●ヒーローモードはDJタコワサたちのタコ向けの曲!?

『スプラトゥーン』架空のバンド、アイドルを想定して作るBGM。シオカラーズ、インクの音のこだわりも訊く、開発スタッフインタビュー【サウンド編】_04

――ヒーローモードは、ナワバリバトルと違って、テクノのような曲調になっていますね。
峰岸 まさにテクノっぽくしようとして全体を作りました。まず、ナワバリバトルとは遊びの種類が違うことをわかりやすくするために、音楽の傾向をまったく変えようと。ナワバリバトルの、みんなでワイワイとスピード感溢れるスポーツをやっているイメージに対して、ヒーローモードはアタリメからの指令は入ってくるけれど、基本は孤独で密室感のある雰囲気なんです。さらに想定としては、たくさんのオクタリアンたちを統制するためにタコ側が放送している曲、という設定なんですね。

――オクタリアン向けの曲なんですね!
峰岸 DJタコワサ将軍や直属の部下が作曲しています。それが、なぜか主人公のヘッドホンに混線してきてしまったという想定です。ですので、ザッザッザッザッという、統制が取れて行進しているようなイメージとして、ドッドッドッドッという規則正しいベース音を入れたりして、その機械的な雰囲気をテクノという方向性でまとめました。

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『スプラトゥーン』架空のバンド、アイドルを想定して作るBGM。シオカラーズ、インクの音のこだわりも訊く、開発スタッフインタビュー【サウンド編】_14

――オクタリアンたちの足音が、「タコタコタコタコ」と言っているように聞こえるのですが……(笑)。
峰岸 タコとは言っていませんね(笑)。ただ、タコの声っぽいパートがあることは確かです。実際に、敵のボイスとして使っている音に近いものが、曲にも入っています。

――DJタコワサの曲にスクラッチ音が入っていたりしますが、そういった設定は世界観を含めて作ったのでしょうか?
峰岸 最初はタコワサという名前が決められて、ワサビをするというところからDJになって、それなら曲にはスクラッチ音を入れようという順番でした(笑)。このBGMは、ドンドンドンドンというリズムから始まりますが、それにぴったり合わせてワサビをするという演出がつぎに決まったりと、曲ができてからも相互作用でできあがっていきましたね。

状況に合わせて音の粘度を変えるインクの効果音

――効果音のほうも、実際にゲームを見てから音をつけたのでしょうか?
 そうですね。ゲーム内のキャラクターの動きや、インクが落ちたときの広がりかたなどがあらかたできた段階で音をつけるところもありましたし、まだ完成していなくても、「手応えや感触を知りたいので音をつけてほしい」というオーダーもありますので、そういう場合は途中の状態を見つつ、音を入れたりしていました。

――ブキでインクを撃つという音は、現実ではなかなかないものだと思いますが、どういったイメージで作りましたか?
 昨年(2014年)のE3出展の半年くらい前には、インクの音の原型はできていましたね。もともと、インクの音というのは生々しい粘度感を出すことが大事だと思っていたんですが、生々しさだけを前面に出してしまうと、だんだん不快に感じられてしまう場合もあったので、それとは別に、爽やかな水っぽい音も用意しました。本作に出てくるインクの見た目の粘り気は全部同じだと思うんですが、バシャッという爽やかな音と、ネチャッという生々しい音を、状況によって区別して使っています。

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『スプラトゥーン』架空のバンド、アイドルを想定して作るBGM。シオカラーズ、インクの音のこだわりも訊く、開発スタッフインタビュー【サウンド編】_15

――そんな区別が……!
 たとえば、インクを撃ってボトッと地面に落ちるときや、ローラーで地面を塗っているときは、粘度の高い生々しさを意識した音を出しているんですが、ヒトを撃って倒したときなどは、爽快感を重視したいと思って、冷水をぶちまけたようなバシャーンという音に寄せたり。同じインクでも、音の違いでアクションの印象を変えるようにしています。ですので、ひとえにインクと言っても、ひとつの素材からできているわけではなく、いろいろな素材が組み合わさって、そのバランスで音が作られているんです。

――では、いろいろな音を組み合わせて、イチから音色を作っているんでしょうか?
 はい。あの粘度の高い音は、やっぱり自分で作るしかないと思い、就業中に昼間からひとりで買い出しに行きまして(笑)。ホウ砂(おもちゃのスライムを作る元)や片栗粉、こんにゃく、木工用ボンドといった粘度の高そうなものを中心に買ってきました。後日、経費として精算しようとしたのですが、経理の担当者から「なんですか、これ?」と問い合わせがありましたね(笑)。「インクの音に使うんです!」という説明に苦労しました(苦笑)。

