千葉市、四街道市、佐倉市にかけて「千葉寺十善講 八十八ヶ所」という大師講の札所があります。相次ぐ戦乱や天候異変等で民衆が極度の貧困に喘ぎ、神仏にすがらざるを得なかったという時代背景のもとで、室町時代末期には「念仏講」に象徴される「講」活動が各地で盛んに行われ始めました。
本場の四国霊場八十八ヶ所を模して札所を設け、「大師講」を組織して巡拝して廻るという活動は、旺盛な弘法大師信仰に支えられて、江戸時代初期から全国各地で流行するようになりました。 研究者によると、千葉の「下総」地区は、西の「美作」と並んで大師講活動が格別盛んだったそうです。これらの札所を巡ってみますと、老朽化して破損が進んでいるものが目立ちます。大師堂そのものが残されていない札所もあります。
しかし、何といっても、そこでは菅笠をかぶり杖をついた巡礼姿の祖先達の汗や埃にまみれた草鞋の臭いが感じられます。 現代における札所は、宗教的史跡というよりは、土俗的な郷土史跡として評価すべきだと考えます。 札所巡りのルートは、現在でもそれなりの風情を備えていますので、散歩コースとして最適です。意欲のあるシルバー世代には健康増進を兼ねた郷土の史跡巡りとしてウオーキングやサイクリングで是非一度訪ねて貰いたく思います。
また、若い世代にも、こうした庶民的史跡が身近に細々と残されていることを頭の片隅に留めおいてもらい、機を見て実際に一度巡って見て欲しいと思います。そして何らかの形で、次の世代にも伝えて欲しいと願うのです。
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