掟破りのサプライズだったレインボーロケット団


――殿堂入り後には、これまでの『ポケットモンスター』シリーズに登場した悪の組織のボスたちが集結するレインボーロケット団の物語、“エピソードRR”がありますが、こちらを収録した経緯を教えていただけますか。
杉中まず、“主人公の乗り越える最大の壁とはなんだろう?”という問いから始まりました。その自問が自答に至ったのが、悪の組織の集結という答えでした。これまでに登場した悪の組織のボスたちが歴代最強の状態で集まってきて、それを乗り越える、というエピソードはまさに最大の壁だといえますよね。
――ド直球の大きな壁ですね。
杉中今回はウルトラホールがありますし、ストーリーの中に無理なく溶け込むだろうと思いました。注力ポイントは、各ボスに優劣を付けず、同格になるように描くことに尽きます。それぞれに多くのファンがいるキャラクターたちですからね。全員に見せ場があって、人物の掘り下げもして、可能性の物語も示唆できるように熟考を重ねました。各々がどんな世界からやってきたのか? 遊んでいただく方の想像を掻き立てる内容にできたと考えています。
――ディレクターの目線で、レインボーロケット団のエピソードを採用しようとした理由はどのあたりにあるのでしょうか。
岩尾じつは、もともとはバトルエージェントという遊びのボスの扱いで考えていたんですよね。その方向で企画を練っていたのですが、彼らの魅力をうまく引き出せる形ではうまくまとまらなくて。そこで、悪の組織のボスたちの魅力をもっと引き出せる方法を模索する中で杉中から出てきたのが、レインボーロケット団のエピソードでした。
――杉中さんからこのエピソードのアイデアを最初に聞いたときの印象はどうでしたか。
岩尾とにかく、めちゃくちゃミーハーな企画だなと(笑)。僕はどちらかというと、ゲームの設計をシステム寄りで考えがちなので、頭の片隅にあったとしても、杉中の提案のような形にまとめることはできなかったと思います。ただ、最初に聞いたときにこの企画の魅力は十分にわかったので、これはやるべきだろうと言いました。実際にこのエピソードを作るのは、かなり難産になりましたが……。
――このエピソードの存在が対外的に明かされたのはソフトの発売直前の時期でしたが、インパクトが大きかったですね。「いや、それはズルい!」と声に出してしまいました(笑)。
杉中それだけプレイヤーの皆さんに喜んでいただけるものにできたんだな、という手応えがあるので、とてもうれしく思いますね。
――“エピソードRR”におけるレインボーロケット団は、エーテル財団の面々とも関わりがありました。このあたり、エーテル財団ファンの視点でも見どころを教えてください。
杉中じつは、自分がいちばん好きなキャラクターがザオボー(エーテル財団の支部長)なんです。“エピソードRR”では、彼が魅力的に描けてよかったと思います。騒動のなかで千載一遇のチャンスが到来するにも関わらず残念なことになるのですが……それでも諦めずに1歩ずつ進む彼の姿。“愛すべき小悪党”ということで、彼の活躍を見守っていただければと思います。
岩尾ほかにも、“エピソードRR”にはビッケやリーリエなども登場していますし、メインストーリーでは描いていない各人物の話を盛り込めたのは、すごくよかったと思います。
――グズマやマーマネも大活躍でしたよね。したっぱたちの描きかたも魅力的でした。
岩尾やはり彼らの活躍はもっと描きたいと、強く考えていましたからね。下っ端たちの扱いにもかなり気を使ったのですが、おもしろ味のある描きかたにできたと思います。
――ちなみに、エピソードの中で出てくるそれぞれのボスたちが存在している世界と、ゲーム中に主人公がいる世界との関係性はどのように考えればいいでしょうか。
杉中サカキたちがいたのは、“別の可能性の世界”ということになります。ネクロズマの影響によって、これがゲーム中の世界とつながってしまったと。ただ、それぞれのボスが歴代最強の状態で登場しているというところからもわかる通り、“別の可能性の世界”では、僕らが知っている世界とは別のことが起こっているのかもしれないということがおわかりいただけると思います。
――ネクロズマの力により、『ポケモン サン・ムーン』と『ポケモン US・UM』で別の可能性の世界が描かれたように、各ボスがやってきた世界にも、僕らが知らない、別の可能性の出来事が起こっているというわけですね……。そんなレインボーロケット団ですが、サカキが最後にとても気になるセリフを発しています。あれはどう考えたらいいでしょうか。
杉中どうお答えすればいいのか(笑)。でもそこは、プレイヤーの皆さんのご想像にお任せするのがいいのかなと。あまり語りすぎるのも無粋かなと思いますので。
――めちゃくちゃ気になりますが……。最後に、これから新たに『ポケモン US・UM』をプレイするという方に向けてメッセージを。
杉中本作には、アローラ地方という冒険の舞台をさらに魅力的に演出するために、いろいろな遊びやシナリオイベントを盛り込んでいます。駆け足で遊ぶのもいいですが、アローラ地方を観光するような気持ちでゆっくりと遊んでいただけると、新たな発見があって、より深く楽しめるはずです。一部にはソフトごとに異なる出来事もありますので、ぜひどちらもスルメを味わって食べるように、じっくりと楽しんでいただければと思います。
岩尾本作は、これまで『ポケットモンスター』シリーズを遊んでこなかった方でも、まったく問題なく楽しんでいただける内容になっています。この機会にぜひ触れてみてください。また、すでに遊んでいただいている方は、ぜひ、ほかのプレイヤーの皆さんといっしょに遊んでみてほしいと思います。ポケモンの交換や通信対戦はもちろんですが、本作には強力なポケモンをレンタルして戦うバトルエージェントという新しい遊びもあります。近くの人とでもいいですし、本作は9言語に対応していて、世界中のプレイヤーの皆さんとも遊べるようになっているので、ぜひ楽しんでいただければと。日本からですと、早朝や夜遅めの時間帯だと外国のプレイヤーの皆さんとマッチングしやすいので、世界中の人たちとの一体感を味わいつつ、本作を遊び尽くしてください。