ヒーローばかりじゃ楽しくない! 脇役が輝いてこその『スマブラ』

――今回の新ファイターは、最初に“Nintendo Direct: E3 2018”で「あまり多くない」とおしゃっていたわりには……いっぱいいますね(笑)。
桜井そうでしたっけ?(笑) ダッシュファイターを含めず、オリジナルのみということになると、そんなに多くはないでしょう。
――いやいやいや!
桜井だってユーザーの皆さんは、容赦なく何十体出ると期待していたりしますからね。もちろん、我々は本当にがんばったとは思いますが。でも最初にフル登場というか、“全員参戦”ということを話してしまうと、そこに出るキャラクター1体ごとの価値は下がるんです。
 たとえば60体ぐらいいると、60体のなかの1体が増えてもじつはたいした影響力ではなかったりするんですよ。だからその“全員参戦”の見せかたというのは、すごく困ったことのひとつでもありました。そしてもうひとつは、もし次回作があったら「やることがなくなるかな」と(笑)。

『スマブラSP』ディレクター桜井政博氏にインタビュー!「全員参戦は本当に奇跡だと思います」_02

――新ファイターについて、設計のコンセプトなどを詳しく教えていただけますか?
桜井まずインクリングは、とにかくたいへんなのが“色を塗ること”で、そこにはいろいろな技術上の障壁があります。“インクで塗られる”という表現が全キャラクターおよび全ステージに必要で、そういう意味では波及効果がかなり高いといいますか、とくに手間がかかるキャラクターのひとりでした。
 「インクを塗った結果、何が起こるのか?」ということはもちろん、インクタンクもちゃんと補充しつつ戦うような部分もしっかり考えて、いまのような仕様にしています。なお企画段階から、インクリングは支援タイプで、チーム戦に強そうだなという予感はありました。
――“塗る役”として、チーム全体の与ダメージを底上げできる、と。そういう部分も『スプラトゥーン』らしいですね。
桜井つぎにリドリーについては、純粋に、「悪役を作ろう」というコンセプトです。たとえばクッパやキングクルールなどは、悪役とはいえどこかコミカルですけれど、リドリーはとにかく“純然と悪、怖いヤツ”という感じで作っています。だから参戦ムービーも、外見や必殺技の特徴も、全体的にシリアスなイメージですよね。
――確かに! いままでの『スマブラ』とは、異質な存在感を持つファイターですね。
桜井そしてシモンとリヒターは、『悪魔城ドラキュラ』をそのまま再現したイメージに近いのですが、ムチを使ったりなど、長いリーチがひとつの特徴になっていますね。強攻撃は、ファミコン版の『悪魔城ドラキュラ』に近いリーチで、スマッシュ攻撃はさらに遠くまで届きます。しかしそのぶん、必殺ワザを含めてスキを全体的にものすごく大きくしています。“遠くには当たるけど、うまく狙わないと当たらない”ということが、大きな特徴ですね。
――『悪魔城ドラキュラ』から選ばれたというのは、けっこう意外だったのですが、何か理由はあったのですか?
桜井前作の『スマブラfor』が終わったころのユーザー投票でも人気でしたし、それに何か新しいコンテンツを足そうとなったときに、そろそろ選択肢が少なくなってきておりまして……。
――ワールドワイドでみんなが知っている作品、となると、なかなか選択肢は限られますからね。
桜井ただ『悪魔城ドラキュラ』って、主人公をよく変えるんですよね(笑)。どちらかというとアルカードのほうが、わかる世代が多いのかもしれませんね。
――ファンとしては、「ベルモンド家ならよし」みたいな感じもあったり。
桜井あとのほうになると、もうベルモンド家とはぜんぜん関係ないですし(笑)。
――ゲーム性という面では、ムチを使って戦うファイターというのが新鮮ですよね。
桜井彼らは必殺技もシンプルですよね。いろいろと手の込んだ必殺技を作ろうとした中で、わりと純然と、ただ投げるというだけのものに特化したところもありますね。

