「なんかオレ、彼女に悪いこと言ったかな?」
「重要な仕事を任せたのに、あの不満そうな顔はないだろう」
男性上司のみなさん。職場で女性陣の冷たい視線に凍えていらっしゃいませんか?
「私と仕事とどっちが大事なの?」
「あなたってまったく何も分かってくれないよね」
既婚者の旦那さま方。自宅でネクタイを外しながら、眉を釣り上げた奥様に困っていませんか?
僕は、美容業界を中心にアパレル業界、タレント業界で、年間200回を超えるセミナーや研修を行い、人材育成や職場の活性化のお手伝いをしてきました。関わってきた業界は、女性がたくさんがいる業界です。セミナーや研修を通じ「多くの企業が共通の悩みを抱えている」と強く感じることがあります。それは「良い人材を集めて組織を強くしたい」ということ。しかし、景気の先行きが不透明な中、新たな人材を採用して教育することは、社員に対する負荷もリスクも高い。となると、経営者や幹部の方々は、現在のメンバーのポテンシャルを最大限に活用して成果を上げていかなければなりません。では、今いるスタッフの戦力を底上げするために、何をすべきか?というと、それは「女性の力の底上げ」だと僕は考えます。そのためにも「男性と女性の違い」をまずはしっかりと理解しておくことが何よりも大事です。
今回のコラムはそんな男性と女性の違いにフォーカスしてみたいと思います。
目次
1.ホルモンが決める違いについて。人差し指と中指の長さを比べると?
男性と女性の身体は、紛れもなく違います。そして、感情も考え方も根本的に異なっているものです。「性差はあるといっても同じ人間じゃないか。それに男女を差別しないことが男女機会均等法じゃないのか?」と考えることは大きな間違いです。
女性ホルモンには、エストロゲンとプロゲステロンがあります。卵胞ホルモンとも呼ばれるエストロゲンは、丸みを帯びた女性らしい身体をつくり、卵胞の成熟や受精卵を受け入れて着床しやすくするなど、妊娠や出産のために分泌されるホルモンです。他にも肌や髪質を良くするなど、美容にも役に立ちます。プロゲステロンは黄体ホルモンとも呼ばれ、排卵直後から卵巣で作られ、受精卵が着床しやすいように妊娠を助けます。
一方、男性ホルモンのアンドロゲンは、男性らしい特徴を作り出します。このアンドロゲンは、テストステロンという男性ホルモンに変換されます。男女の違いを形成する過程で、妊娠の6〜24週目にかけて、女性の胎内でテストステロンが大量に分泌される時期があります。このときテストステロンのシャワーを大量に浴びた胎児は女性的な特徴を失い、男性になるといわれています。
テストステロンは、男性の生殖器の発達にも影響を与えます。そして、脳に働きかけて男性的な性質や特徴をもたらすといわれています。闘争本能、攻撃心、やる気、性欲などを高める作用があるそうです。
しかし、思春期に身体に変化が現われ、ホルモンの影響で女性は女性らしく、男性は男性らしくなるとはいえ、男性ホルモンのシャワーを浴びる前には性別は完全に分離されたものではありませんでした。したがって、女性でありながら男気のある方もいれば、男性でありながら女性らしさを備えている方もいます。
また、胎内にいた時にさらされた男性ホルモンの量によって、指の長さに変化が起こるとされています。男性ホルモンを多く浴びると薬指が長くなります。人差し指と薬指の長さを比べると男性は薬指の方が長く、女性の場合は薬指と人差し指の長さはだいたい同じくらいであることが多くの研究によって判明しています。
参照元:ナショナルジオグラフィックニュース 2011.9.8
▼掲載論文
Developmental basis of sexually dimorphic digit ratios( Zhengui Zheng and Martin J. Cohn 共著 2011.9.6)
ご自身の指を机の上に置いて眺めてみてください。男性なら、薬指が長くありませんか。女性の場合は、人差し指が長い人が多いのではないでしょうか。
2.脳梁の太さが決める「男性脳」「女性脳」
ホルモンの次は脳についてです。脳は右脳と左脳に分かれています。
右脳教育がブームになったことがありますが、一般的に右脳の働きは、直感力、音楽力、図形認識能力、空間を認識する能力、全体を把握して見渡す能力だといわれています。対して左脳の働きは、言語力、論理的に考える力、計算力、物事の分析力です。ざっくりとまとめると、右脳は「感じる領域」、左脳は「考える領域」です。右脳と左脳では次のようなことが、それぞれの脳の得意分野とされています。
右脳と左脳の違い
・右脳:感性、情緒、イメージ、音楽、空間、直感
・左脳:理性、論理、言語、理屈、平面、記号、科学
