ついに明かされる伝説のポケモン・ネクロズマの謎

『ポケモン ウルトラサン・ウルトラムーン』あのエピソードの真意は? 開発者たちが明かす、ストーリー制作秘話【ネタバレ注意】_17

――メインストーリーで描かれる大ネタとしてはネクロズマの謎が最大の見どころかと思いますが、注力された点を教えてください。

杉中ネクロズマに関しては、アローラ地方の根源に関わる存在であり、本作の核心にもっとも迫るポケモンですので、当然のことながらいちばん最初から考えていました。

岩尾日食・月食ネクロズマをパッケージにすることは最初から決めていました。パッケージに描くということは当然ながら本作を象徴する存在ですので、一連のネクロズマに関する物語が最初にできあがりました。その印象をより強めていく中で、ウルトラホールの先に行く展開や、ネクロズマの能力に関する部分が固まっていきました。

――対峙すると非常に強力なネクロズマですが、物語の中での存在感も大きいですね。

岩尾ネクロズマの描きかたは、かなり気を使ったポイントです。どうしたらその存在感が大きく打ち出せるのか、かなり考えました。そこで取り入れようと思ったのが、私たちがいる世界の各地に残る、神話や伝承をとらえるうえでの枠組みとしての“文化英雄”という概念です。これは、全知全能の“神”ではなくて、炎や農作物など、人間の生活を豊かにするものを与えてくれる特別な存在のことを指します。ギリシャ神話に出てくるプロメテウスや、ポリネシアの伝承にあるマウイなどがそれにあたるのですが、文化英雄の中には、いたずら好きで二面性をもったトリックスターが少なくありません。本作におけるネクロズマもそんな文化英雄のフレームワークを参考にすることで、プレイヤーの皆さんにとって強く印象に残るような存在にできるだろうと考えていました。

『ポケモン ウルトラサン・ウルトラムーン』あのエピソードの真意は? 開発者たちが明かす、ストーリー制作秘話【ネタバレ注意】_08

愛すべき存在感を放つウルトラ調査隊の面々

『ポケモン ウルトラサン・ウルトラムーン』あのエピソードの真意は? 開発者たちが明かす、ストーリー制作秘話【ネタバレ注意】_15
『ポケモン ウルトラサン・ウルトラムーン』あのエピソードの真意は? 開発者たちが明かす、ストーリー制作秘話【ネタバレ注意】_21

――存在感ということでいうと、ネクロズマとも深く関わるウルトラ調査隊の面々も、独特ですよね。とくに、仲間どうしでポケモンを共有していることに驚きました。

杉中ウルトラ調査隊に持たせていた役割は、“異文化の表現”でした。アローラ地方の人々とは違うということを明確に知らせるために、それを強調する演出を入れています。

岩尾ウルトラ調査隊の人たちは、別の世界からきているので、アローラ地方の人々とはまったく違う文化や違う考えかたを持っているはずなのですね。言葉すら通じない、というような設定にすることもできたのですが、ある程度はアローラ地方の人々とも会話が通じるくらいのほうが文化の違いを見せるうえではおもしろいと思いました。なかでも違いを持たせたのが、ポケモンとの関係性です。

――なるほど。そのほかにも、彼らがアローラ地方の挨拶や習慣を微妙に間違って認識しているところが、異文化コミュニケーションの描きかたとしておもしろいですよね。

杉中彼らが頻繁に見せる、挨拶する際のジェスチャーがカクカクしているのは、完全に彼らの勘違いです。あれが正しい挨拶だと思ってしまっているという(笑)。

――細かい演出ですが、見ているとほっこりする場面ですよね(笑)。ウルトラ調査隊の面々の言動には、ちょっとかわいげを感じます。

岩尾僕らも外国に行くと、こちらは真面目にしているつもりでも、地元の人から見るとちょっと変な感じになっていることってあり得るじゃないですか。ダルスとシオニラがとくにそうだと思いますが、異国の観光地にやってきた人たちというイメージで、慣れていない感じや、かわいげを出しています。

――展開されるストーリーを考えると、本作の彼らをもっとシリアスに描くこともできたと思うのですが、あえて愛嬌のある描きかたにしたのはなぜなのでしょうか。

岩尾アローラ地方という、ゆったりとした時間が流れる舞台にシリアスすぎる集団が出てくると、遊んだときの印象に必要以上のギャップが出るのではないかという不安がありました。もちろん、真剣な話も描きたいと思ったのですが、アローラ地方の空気感になじませるうえで、バランスを考えた人物造形にしています。

――なるほど。ところで、ウルトラホールの先にある各ウルトラビーストの世界の描きかたも、とても印象的でした。どのようなコンセプトがあったのでしょうか。

杉中たとえば、あるウルトラビーストの世界である“ウルトラビルディング”には、“可能性の話”を盛り込んでいます。基本的に、“ポケモンは悪い存在ではない”ということを描いているのですが、プレイヤーの皆さんには、“なぜそうなったのか”が想像できるようにしてあります。我々としては、ひとつひとつのウルトラビーストの世界について、“1本の映画が作れるくらいしっかりした設定を盛り込みたい”という想いで制作にあたりました。

――ウルトラビーストの世界には、それぞれ壮大な設定があるわけですね。

杉中そうですね。明かしていない部分を含めて、かなり設定を作り込んだうえで、いちばんおもしろい部分を抽出してお見せしています。各世界のあちこちにヒントを隠してありますので、大いに想像を巡らせていただければと。

――そのあたり、プレイヤーはさまざまな憶測や想像で盛り上がっていますが、一応の“正解”はあるわけですね。

杉中開発側として考えていた物語はありますね。ただ、そこはひとつの正解があるというよりは、皆さんが思い描くそれぞれの考察が答えということでいいと僕は思っています。

――メインストーリー部分以外の細部のお話もお聞きしたいのですが、マンタインサーフやアローラフォトクラブ、ヌシールといった、本作での新要素を入れ込むうえで追加されたシナリオもありますよね。

杉中まさにそこは、アローラ地方の新しい魅力を提示するために入れ込んだ部分です。“アローラ地方にもともとある文化”として、『ポケモン サン・ムーン』でも冒険した舞台に登場させるわけなので、ストーリーの中で自然に遊んでいただけるように、かなり工夫しています。とくに、既出の登場人物たちとの絡ませかたは熟慮しまして、たとえばマンタインサーフでいうとナリヤ・オーキドがサーフィンしていたりと(笑)、納得感のある作りを心掛けました。

『ポケモン ウルトラサン・ウルトラムーン』あのエピソードの真意は? 開発者たちが明かす、ストーリー制作秘話【ネタバレ注意】_06