――なかなか想像がつきませんからね(笑)。
 それで買ってきたものを集めて、本社のスタジオで峰岸といっしょに水を混ぜながら、「粘度がこれくらいのときは、片栗粉を多めにして……」と、水を足してはこねくり回して、木工用ボンドを足してはこねくり回してと、試行錯誤をくり返していました。

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――今回のようにイチから音を作るというのは、ほかのゲームでもよくあることなのでしょうか?
 そうですね。よくある挙動の音や、一般的に広く使われている音でなければ、イチから作ることは多いです。たとえば、“イカがインクをぶちまけながら、その中を泳ぐ”……という音は探してもなかなかありませんから(苦笑)。あと、本作はいわゆるゲームらしい抽象的な音はあまり使わずに、身のまわりにある物で音を作っています。というのも、このゲームでは没入感をとくに大事にしたいと思っていて。どこかに本当にイカの世界があって、イカたちが本当にインクを撃って、インクに潜って戦っているというリアリティーを感じてもらえるように、水に潜るようなテュポンとか、ベルの音のようなチリリンといった耳なじみのある音を鳴らすようにしています。実際、スタジオに篭って峰岸とふたりで収録しながらビチャビチャと音を作っていたんですが、異臭がすごかったですね(苦笑)。

――音作りなのに、異臭の苦労があるとは(笑)。ちなみに、たとえばシューターであれば“バラララ”という連続する音ですが、ブキごとの音色はどのように作り分けましたか?
 ブキごとに撃ったときの感触が変わるように、音色も少しずつ変えてはいるんですが、基本的にあまり大きく変えすぎず、よく聞く“ドドドド”というシンプルな音で統一しています。今回、ひとつ気をつけているのは、金属音のような耳通りのいい帯域の音を強くは入れていないところです。本作のブキはインクを撃つ銃ではありますが、耳を突くような音はあえて外して、鈍めで重たく、単発で聞くと少し物足りないかもしれない、そんな音を中心に据えました。というのも、発射するのがインクだから、という理由もあるのですが、このゲームは何度も何度もくり返し遊んでいただくタイプのもので、その遊びのうちの大半がブキで撃つというアクションです。基本的なブキですと1秒に5、6回くらい発射音が鳴るんですね。1日1時間もゲームをすると、ほかの人のブキの音も合わせて1~20000回はその音を聴くことになって、たとえば世界中で10000人の方が遊んでいるとすると、1時間もすれば世界で1億回以上、その音が消費されることになるんですよ。それだけたくさん鳴る音なので、耳に突きやすい音だとすぐ耳に疲労が溜まってしまいます。できるだけ長い時間遊んでもらえるように、ずっと聴いていても疲れにくい、それでいて発射の手応えが心地よい、そんな音色を探って、練って、いまの音にたどり着きました。

――音色ひとつとっても深いですね。
野上 ところで、ミニゲームのイカラジオの原型は、辻がひとりで作ったんですよ。

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――おひとりですか!
 そうなんです。ある日、サウンドの制作環境の都合で、ほぼ丸一日作業ができなかった日がありまして。それがちょうど、マッチングの待ち時間に遊べるミニゲームの企画を、チームの人たちが提案していた時期だったんです。そこで、その一日を使って、BGMを聴けて遊べるミニゲームを提案して、ゲームで実際に遊べる状態にして見せてみたら、ミニゲーム担当のプログラマーがノリノリで「これはいいじゃないか」と評価してくれて、この提案が採用されたんですね。それがブラッシュアップされて、現在の形になりました。

――サウンドのスタッフがミニゲームなどを作るというのは珍しいと思いますが?
 『スプラトゥーン』のBGMは、これまでの任天堂作品にはあまりないジャンルの曲でしたから、もっとこの新しいBGMを楽しんでもらえないか、BGMを活かした何かができないかと、開発の期間を通じていろいろな取り組みをしてきました。ヒーローモードのステージの電飾やテレビ、踏切などがBGMに合わせて光る演出もその取り組みのひとつですし、イカラジオもその気持ちの延長で作りました。マッチングの待ち時間や広場でイカラジオを楽しんでくださっている方も多いようで、うれしく思っています。
峰岸 めちゃめちゃ難度の高い譜面も彼が作っているんですよ。
 ふつうの難度の譜面は、ノリノリで気軽に遊んでもらえるようにしていて、コンポーザーのおふたりに作ってもらいまして、難度の高いほうは曲への理解が深い人向けとして、僕が全曲作らせていただきました。