日本において、過去のゲームの保管は、今のところ民間の取り組みが主となっていますが、これはゲーム先進国のアメリカでも同様のようです。つまり、公的機関としてのゲームの保存に関する取り組みは、ようやく始まったばかりの段階なのです。そのことは、アメリカ最大の図書館である、国会図書館も例外ではありません。
ここでは、2012年に収録された米国会図書館のゲーム担当者へのインタビューを要約してお見せしたいと思います。
要点は2つ。ひとつは、米国会図書館ですら、ゲームの保管は着手したばかりであり、いまだに試行錯誤を重ねている段階だということ。もうひとつは、同図書館に所蔵されているゲームは90年代以降の作品が中心で、それ以前のものはほとんどない、ということです。
(米国会図書館でゲーム収集を担当するデイビッド・ギブソン氏)
今のところ、米国会図書館にはゲームソフトが3000点(対応機種もまちまち)、ゲーム関連書籍(ガイド本など)が1500点収蔵されている。ゲームソフトは1990年代初めから2005年までのものが大半で、2006年からはメーカーから献呈されるようになった。ゲームの分類や保管、貸出しに関する方針は、現在ギブソン氏が所属する動画課(Moving Image section)で検討中。
ハードウェア(ゲーム機)については、今のところ所蔵していないが、近いうちに現行のゲーム機を買い入れる予定。旧世代のゲーム機についても寄付を歓迎している。
収蔵品の中でめずらしいものは、まずフィリップスのCD-I向けゲームがある。その多くがヨーロッパからの輸入品。また日本製のゲームもある。いずれもパッケージも含めて保管してある。
ゲーム関連本は、すべて国会図書館の目録に掲載されており、閲覧も可能。一方で、ゲームソフトについては製品情報を入力中で、いずれ動画課のデータベースから参照できる予定。
(ゲーム関連本は、新たに製本された状態で保管されている)
分類について、ゲームの場合は、現行の分類法では不十分なので、新たなものを検討している。また保管方法についても模索している状態だが、ひとまずゲームソフト本体(メディア、付属の印刷物)と外箱は別々にして保管している。これは外箱の汚損を防ぐための措置。
(外箱は折りたたまれて、別個に保存されている)
所蔵するゲームソフトの閲覧、利用については、いろいろと課題があるため、今のところは対応していないが、将来的にはもちろん外部の研究者にも利用できるようにしてゆきたい。
ゲームの保存は、これまで一般のゲーム愛好家が取り組んできたことであり、国会図書館のような公的機関が関わるのは奇妙に思われるかもしれないが、ゲーム文化をきちんと保存しておくことは重要だと考えている。今後もゲーム開発者やコレクターとも共同して、この取り組みを続けてゆきたい。
最後のところですが、ギブソン氏自身、ゲーム保存に関するパネルディスカッションに参加されるなど、積極的に外部と接触しては情報収集にあたっておられるようです。また、外部からの意見も歓迎するとのこと。(ギブソン氏のメールアドレスは元記事にあります)
それにしても、国会図書館が所蔵するゲームソフトは90年代以降のものがほとんど、というのは意外でした。もっとも、ゲームソフトを扱っていること自体、評価するべきかもしれませんが。
いずれにしても、ゲームの保存については、具体的なノウハウも含め、当分のあいだは民間の取り組みが中心ということになりそうです。
Yes, The Library of Congress Has Video Games: An Interview with David Gibson | The Signal: Digital Preservation