HOME> インタビュー> カプコン開発陣が語る、『株トレーダー瞬』の魅力!
●『株トレーダー瞬』の魅力と、株の魅力を語る
株式投資を題材にするという、新しいアプローチのアドベンチャーゲーム『株トレーダー瞬』。本作では、主人公の青年が株の世界を舞台に成長していく物語が描かれていくので、主人公の成長とともに、プレイヤー自身も株について詳しくなれる作品となっているぞ。また、株トレードのシステムも斬新。トレードには、指定された条件をクリアーする"ソロトレード"、ライバルトレーダーと1対1でバトルを展開する"バーサストレード"などが用意されていて、よりゲーム的に株トレードを楽しむことができるのだ。
そんな本作について、週刊ファミ通11月10・17日合併号(2006年10月27日発売)では、プロデューサーである北林達也氏と、ディレクターの安藤行男氏にインタビューを敢行。その模様はファミ通.comで映像配信もしているが、さらに詳しいインタビューの内容をここで公開するぞ!
ディレクター |
プロデューサー |
――おふたりの本作での役割と、これまでの代表作をお聞かせください。
北林達也(以下、北林) プロデューサーという形で本作に関わらせていただいています。今回役割的には、全体のプロジェクトの進行とか管理のほうと、あとは口出しですね(笑)。
――(笑)。
北林 僕は株トレードを実際にやっているわけではなく、僕は素人代表のような形で。経済系のことは興味はあったんですが、実際に株トレードしていたわけではないので、そのあたりは口うるさい人という形で中身を見ながら、いろいろ話をさせてもらっているという感じですね。
安藤行男(以下、安藤) 僕のほうは、このゲームのディレクターをしています。担当箇所はシナリオ全般と、ゲームの基本的な部分を全部担当しています。いままでの代表作は、『新
鬼武者』のトータルバランスディレクターというよくわからない役割だったり(笑)。そのまえには『DEMENTO(デメント)』のメインプランナーや『ブレス オブ ファイア V ドラゴンクォーター』のシナリオ、あとはおもに『ブレス オブ ファイア』シリーズなどですね。北林とは『ブレス3』のときに、北林がメインプログラマーで、僕がプランナーという形でごいっしょさせていただきました。
北林 そうですね。僕は『ブレス オブ ファイア3』が終わってから、『バイオハザード0』などもプログラマーとして関わっています。その後はプロデューサーとして『ロックマンX』シリーズ、最近だと『イレギュラーハンターX』、『ロックマンロックマン』というところを担当していました。
――まず伺いたいのが、なぜ株を題材にしたのか、というところなんですけども。
安藤 最初にこの企画を出したのが、2005年の春ぐらい。自分はその時点で株取引をやって何年かしている状態でした。ちょうど『DEMENTO(デメント)』が終わったころだったので、オリジナルゲームを作りたいな、と思っていまして、これから作るオリジナルゲームだとどんなものがイケるかなって考えていたんです。自分的には2本イケそうだというのがあって、ひとつは太平洋戦争モノはどうかと。そしてもう1本が株モノ。実際そのころは本などでも株が特集されだしていたのでイケると思いました。この2本を上司なり、プロデューサーの方々なりに見てもらった結果、株のほうが、これから盛り上がっていくのではないか、という話になりまして、企画が進んでいったわけです。
――この企画を聞いたときに北林さんはどう思われました?
北林 すごいキャッチーだなって。株は、世間でこれだけ話題に上っていたり、株で何億円儲けたという人たちがいるにも関わらず、実際には取引をしたことがないという人がやっぱり多いと思うんですよね。そういう人たちにとって、「ちょっと株をやってみたいな」と思わせるようなものを作りたいなと思いました。もちろん自分もそういった方々と同じく株については詳しくなかったので、ともすれば自分がやってみたいなと思えるものを作ればいいのではないかと。
――いまのお話にもありましたけど、興味はあるけどやったことがないという人は多いと思うんです。それで思うのが、株を知らない人でもちゃんと遊べるのかなと。
安藤 その点に関しては、まったく知らなくても楽しめる作りにはなっています。株取引のチャート(※株価の推移をグラフ化したもの)を読むとか、エッセンスの部分を取り出してゲームにしていますので。株の基本的な部分を、ゲームの流れに合わせてどんどん覚えられるという作りになっているんです。だから、ゲーム全体が、ある意味株取引のチュートリアルみたいな感じでもあります。また、ゲームシステムに関しても最初はシンプルな取引しかできないんですけど、空売り(※証券会社から株を借りて売却し、その株が値下がりした時点で買い戻すことで利益を得る株式投資方法)もできるようになったり、トレーディングアーツ(※ゲーム中、各トレーダーが持つ特殊スキル)が増えたり、いろんな指標が増えたりしていきます。そうして要素が増えるに従って、より株らしく、ゲームとしてもおもしろくなっていくんです。
北林 正直、株というもの自体がゲームになっていると思うんですよね。
――なるほど。
