●ブイヤベースのショップ店員たちの誕生秘話

『スプラトゥーン』機能を表現するデザイン手法。キャラクター、ブキ、ギアのデザインに迫る、開発スタッフインタビュー【デザイン編】_22
▲いろいろなお店が並ぶ、ブイヤベース。
『スプラトゥーン』機能を表現するデザイン手法。キャラクター、ブキ、ギアのデザインに迫る、開発スタッフインタビュー【デザイン編】_12

――続いて、お店関連のキャラクターをうかがいます。まずは、ブキチに関してお聞かせいただけますか?
井上 ブキチはストレートにミリタリーマニアです。彼は、軍隊に入りたかったけれど、近眼のせいで入れなかったんですね。
野上 ブキマニアで、ブキの分解が好きすぎてずーっとやっているうちに近眼になって軍隊に入れなかったという裏設定がありますね。しょうがないから、家を継いでブキを売っています。
井上 彼の家は名家で、いいお家の出身なんですよ。
野上 ブイヤベースが建っている土地もブキチの家のものなんですよ。

――ああ、じゃあオーナーなんですね。
野上 ゲーム内に名前だけ出てきますが、彼のおじいちゃんのカンブリブキノサイが地主だったんでしょうね。

――彼の目は双眼鏡になっているんですか?
井上 いえ、メガネというかレンズが双眼鏡なんですね。近眼過ぎてこれくらいぶ厚いレンズがないと見えないんですよ。ブキのことを詳細に語りますが、しゃべりそうなキャラクターというデザインにしていまして、そこは仕様として大きなオーダーがありました。

『スプラトゥーン』機能を表現するデザイン手法。キャラクター、ブキ、ギアのデザインに迫る、開発スタッフインタビュー【デザイン編】_13

――それでは、アネモ&クマノについてお願いします。
井上 アネモは、サブカル系の雑貨などを扱うお店のバイトスタッフというイメージですね。
野上 サブカル系女子です。
井上 自分が街にいるイカたちの年代のころは、そういった人がリアルな憧れの対象でした。そのイメージを出しています。

――クマノは、いつもいっしょにいるんですか?
野上 アネモがイソギンチャクなのでその頭で暮らしている感じですね。『スプラトゥーン』の中で、このキャラクターだけなぜかまともに魚ですね。あまり進化していません。

――ペットではなく共生?
野上 そうですね。
井上 何をするわけでもないんですが、アネモの頭の中の安全なところで偉そうなことを言っています。
野上 内弁慶タイプですね(笑)。

『スプラトゥーン』機能を表現するデザイン手法。キャラクター、ブキ、ギアのデザインに迫る、開発スタッフインタビュー【デザイン編】_14

――ああ、わかりやすい(笑)。続いて、フク屋のエチゼンをお願いします。
井上 この人は、オシャレすぎてよくわからない人です。ファッションがスゴすぎるという設定で、ファッションショーなどのモード最先端の場所に行ったりすると、一般人の感覚ではどうなんだと思うけど、やっぱり憧れるというファッションがありますが、そういった雰囲気ですね。
野上 あの人が着ているからカッコいいんだろうと、みんなが思うという。エチゼンもそんなファッションリ―ダーということになっています。

――毎日、着ているTシャツが違いますよね。
井上 はい。さらりと着こなしています。ファッショニスタという設定なんです。わざわざ“ファッショニスタ”と呼ばれる人は少ないと思いますが、そう呼ばれる域に達しているわけです。
野上 クラゲの中で唯一ずば抜けた才能を持っていて、しゃべれるのも彼だけなんです。

――広場のクラゲはしゃべれないんですか?
井上 広場のクラゲは、ステージで落書きなどいろいろなことをしているんですが、中には、そういうことをしている振りをするクラゲもいて。けっきょく、何もしないんです。ただの概念のようなものですね。
野上 機能的にも、その他大勢という役目ですね。

『スプラトゥーン』機能を表現するデザイン手法。キャラクター、ブキ、ギアのデザインに迫る、開発スタッフインタビュー【デザイン編】_15

――ふ、深い! 続いて、クツ屋のロブについてですが、ひとりだけ揚げられていますが、身体の衣は洋服のようなイメージですか?
井上 衣ですね。

――衣だった!
野上 この前、新たな研究報告が追加されました。家に帰ったらお風呂で衣を揚げ直して、毎日サクサクになっています。夜になったら、少しフワフワになっているのでまた揚げ直しています。

