■テーマは「人間賛歌」

アークシステムワークス社の受付

ーーGUILTY GEARシリーズ全体のテーマは

石渡氏:
簡単に言ってしまうと人間賛歌なんですよね。「非常に不完全な状態が人間を人間たらしめている」という考えが根幹的にあるので。例えば今風に考えていくと、スマホを持つようなことが一般的になったりとか効率とか利便性みたいなものを優先していくことによって人間の人間らしい部分、失敗も含めて、罪も含めてそういった部分がどんどんなくなっていく。

その先にあるものって何なのっていったときに、非常にすごく、今まで人間と思ってきたものがもう人間でなくなる。コンピュータのような生物になってしまうと。そのうち自分で考える必要もなくなる。今だったら運転する必要もなくなるとか、そういうものがどんどん積み重なっていくと考える必要がなくなる。書く必要がなくなる。そういう未来に対して僕なりのアンチテーゼというか、もっとその人間であった方が楽しくないですかっていうところ。

じゃあどういうものが人間的なんですかって言ったときに、やはり不完全な要素っていうのが非常に出てくる。必ずみんな完全な人間ではなくて不完全な要素を持っているとか、あるいは誰かには受け入れられない要素を持っていて、そんな人たちがみんなヒーローであれば、より互いの立場を理解できるんじゃないのかなっていうような、そういう物語ですね。

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ーー最後にファンたちに向けて伝えたいことは

片野氏:
今の世間だとか、需要とかを考慮して何かを変えたというつもりはスタッフ一同ないということ、これは明言しておきたい。石渡が作っているテーマというのがあらかじめあるということを我々スタッフ全員が承知している上で、その上で先に進んで行っている。「クリエイターとしての信念を持ってゲームを作り続けている」ということを改めて言っておきたい。

石渡氏:
今回取材でピックアップされたのがブリジットということですが、GUILTY GEARのメインのストーリーに関しては人間賛歌的なところがあってその内の一端を担っているようなキャラクターでしかないので、他のキャラクターにも関心を持ってもらえたら、見ている人の何かに引っかかるものが発見できるかもしれないので、ぜひ遊んでいただければと思っています。

■取材後記

アニメやゲームが好きで学生の頃からブリジットのことを知っていたため、今回の再登場と、その一連の騒動について注視していました。

日本では性やジェンダーにまつわる話題に関して議論を避けがちですが、ゲームのキャラクターをきっかけに議論が起こることがとても日本らしくて、興味深いなと。

また、ブリジットの性自認について公式が発表するとは思っていなかったので、どのような意図で発表したのかとても気になり、今回はインタビューを依頼させていただきました。

センシティブな内容にも関わらず、インタビューを快く受けていただいた石渡さんと片野さんに感謝申し上げます。

インタビューの中でも度々出てきた、「多様性」「マイノリティ」「トランスジェンダー」といった言葉。新聞やテレビなどで見ると、どうしても説教くさく感じてしまうかもしれません。

ただ、今回のブリジットの例のように、親しみやすいゲームなどを通じて「そういった人たちがいる」と自然に知れることはとても意義があり、さらには現実のトランスジェンダーの方々への理解にもつながるのではないかと考えております。

最後に、本日(26日)はブリジットちゃんの誕生日です。
ブリジットちゃん、誕生日おめでとうございます!