2022.10.29

【インタビュー】奥田瑛二が赤裸々に明かす…「天知茂さんの付き人だった俺の青春」

週刊現代 プロフィール

安保で大学も閉鎖、映画俳優の夢がよみがえった

上京後、まじめに部屋住みの書生奉公と大学生活を続けていましたが、70年安保で大学も閉鎖してしまい、胸の奥に隠していた映画俳優の夢がむくむくとよみがえってきました。

今がチャンスだ!と俳優座と文学座と民藝の間を駆けずり回りましたが、結果は全滅。俳優座は桐朋学園芸術短期大学という大学になっているし、文学座はその年の試験がすでに終了。民藝は隔年募集で今年は募集せず。

いきなり出鼻をくじかれて頭を抱えたとき、突然ひらめたのが高校3年のときに脳裏に刻んだ天知さんでした。僕は地元ネットワークを駆使してなんとか天知さんの自宅の住所を手に入れて、勇んで押しかけたのです。

玄関のチャイムを鳴らすと、奥さんがにこやかに出ていらした。僕は緊張しながら名前と母校の後輩であることを伝え、「天知さんの弟子にしてください」と最敬礼しました。「そうですか。 まあ、主人に報告だけはしておきますけど」と軽やかに言われておしまい。諦めずに次の日から毎日通って最敬礼して、毎日同じ返事で断られて。そしたら10日目に奥さんが笑いながら言ってくれました。

「あなたも本当にがんばるわね。パパにもあなたのことは話したから、事務所が六本木にありますから、そちらに行ってみたら?」

2年間通った天知の自宅リビングで 写真提供/奥田瑛二2年間通った天知の自宅リビングで 写真提供/奥田瑛二
 

その足で天知プロに向かい、待つこと1時間。廊下に現れた天知さんに「安藤豊明と申します!」と大きな声で自己紹介をしました。天知さんは、「おう、君か。かみさんから聞いているよ。これからテレビ朝日でリハーサルがあるんだけれど来るかい?」とさらっと言うのです。「はい!」と答えたその日から2年間、僕は天知さんの付き人として毎日行動を共にするようになりました。

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