あなたは、スピリチュアルを信じますか?……怪しげな雰囲気も漂いますが、占いやお守りは広く親しまれ、最近は「パワースポット」も人気です。シンクタンク出身のスピリチュアル・アナリスト、有元裕美子さんが市場分析のプロの目線で語る、「スピリチュアル・ビジネス」の最新事情と可能性とは。
ADVERTISEMENT
――「スピリチュアル・ビジネス」とは、どのようなものですか。
「私は『現代科学では説明のできない超越的な作用による、精神的満足を訴求するビジネス』と捉えています。狭義には『スピリチュアリティーに働きかける治療・セラピーなど』であり、広義では『スピリチュアルな要素を取り入れたビジネス』と考えます」
「ビジネスモデルとしてみると、占いや施術、鑑定、セミナー、物品販売などの『コンテンツ型』と、占いをおまけにつけたり、理論や内容を取り入れた特徴づけや話題づくりに利用したりする『コラボレーション型』に大別されます」
――市場の現状をどうみますか。
シンクタンク出身で、自身は「あまり占いを信じていない」という有元さんがマーケティング目線で分析する「スピリチュアル市場」の特徴や注意点、そして可能性とは。
「スピリチュアル・ビジネス…
- 【視点】
日本民俗学の祖である柳田國男が昭和21年に上梓した『先祖の話』という本があります。この中で柳田は、宗教の形骸化と商業化、及びそうやって空疎化した宗教の中に、ナショナリズムが入り込むことを警告しています。 東京大空襲の直後に刊行されたこの書物の序からは、普段の柳田の筆致とは異なる、切迫感を感じます。 下記、その柳田の切迫感を踏まえ、かつ人類学者の私が感じる「スピリチュアル」について記します。 人間は古来から、天や魂、精霊のようなはっきりとは形の掴めないものの中に、世界観や倫理、暮らしの知恵を凝縮させ生きていました。それは人々を拘束するものでもありますが、同時に「共に生きる」ことを可能にしていたものでもあるのです。 しかし科学が発展し、宗教の意味に価値を置かない人が増える中、よくわからないものに力を感じる人たちのことを「スピ系」などと言って揶揄したり、冷笑する風潮が生まれました。 なんでも科学で把握できるし、それこそが合理的だとする風潮の中には、人間の欺瞞を感じます。 他方で、このように「スピリチュアル」が市場価値として注目されることも、また違うのではないかと思うのです。柳田も先の本の中で、宗教が商業化されることへの警告を発していました。 また現行の「スピリチュアル」が、個人の幸せや成功といった形で個人の心の充足に強い光を当てていることにも危惧を覚えます。なぜなら「よくわからないものへの信仰」は、「個人」という身体に閉じた生命だけを救う目的で存在しているわけでもなければ、商売として成立させるために存在するわけでも(本来は)ないからです。 スピリチュアルの定義はかなり難しいですが、これを「よくわからないものへの信仰」という形で捉えるならば、それが本来どんな役割をしていたのかを、いくらかばかりでも知るべきではないでしょうか。 この領域に関心を持つ方は、道端にあるお地蔵さんや小さな祠、道祖神、二十三夜塔のような碑が、かつて、そして今、どのような役割を果たしていたのかを調べたり、考えたりしてみてはどうかと思います。
…続きを読む