●宮本氏ができるだけ監修せず、新たな世代が生み出した『スプラトゥーン』

 続いて行われたのは、Nintendo of Europeが、Twitterで募集したユーザーの質問に答えるコーナー。宮本氏、手塚氏が、ユーザーの質問に直接答えるのは、なかなかない非常にレアなケースではないだろうか。なお、質問自体はフランス語だったため、翻訳などに怪しい部分があるが、宮本氏たちの回答は日本語だったため、そちらを重視してお読みいただきたい

・質問:『スーパーマリオ』シリーズの敵が亀になった経緯は?
宮本 僕らがゲームを、どんな遊びを作るか考えながら、キャラクターを作るんですね。『マリオブラザーズ』を作るときに、「下から叩いてひっくり返って困るやつは誰か?」と考えて、亀しかいないと。それで、『スーパーマリオ』のときには、亀は上から踏めないとおかしいよねという話になったんです。

手塚 亀を蹴っ飛ばしてそれを追いかけたとき、画面の外にある土管に当たって跳ね返ってきてやられちゃうんですよね。それを見て、「おもしろい」って言う人と、「ダメだ」って言う人がいて、意見が分かれたんです。でも、あれは採用してよかったですね。

宮本 それで、亀ならとことん亀でいこうという話になったんです。「飛んでいるやつは羽付ければええやん」という感じで。それで最後はでっかい亀が出てくるということで、クッパを作ったんですね。僕らがここにいるのは、亀のおかげですね。

・質問:ゲームを作る環境は、以前と現在とでどっちがいいですか?
手塚 いまよりずっとずっとチームがコンパクトで、制作の規模も小さくて、どんどん作っていけたんですね。いまはチームの人数も大きいし、豪華なものを作らないといけない。でも、そういうことでツールチームができて、『スーパーマリオメーカー』ができるきっかけができて、いまはいまですごくいいと思います。

宮本 昔は、5人か6人で半年で1本作っていましたからね。このころ、『スーパーマリオ』と『ゼルダの伝説』をいっしょに作っていて、どっちかに絞らないと仕上げられないということで、いったん『ゼルダ』をやめて、『スーパーマリオ』を作り終わったつぎの日から『ゼルダ』を作ったんです(笑)。けど、そのころはゲームデザインという仕事がはっきりなくて、こういうことがずっと自分の専門にできるかわからなかったんですよ。いまは、ゲームデザインという仕事がはっきりあるのはうれしいことですね。  

・質問:『スーパーマリオサンシャイン』の開発秘話
宮本 『スーパーマリオ64』の時点で、ポリゴンで大きな3D空間を自由に動き回るというゲームを作り始めたんですね。そのときいっしょにやっていた、『ゼルダの伝説』シリーズを作っていた小泉さん(小泉歓晃氏)というディレクターがいるんですけど、彼に「新しいことをやろう」と話して作ったのが『スーパーマリオサンシャイン』です。いま、彼とは『スーパーマリオギャラクシー』とか『スーパーマリオ 3Dワールド』とかをいっしょに作っているんですけどね。それで、ゲームキューブのときに、このゲーム機はすごい力があるぞと、水鉄砲でバーっと地面に水を撒くテストをしたんですよ。マリオに物を持たせていいのかと、マリオはグローブ以外装備していいのかと、みんなで話しながら作っていました。けど、偶然なんですけど、この水を撒くとか、いまみんなが遊んでくださっている『スプラトゥーン』につながっていて、本当に偶然で関係ないんですが、任天堂にそういう血が流れているのかなと思いました。

 そして、この『スプラトゥーン』の話題から、『スプラトゥーン』のディレクター・阪口翼氏が、“シオカラ節”をBGMにサプライズ出演。三度スタンディングオベーションの大歓声で迎えられるなか、『スプラトゥーン』のブキを彷彿させるカラーリングの水鉄砲を持ち、ステージ中央まで小走りに出てくると、水鉄砲で観客に霧状の水をまいていく。