――それは、うち(週刊ファミ通)の4コママンガですね(笑)。
野上 研究でわかったことにさせていただきました(笑)。

『スプラトゥーン』機能を表現するデザイン手法。キャラクター、ブキ、ギアのデザインに迫る、開発スタッフインタビュー【デザイン編】_23
▲週刊ファミ通に掲載された“ほのぼのイカ4コマ”より(作:高橋きの)。

――ありがとうございます!
井上 イメージとしては、大手スポーツチェーン店の店長です。
野上 スニーカーが好きすぎて、商品知識がすごいんです。

――ブイヤベースの各店舗の中では、もっともまともに会話ができますね。
井上 そうですね。そのあたりは、見た目とのバランスを取っているのかもしれません。
野上 揚げられたりしていてネタっぽいですけど(笑)。
井上 気サクでアゲアゲなお兄ちゃんです。学生のころに、行きつけのショップの店員さんや店長と仲よくなって憧れるということがあると思いますが、そんなイメージです。

――イカしたショップ店員だと。
井上 でも、名前はロブで、ロブスターっぽいんですが、実際は車海老なんですよ。

――え!
井上 仲間たちから「ロブスター」と、わざと洋風で呼ぶような、あだ名で呼ばれているうちに定着していたんでしょうね。きっと、本名は別だと思います。

『スプラトゥーン』機能を表現するデザイン手法。キャラクター、ブキ、ギアのデザインに迫る、開発スタッフインタビュー【デザイン編】_16

――タコ軍団のオクタリアンについてもお聞きします。オクタリアンには、足が2本だと片方の足で連射ができて強いといったルールをうかがいましたが、あの足を中心としたデザインはどのように決められたのでしょう?
井上 あのデザインは敵キャラクター担当のものが作ってくれました。日本人でタコと言ったら、タコ足を思い描く人が多いと思うんですよ。それもあって、素直なタコより足の部分だけでも記号として強いかなと思って決めました。もともとザコキャラなので、手先と言いますか、デカイ奴の先端がちぎれていってザコキャラが集団でワーっと動き出すようなイメージも考えていました。ただ、先っちょで意思もあまりないので、弱く、あまり複雑な動きができなそうなイメージです。

――なるほど。単細胞生物のような?
野上 そうですね。脊髄反射だけで生きているイメージかもしれません。
井上 イカが享楽的なのに対し、タコたちは勤勉という研究報告がありますね。

――ああ、システム編(→コチラ)のインタビューでもうかがいました。タコゾネスも含め、タコは全員真面目なんでしょうか?
井上 タコは任務を遂行するキャラクターなので、「同じ場所を塗れ」と言われても、何の疑いもなくストイックに任務を遂行します。タコゾネスはプレイヤーと同じように行動できますが、イカに比べると真面目だと思います。

『スプラトゥーン』機能を表現するデザイン手法。キャラクター、ブキ、ギアのデザインに迫る、開発スタッフインタビュー【デザイン編】_24

――ちなみに、タコたちはボスを含めて目の瞳孔が開いているように見えますが、デザインの意図はありますか?
井上 あまり意思や感情がありそうに見えると、もう少し複雑なことをしそうというか、もっと状況に応じて行動しそうなイメージに見えてしまうんですが、そうするとタコ軍団の機能とは合致しないんですね。
野上 対戦モードは明るい世界で、ひとり用モードはおどろおどろしい世界というようにデザインイメージを分断したので、それに合うデザインにしています。
井上 敵だというのが最初からわかるほうがいいなと思ったので、ちょっと危険なイメージが出るようにはしています。

――タコツボバレーやタコの世界には過去に大きな戦いがあったという設定があると思いますが、その辺は意識されたのでしょうか?
井上 タコたちは、過去の人間世界のころにあった文明の遺産を組み合わせて、うまいこと活用するという設定で、現代的なハイカラシティとは似つつも対照的になるように、人間世界の遺産をコラージュ的に入れています。ヒーローモードにはいろいろとギミックがありますが、そういった部分に自然に入れられるようにしていますね。
野上 彼らは見たことあるオブジェを間違って使っている部分もあって、踏切や電信柱などがありますが、本来とは異なる使いかたをしているんです。
井上 タコたちは真面目すぎるゆえに、間違った使いかたのまま突き進んでいて、電信柱をふたつつなげたら浮く機構を、努力によって考え出したりしています。

――科学力はイカより進んでいるんですね。
野上 応用力やテクノロジーはイカより優れていますね。