「座ったまま長時間過ごすのは体に良くない」「コロナ禍の在宅勤務によって、座る時間が増えている」ということは直感的に理解できる。一方で「後でジムやランニングなどでたっぷり汗を流せば帳尻が合う」のではないのだろうか。京都府立医大の小山晃英(てるひで)講師(公衆衛生学)らは約6万人の調査から意外な結果を導き出した。
座っている時間が長いと、血の流れや代謝が悪くなって病気や死亡のリスクが高まることは海外の研究などで報告されていた。これまで日本人での大規模な調査がなかったことから、小山さんらは約6万人の成人男女の健康状態や生活習慣をアンケートなどで数年にわたり追跡調査しているデータを用いて、座っている時間の長さと死亡リスクの関係を調べた。
座っている時間が1日5時間未満だったグループと比べると、同7~9時間未満のグループは約1・2倍、同9時間以上では約1・5倍、死亡率が高かった。
全体では、1日に座っている時間が2時間長くなるごとに、死亡リスクは15%上がることが分かった。高血圧、脂質異常症、糖尿病のいずれかや、複数を抱えていると死亡リスクはさらに高くなった。
余暇の運動量が死亡リスクを下げるかどうかも調べた。すると、もっとも運動量が多いグループでも、下げられた死亡リスクはたった3%程度で、十分に抑えられないこともわかった。小山さんは「適度な運動自体は良いことだが、長時間座ることの悪影響は残ったままということです」と説明する。
さらに、新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、生活や経済の状態の変化を追跡する大阪国際がんセンターの田淵貴大(たかひろ)医師らによるインターネット調査の約1万人分のデータも小山さんらは解析。2020年4月からの緊急事態宣言中に在宅勤務を始めた人と、在宅勤務はしなかった人で、座っていた時間をそれぞれ、解除後の同6月と比べた。緊急事態宣言中に座っている時間が2時間以上延びた人の割合は、在宅勤務をした人の方が、在宅勤務しなかった人より2・14倍多かった。在宅勤務をすると、座る時間が長くなりがちなことを示す結果だ。
死亡リスク下げるには
死亡リスクを下げるためにど…