任天堂・宮本茂氏が、フランスのファンを前に新作を語る! 手塚卓志氏、阪口翼氏もサプライズ出演した激レアイベントリポート!【JAPAN EXPO】_05
任天堂・宮本茂氏が、フランスのファンを前に新作を語る! 手塚卓志氏、阪口翼氏もサプライズ出演した激レアイベントリポート!【JAPAN EXPO】_06

阪口翼氏(以下、阪口) 今日は、JAPAN EXPOで『スプラトゥーン』のトーナメントが行われていて、その優勝者に賞品を持ってきました。ここで、フランス1のプレイヤーが決まるので、僕が直接対決しようと思います。もし、僕に勝てたらもっとすばらしいものをあげます(笑)。今日、地球でいちばん盛り上がっているのがJAPAN EXPOだと思うんですが、明日からスプラットフェスト(日本版のフェス)というふたつのチームに分かれて対決する、お祭りのようなイベントがあって、それもJAPAN EXPOに負けないくらい盛り上がると思います! 僕らはすごいお祭りが好きなので、こういう仕組みを入れました。だから、お祭り騒ぎであるJAPAN EXPOに参加したくて、こっそり宮本さんのスーツケースに隠れて来ました(笑)。

宮本 どうりで重いと(笑)。 

阪口 帰りはおみやげで埋まると思うので、泳いで帰ります! (司会からの「今回のフランスのフェスのお題“ロック派? ポップ派?”はどっち派なんですか?」という問いに)ああ、僕はロック派ですね。

宮本 僕、フォーク派です(笑)。

 フェスについてのやり取りを挟み、司会者から宮本氏、手塚氏から阪口氏への印象が聞かれる。

宮本 僕ら同じグループで同じ部屋で仕事をしているんですが、今回はできるだけ関わらないように任せていたんですね。それでこれだけ遊べるものが出てきたので、これから楽になるなと思います。

阪口 いやー、でも、宮本さんも手塚さんもあまり何も言わないんですが、僕らはすごいプレッシャーなんですよ。

 という、これからの任天堂を担う、宮本氏から後輩の開発者へ受け継がれる血を感じさせたところで、イベントは終了。『スプラトゥーン』のBGMが流れ出し、宮本氏、手塚氏、阪口氏の3人がステージ中央のせり出したところに向かうと、会場中のファンがそこへ集結。ライブハウスのような密集したエリアとなり、『スプラトゥーン』のBGMとともにものすごい盛り上がりを見せる。すると、阪口氏が持ってきた水鉄砲を、今度は宮本氏が持って、観客に向かって撃ち始め、観客はさらに大興奮。さらなる盛り上がりを見せる中、宮本氏、手塚氏、阪口氏は、手を振りながら退場し、イベントは幕を閉じたのだった。

任天堂・宮本茂氏が、フランスのファンを前に新作を語る! 手塚卓志氏、阪口翼氏もサプライズ出演した激レアイベントリポート!【JAPAN EXPO】_07
任天堂・宮本茂氏が、フランスのファンを前に新作を語る! 手塚卓志氏、阪口翼氏もサプライズ出演した激レアイベントリポート!【JAPAN EXPO】_08
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任天堂・宮本茂氏が、フランスのファンを前に新作を語る! 手塚卓志氏、阪口翼氏もサプライズ出演した激レアイベントリポート!【JAPAN EXPO】_10
任天堂・宮本茂氏が、フランスのファンを前に新作を語る! 手塚卓志氏、阪口翼氏もサプライズ出演した激レアイベントリポート!【JAPAN EXPO】_11

 新作の話に加え、サプライズの2名ものゲスト出演、宮本氏と手塚氏の関係、そして阪口氏ら、『スプラトゥーン』チームへの宮本氏の感想など、なかなか、日本のイベントなどでは見られない、海外ならではのレアな内容が盛りだくさんのイベントになっていた。こういったイベントを日本でもぜひやってほしいものだが、実現するかどうか。首を長くして待っていたい。

任天堂・宮本茂氏が、フランスのファンを前に新作を語る! 手塚卓志氏、阪口翼氏もサプライズ出演した激レアイベントリポート!【JAPAN EXPO】_12