任天堂とDeNAで新しいビジネスモデルを構築したい

 岩田氏、守安氏のプレゼンテーションのあとは、取材陣やアナリストを対象としての質疑応答が行われた。そのおもなやりとりを、以下に紹介しよう。

 まず飛び出したのが、タイトルに関する質問。こちらに関しては、準備ができ次第明らかにしていくが、「今年中には何らかのアウトプットを出す」(岩田氏)ことが明言された。また、タイトル開発にあたっての役割分担に関しては、タイトルごとに役割分担を考えるとのこと。ただし、守安氏より、両社の強みを活かして、フロントサイド(手触りのノウハウなど)は任天堂が担当し、Webサーバーの構築などのバックグラウンドはDeNAが担当することが多くなるのでは……とのことだ。

 任天堂が、慎重だったスマートビジネスに対して、「任天堂なりの答えが出せた」として、DeNAとの協業を決意したことに対して、「その答えは何か?」と改めて問う質問も。それに対して岩田氏は、「ひとつは、同じゲームを両者(スマートデバイスと家庭用ゲーム機)に出さないこと」とコメント。人気IPを別のデバイスに持って行っても、同じく必ずしも最高のゲーム体験にはならないと説明しつつ、「両者はゲームができるといううえでは非常に親しく見えるが、じつは別モノだということが、我々のなかではっきりと整理できたことが、とても大きなポイントです」という。そのうえで、岩田氏はスマートデバイスを活用し、何をするかを考えていた時期と、DeNAと「こんな形で協業できないか」ということを話した時期は平行して進んでおり、ある意味で“天の時”が来て、両方のよい答えがでたのではと語る。

 「“ガチャ”はある意味で、射幸心を煽っていると言われるが、その点についてどう思うか?」との質問には、岩田氏が「これから提供するアプリが任天堂のIPを活用して提供される以上は、お客様が納得しない形でビジネスを展開することはありえないと思っています。両社合意のうえで決めていきましょう、ということは、十分に合意できています。私たちはお客様に安心して遊んでいただけるものを目指しています」と明言した。

 また、任天堂、DeNA両社に対する質問として、「1社ではできないという危機感の現れでは?」との問いには、まず岩田氏は「よくいろいろなメディアに、“任天堂は追い込まれている”と書かれますが、私は追い込まれたとは思っていません」と語ったうえで、「世の中はどんどん変化していくので、それに対応しなければどんな企業も、必ず衰退していくという当然の危機感は持っていますが、“追い込まれて消去法で”という結果、このような提携をしたというのはまったくの誤解です」と説明。今回の提携に合わせてDeNAと打ち合わせの機会を持つたびに、DeNAが「ある部分では、黒子になってでも、任天堂と事業をすることを考えたい」といってくれたことや、任天堂が単独で展開するよりも、よりスピーディーに展開できたり、より豊かなユーザー体験をもたらすことができるとの分析から、“むしろポジティブなチャンスとして活かしたい”と判断したのだという。「この間、任天堂は(他社から)山ほどのお誘いをいただいておりますから、積極的にDeNAさんを選択し、今回の発表に至ました」とのことだ。

 続いて守安氏もDeNAサイドから、「最新ヒットタイトルも出せましたし、“これはちゃんとやっていける”という手応えは掴んでいます」とコメント。「そのうえで、主力事業をどういうふうに大きく成長させていくかを考えたときに、どういう選択肢があるのかということで、もっとも事業を成長させるうえで、任天堂さんの強いIPを活用していっしょにゲームを作るのが非常に有力だろうと考えました。この提携は筋のいい、うれしいものになっています」と語った。

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 「ビジネスモデルはどうなる?」との問いには、岩田氏が、「スマートデバイスのユーザーに受け入れてもらえてたくさんの利用者の方に遊んでいただいて、初めて我々がスマートデバイスで展開することの意味があります」と説明しつつも、任天堂は天邪鬼なので、世の中の成功パターンに囚われず、「守安さんと、新しいビジネスの構造にトライしたい」とのこと。岩田氏によると、プレゼンテーションでは、“まだ早い”との思いから言わなかったそうだが、「もし、新しいビジネスモデルの発明ができたら、それは最高ですね」と意気込みを語りつつ、守安氏と笑顔を交わした。

 また、岩田氏に対する「子どもたちにどういうふうに遊んでほしいか?」との質問には、「任天堂ブランドには、子どもさんに安心して遊んでもらえるという信頼が、過去30年以上のあいだに積み上がっています。それは任天堂の大切な財産です。それを壊すようなことはしたくありません。“こうすればスマートデバイスの収益が上げやすい”という、いまある業界の常識は、いま現在の常識で、これからどんどんビジネスモデルは変わっていくはずなんです。そういった意味では、お子さんに安心して遊んでもらえるという部分を大事にしながら、いっしょに事業展開したいです」と熱く語った。

 ゲームファンにとって気になる新たなゲーム機コード名“NX”をこの場で発表したことに関しては、「提携とは直接の関係はない」としたうえで、今回の発表は「任天堂はこれからもゲーム専用機のビジネスをしっかりとやっていく情熱と展望を持っている」ことの証明だと改めて説明。スマートデバイスで、任天堂IPに触れてくれるユーザーが増えるであろうことを想定しつつ、「いわば没入感のある世界にどっぷりと浸っていただけるような、ゲームを大好きな方に心から満足していただけるようなゲームを、これからも任天堂はコアビジネスとしてやっていきますということを誤解なくご理解いただきたかった」と“NX”発表の経緯を熱を込めて語った。

 一方で、新しいメンバーズ サービスに対する質問に関しては、“複数のデバイスを対象にして、複数のデバイスで架け橋をかける”ことと、“クラブニンテンドーのようなロイヤリティの側面を持たせる”ことが説明されたが、それ以上の具体的なサービスについては、後日改めて発表するとのことだ。

 アナリストからは、「スマートデバイスの取り組みとしては遅いのではないか?」との質問も飛び出した。それに対して岩田氏は、「遅いかどうかは、数年後のアウトプットとして判断されることです。むしろベストなタイミングを選んだと言われるかもしれません。詳細な出会いや自分たちの中での議論の進みかたや、そこで見つかったアイデアが同時並行的に起こりましたので、むしろ私は“タイミングが来たんだな”と思っています。それを証明したいです」と語った。

 「いま一度提携相手がDeNAだったことの理由を知りたい」との問いかけに関しては、岩田氏は「DeNAさんの情熱だと思います」と即答。「任天堂とぜひやりたいという気持ちを強くお持ちでした」という。多くの会社が任天堂の扉をノックする中、DeNAはくり返しアタックしてくれたのだとか。さらに、任天堂が得意ではない領域を、DeNAはしっかりと持っていたことや、その部分について「黒子になっても構わない」とDeNAの守安氏が明言したことで、任天堂の取り得る戦略オプションが増えたという。岩田氏は、「スマートフォンアプリを共同開発するだけだったら選択肢はあったかもしれませんが、メンバーズ サービスを共同開発して、協力してくださることを厭わない。そのためにDeNAさんのエース級の人材を投入していただけるというコミットメントがいただけました。それだけ任天堂と組むことに真剣で、高い評価をしていただけました」と改めてDeNAの熱意に言及した。