【10月20日 時事通信社】トラス英首相が、就任からわずか1カ月半で辞任表明に追い込まれた。就任後、満を持して発表した経済政策が市場の大混乱を招き、迷走した末の退場劇だった。

 つまずきの始まりは、クワーテング前財務相が発表した過去半世紀で最大規模の大型減税案。経済成長に焦点を当てた大胆な政策だったが、一段の物価高や財政悪化を懸念した投資家らが英国の通貨、株式、国債を一斉に売り浴びせる「トリプル安」を招いた。

 保守党の党首選でトラス氏が獲得した議員票は、対抗馬だったスナク元財務相を下回っており、もともと党内基盤は強固ではない。トラス氏は盟友のクワーテング氏を更迭し窮地を乗り切ろうとしたものの、市場の混乱や支持率急落に浮き足だった与党議員から次々と首相交代論が噴出した。

 クワーテング氏の後任となったハント財務相は17日、先に発表した経済政策の「ほぼ全て」を撤回。19日にはブレイバーマン内相が、トラス氏を暗に批判し辞任した。気が付けば政策も人心も失い、トラス氏に残された選択肢は自ら政権の幕を下ろすことだった。(c)時事通信社