が作ったもので、デンチナマズがいなくなったことがバレないようにすり替えているんです。
――アタリメ司令が! では、アタリメ司令はぬいぐるみを置きにわざわざステージクリアーしていると?
阪口 いえ、あれは主人公(プレイヤー)に託しています。
野上 クリアーしたときに、じつは見えないところですり替えています(笑)。
――ステージクリアー時の“取ったぞ!”というアクションの後に、主人公がこっそりすり替えているんですか! でも、2回目以降のクリアーはデンチナマズを取ったフリして、そのまま残すことになりますよね(笑)。
野上 そういうイメージですね(笑)。ちなみに、アタリメ司令の家の裏にたくさんストックが置いてあります。
――では、アタリメ司令がコツコツと内職のようにぬいぐるみを作っているんですね……。
阪口 そうですね。本当は、アタリメ司令は自分でステージに挑んですり替えに行きたいくらいなんですが、司令はお年を召されていて、インクがあまり出ないので、主人公に託したんですよ(笑)。
――インクが出ない!? あの、インクは年を取ると出ないという設定が……?
阪口 それはアタリメ司令が言っていました。天日干しのしすぎでしょうかね? くわしくは研究中なのでわかりませんが(笑)。アタリメ司令は、無責任なわけではなくて、イカの中でも珍しく責任感があるのに、誰にも相手にされないんですね。
佐藤 アタリメ司令は話しかけるといろいろな話をしてくれます。ジャッジくんも、ときどき話しかけると、アドバイスをくれますね。ジャッジくんの吹き出しがオレンジ色になっているときは、積極的に教えてくれます。
天野 ジャッジくんは、相当しゃべりますね。テレパシーでプレイヤーに話しかけているらしいんですが。
野上 なんでこんなに詳しいんだろうと思いますけどね(笑)。きっと、たくさん試合を見ているから、自然と詳しくなっていったんでしょう。
――ヒーローモードといえばラスボス戦の演出がすごかったですね。とくに、シオカラ節の部分はいろいろな意味で衝撃でした。
阪口 あれは、最後に曲がかかったらめちゃくちゃ感動するだろうなと思って、歌の力に頼ったというのが正直なところですね(笑)。このゲームは新規IPですので、お客さんに好きになってもらおうという点を意識して、細かい部分も含めて作っているんですね。ナワバリバトルの地形を長く遊び続けてもらうためにと意識した点もそうですし、アップデートでブキやステージを徐々に追加していく点も、ステップバイステップで情報を公開して、お客さんといっしょに成長しながら、よりゲームへの想いを深めてほしいという想いがあります。一方で、僕も1ゲーマーとして、ひとり用のモードはスカッと終わりたいなと思っていたんです。オンラインサービスとは異なる面として、ヒーローモードは終わりがあるものですし、そのエンディング前として“終わりよければ、すべてよし”という感覚で、サウンドやデザインのスタッフといろいろ話をした結果、ああいう終わりかたにして盛り上げて、最後はエンディングのスタッフロールでちょっとしっとりして終わったらいいんじゃないかなとなったんです。
――確かに、『シオカラ節』、スタッフロールという流れは、歌の力がすごかったです! そんな『シオカラ節』ですが、あの曲はイカの世界では有名な曲なんですか?
天野 シオカラーズは、もともとシオカラ地方というところから来てアイドルになった人たちなんですが、彼女たちの出身地であるシオカラ地方の民謡が『シオカラ節』で、それをいま風にアレンジしたのがゲーム内で流れる『シオカラ節』なんですね。
阪口 たとえるなら、イカの国民歌をリミックスしたようなイメージですね。
――ああ、それはイメージしやすい。エンディング後のスタッフロールは、インタラクティブですよね。
野上 ただ見ているだけだと、何も出てこないんですけどね(笑)。
天野 あの演出も、ある程度何か見えたほうがいいんじゃないかと、いろいろと悩んだんですが、“このゲームは塗るゲームだ”と考えて、最終的にあの形になりました。
阪口 背景にいろいろなイラストが流れるんですが、あのイラストはプログラムのスタッフも描いてくれたんですよ。
野上 スタッフみんなに落書きを募集して、集めたんです。
――今後(2015年6月時点)の予定ですが、たとえば“ランクの上限を上げてほしい”といった、いろいろな要望も届いていると思いますが……?
天野 ひとつひとつのご要望に対して、対応します、できませんといった回答はできませんが、僕らとしてはいま遊んでくださっているお客さんに長く遊んでいただきたいということが最大の望みで、そのためにはどういう形で、どういう機能を追加すればいいのかということを検討しています。
――楽しみにしています! 野上さんは後ほどうかがいますが、最後に本作を楽しんでいる読者にメッセージをお願いします。
佐藤 『スプラトゥーン』は、これからもおもしろい要素が増えていきます。この祭りに参加していただければ、皆さんも楽しんでいただけると思いますし、私も参加しますので、ぜひ参加してください。
阪口 開発を振り返って、最初にイカの性能ができたときに、皆で塗って道を作って泳いでくるという感覚を味わったんですが、「いいな」と感じたんです。紙の上で考えて、いいものになるはずだとは思っていたんですが、体感してみると、「こうなるのか」という予想以上の驚きがあって。ユーザーの皆さんにも、まずそういう触ってみないと味わえない楽しさがあると思うので、まずは触ることから始めてみていただけると嬉しいです。店頭や友だちの家など、どこでもいいのでぜひ触れてみてください。
天野 僕は、プライベートでもいちユーザーとして参加していて、それなりにうまいはずなので(笑)、上のほうのランクにいると思います。そこで出会った人は、いっしょに楽しみましょう。
――ありがとうございました!
意外な裏設定がいろいろと明らかになった、システム編のインタビュー、イカがだっただろうか? このほかにも、デザイン編、サウンド編があるので、合わせて読んでいただきたい。
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