このふたつを脳梁(のうりょう)という神経束がつないでいます。脳梁は感覚的な右脳と論理的ない左脳をつなぐパイプのような存在です。この脳梁の形や大きさに、男女の差があるといわれています。
女性の脳梁は太くて短く、右脳と左脳の連携に優れ、左右の脳の情報交換がスムーズです。子育てに関しても、女性の脳は綿密にできていて、直感的に子どもの感情を読み取り、言語化できます。対して男性の脳梁は細いため、女性のように左右の脳がうまく連携せず、右脳と左脳の情報交換が遅くなります。その一方、男性の脳は左脳の方が大きいともいわれ、観察したものを分析して、ロジカルに考えをまとめることが得意だったりします。
このような脳の構造から、男性は左脳中心型で、左右どちらか片方ずつを使う傾向が強くなり、女性は両方の脳の情報交換が男性より円滑なため、ふたつを同時に活用する傾向があります。したがって、男性は論理的なことと、感情的なことを分離できます。一方で女性は、ふたつの脳が男性よりも強く結び付いているため、論理的に話そうとしても感情が入り込み、話にまとまりがなくなることがあるようです。これらの要素から考えて、男女に次のような性差があるとされます。
■男性は一点集中型。
一度にたくさんのことを同時進行で行うマルチタスクが苦手ですが、論理的に考え、判断をします。思考と感情が直結しにくい傾向があります。
■女性は多方面分散型。
一度にたくさんのことを処理できることが強みです。感情や情緒と理性や論理が、均等に同時に発揮される傾向があります。
3.男性と女性ではコミュニケーションの目的が違う
生物学的な考察の次は、コミュニケーションの面で男女の違いを探りましょう。
男性にとって、会話は「手段」です。自分の考えていることや、意思を相手に伝えるために言葉を使います。「言葉は道具」といっても良いでしょう。コミュニケーションのツールです。仕事では計画を伝え、相手が理解しているかどうか確認し、認識が間違っていれば正す問題解決のツールです。最終的に結果を出し、売上を出すためにあります。
ところが、女性にとって会話は「目的」です。解決方法はどうでも良いことであり、結果を求めていないことさえあります。ですから、女性から相談を持ちかけられた時、ただ話を聞いてあげるだけで相手の女性は満足することが多いのです。加えて感情を共有すれば「あ、分かってくれたんだ」と好感を持ってくれます。
つまり、男性にとっての会話は、主に目的を達成する手段であり、会話を通じて到達点に辿り着くことを重視します。自分の気持ちを整理し、議論のきっかけを作り、意見の相違を明らかにして、問題点や阻害となる条件をリストアップするなど、結果を出すことに意義があるのが男性にとっての会話になります。
ところが女性は話すことや会話の場にいること自体が喜びなのです。ただ話すだけの井戸端会議が分かりやすい例といえるでしょう。女性が会話に求めていることは、周りとのつながりや親密感を共有することです。それだけが目的といっても良いほどです。
そもそも女性は、脳の仕組みが会話型になっています。そして子どもの頃から、女の子どうしでおしゃべりをして育ってきたのです。そんな女性が仕事で一生懸命に話しているのに、「それで結論は何?」「さっぱり何を言いたいのか、分からない」などと切り捨てられたなら「そんなに私はダメなのかしら?」とへこむばかりか「この人は何も分かってくれない」「聞く耳を持っていない」と男性上司に対するマイナス感情が高まってしまう可能性もあります。
女性との信頼関係を築く第一のコツは「話を聞いてあげること」です。相談に応じるときも、男性は解決したいがためにすぐに答えを出してしまいがちです。話が長くなりそうだな、と感じた男性は、よく聞かないうちに女性の話を遮って「こうすればいいんだよ」と結論をアドバイスをしたくなります。しかし、それでは女性を欲求不満にするだけです。
正直なところ女性は「解決」を求めていません。悩みを「話したい」のです。会話で感情を「共有したい」のです。だから、「うんうん」「なるほどね」「それで?」「なるほどね〜」などと相槌を打ちながら、理解と共感を示すように話を聞いてあげること、そして、最後に問題点なり解決策を示していただければスムーズに事が運ぶでしょう。
男性は評価されたい生き物で、女性は理解されたい生き物なのです。このように男性と女性では全く別の生き物であると認識することはとても重要です。同じであるという勘違いが前提にあることで「不必要なトラブル」を引き起こしてしまう要因にもなりますし、相手が本来持っている能力を抑圧してしまう原因にもなってしまいます。まずは違いを知り、受け入れることから始めてみてください。