『スマブラSP』ディレクター桜井政博氏にインタビュー!「全員参戦は本当に奇跡だと思います」_13

――『スーパードンキーコング』からは、ボスのキングクルールが参戦ですね。
桜井キングクルールは、飛び道具やカウンターを持っている重量級ファイターですが、こういう個性はほかにあまりいませんでしたね。特殊な処理として、お腹に“お腹アーマー”なるものを装備していまして、恒常的にお腹に対してスーパーアーマーがかかるんです。
 でもじつは、お腹にだんだんダメージがたまっていくとヒビが入っていく仕様になっていて、最後は割れて気絶しちゃいます。
――それは見てみたい! あとで試してみます(笑)。つぎに、しずえはいかがですか?
桜井しずえは、むらびとのカスタムのような感じで、むらびとを感じさせるけれどべつのキャラクター、ということで作っていて、ダッシュファイターではありません。ダッシュファイターはあくまで、体型や骨格がいっしょでないといけませんが、しずえとむらびとは、形状がぜんぜん違うんです。
 でも同じ『どうぶつの森』のキャラクターであることは感じさせたいので、拾ったりする動きはそのままの仕様で残しています。新しく入れたギミックの釣りざおなど、そのほかの要素も、むらびとを感じさせるもので補っていますね。あとは、かわいい(笑)。
――“しずえさん戦“のムービーは、世界中から大絶賛でしたね(笑)。
桜井しずえは、止まっているところもいいけれど、動いているところをよりかわいくすることに気を使いながら作りました。
――最後にガオガエンについてお願いします。
桜井ガオガエンは、言うまでもなく、プロレスですね。いままで、プロレスにすごく近い戦いかたをしているファイターはいても、プロレスワザそのものを使うファイターはいませんでした。
 今回は相手をロープに振るなど、純然にプロレスという視点で作っています。リベンジというワザなどでも、プロレスの競技性といいますか、相手のチョップをあえて受けてから反撃をするなどといった、パフォーマンス的な部分を強くアピールしていますね。
 じつは企画書上で決まっていなかったキャラクターは、このガオガエンだけ。『ポケットモンスター』シリーズの新作、『ポケットモンスター サン・ムーン』が出るということで、1枠だけ残しておいて、あとから決めました。
――そして早期購入特典では、まさかのパックンフラワー登場。これを予想できた人は、ほとんどいなかったと思います。
桜井「何かの主人公キャラじゃなくて、パックンフラワーなの!?」と思う方もいるかもしれませんが、ちょっと外したというか、主流ではないキャラクターたちもいないと、おもしろくないですよね。純然としたヒーローのような人ばかりが並んでいるのはイマイチだと思うんです。
 Mr.ゲーム&ウォッチやロボット、ダックハントといったあたりもそうですが、パックンフラワーにもパックンフラワーにしかできないことが、やっぱりあるんです。配信開始されたら、ぜひダウンロードして、楽しんでもらえればと思います。
――けっこうテクニカルなキャラクターになるのでしょうか?
桜井まあ、少なくとも一般的なキャラクターではないですね(笑)。独特の狙いが必要なキャラクターになるでしょう。

『スマブラSP』ディレクター桜井政博氏にインタビュー!「全員参戦は本当に奇跡だと思います」_03

衝撃の全滅スタート――“亜空の使者”から思っていたこと

――スピリッツやアドベンチャーモード“灯火の星”が生まれた経緯や意図については、週刊ファミ通コラムで詳しく説明していただきました(※)が、オープニングムービーの意味なども教えてください。人気キャラクターたちが、まさか全滅してしまうとは……!

※桜井氏の連載コラム「桜井政博のゲームについて思うこと」Vol.568(週刊ファミ通12月13日号掲載)。該当部分は抜粋して記事末で紹介する。

桜井話のきっかけといいますか、最初の発想のとっかかりとして、『スマブラX』の“亜空の使者”があります。終盤になるとキャラクターが全部失われる瞬間があるのですが、それにほぼ近い感じになっています。
 もともとわたしは、最初から大全滅のような感じになり、そこから取り戻す旅を続けていくという内容のほうがまっとうかなと思っていたりもしたんですね。それがある程度形を変えたものが、今回の“灯火の星”です。
――ムービーは、マルスの「ひとりで10体ぐらい倒せばいけるか?」というセリフなど、細かい部分も話題になりましたね。
桜井セリフや動きには、それぞれの個性が表れています。マルスは軍隊の指揮官だから、戦力の見積もりを取っているわけです。
 また、ゼルダ姫の「ここまできたらやるしかないでしょう」というセリフは、いままで長い戦いがあって、やっと最終決戦に至ったことを表現しています。だからこそムリがあってもやるしかないんだ、ということを話しているんですね。
――キャプテン・ファルコンは、クルマに乗ろうとしてやられてしまいました(笑)。
桜井考えてみれば、F-ZEROマシンがふつうに地上を走れるかといえば、そうではないかもしれませんけれどね。F-ZEROマシンには“G-ディフューザーシステム”があって、横のガードレールから反重力光線みたいなものが出ているから走れるわけですから。
――そうか、乗れても動けなかった可能性も!?
桜井ただ、決戦の地までは乗って来られたのでしょうし……『スマブラX』のデモでも、ふつうに平地を走っていますしね(笑)。

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