北林 ただ、株取引というのは、株の値動きだけでは計り知れないところで動いていて、ほかにも世界の経済とか、いろんなところがリンクした形で株価の値動きというものができあがっているわけです。これをそのままゲームに落とし込むというのは、さすがに無理というか、同じものは絶対に作り出せない。ですから、ゲームとして"ここの部分はおもしろい"というところをクローズアップする形でゲームに落とし込んで、株のおもしろさの部分を楽しみながら遊べるようなものに仕上がっていると思います。
――ゲームの簡単な概要をお聞かせください。
安藤 基本的にアドベンチャーゲームという感じで話は進んでいきます。その合間合間にフリープレイという部分があって、フリープレイでは自由にトレードしたり、バーサストレードを行ったりすることができます。トレードをしたり、バーサストレードをしたりすることで、自分自身の"トレーダーランク"(トレードなどで得られる"トレーダーズポイント"を貯めることでアップする。経験値に対する称号のようなもの)が上がって、上がることでトレードで扱える銘柄数や上限金額が増えたりします。本物の株取引はお金が儲かるからうれしいですよね。でもこれはゲームなので、そのいちばんおもしろい部分が表現できないんですよ。だからどうやって新たなおもしろさを与えるか、と考えたときにRPG的なおもしろさとして、トレーダーランクのことが出てきたんです。
北林 トレードも期間が必ず決まっているんですよ。最大何ヵ月という形で。その期間のあいだにいっぱい儲ければ儲けるほど、経験値的なものがドカッと手に入るみたいなイメージですね。だから、ソロトレードは自分へのチャレンジ、バーサストレードは相手に打ち勝つという流れになっています。フリープレイの部分は、だいたいそのパートをクリアーするための目標みたいなものが用意されていて、"バーサストレードで5人に勝つ"みたいに。それをクリアーすることで、ドラマが進展していくということです。あと、ドラマでもあちこち場面が移ったり、新たなバーサストレードの敵が出てきて、親父との因縁など、いろんな要素が絡んできて、物語が盛り上がっていくという感じになっています。
――ストーリーはどのようなものに?
安藤 自分は株経験があるので、それをもとにしていたり、いろんな株に関わる事件などを実際にゲームにも盛り込んでいます。詳しくは言えないんですが、たとえば粉飾決算とか、仕手株系の事件とか。これなら初心者だけではなくて、株をやっている人でも、もとネタがわかったりして楽しめると思うんです。ですから自分としては初心者だけでなく、株をやっている中級者向けのソフトでもあるという気持ちです。株をわかっていて、過去の事件を知っているが故に楽しめるという要素もあるわけです。
――キャラクターがアニメ調な雰囲気ですが、これは狙ってこのようなイメージにされているのですか?
安藤 最初、何人かのデザイナーに絵を描いてもらって中には『ナニ●金融道』みたいなデザイン画もあったんですけれど(笑)。
北林 アメコミみたいなものもありましたしね(笑)。
安藤 その中で、いちばん受け入れられやすい絵柄だとか、キャラクター性を出すにはどうしたらいいか、ということを試行錯誤して現在のような絵柄になりました。
北林 今回のゲームは、ストーリーだったり、世界設定という部分をスゴく大切にしたいなと思っています。キャラクターのデザインにおいても、みんなが親しめるようなキャラクターであるということや、キャラクターを見るだけで、ストーリー性を感じさせるというようなキャラクターにしたいという意図があって、このようなデザインにしています。
――トレーディングアーツシステムについてお伺いしたいんですが、これはどうやって修得して、どのような技が用意されているのでしょうか?
安藤 まず、修得についてですが、いくつかはシナリオの進展に沿って手に入ります。中には、主人公にしか使えないトレーディングアーツというのもあります。それ以外は、トレーダーズショップというお店があって、トレードをするとトレーダーズポイントが手に入るんですが、これは経験値としてストックされるほかに、お金としても使えるんですよ。ですから、トレーダーズショップでは、トレーダーズポイントと引き換えでトレーディングアーツを買うという形になります。ゲームの進展に合わせてお店にあるトレーディングアーツも増えていくので、後半になると強力なものが買えるということですね。
――たとえばトレーディングアーツにはどんなものがあるんでしょうか?
安藤 では一例として"悪魔の見えざる手"と"神の見えざる手"というふたつのトレーディングアーツを紹介しましょう。このゲームには"抵抗線"というものが存在するんですよ。これは現実の株でもそうなんですけれども、10万円のところまで行くと、株価がなかなかそれ以上には上がってくれないんですよ。なぜかというと、10万円で売ろうという人が多いからなんですね。
北林 キリがいいから。
――なるほど。
安藤 現実の株でも、キリがいいところにはそういう抵抗線がありまして、"悪魔の見えざる手"というのは、任意の銘柄の、現在の株価より高い位置に抵抗線を作るというトレーディングアーツなんです。だからたとえば相手の持っている株に対して使うと、相手はそこから株が上がらないので、とんでもない目に会ってしまうと。逆に"神の見えざる手"というのは、現在の株価のちょっと低い位置に抵抗線を作ってくれるので、自分の持っている株が下がってきていて「これ以上、下がるな!」というときに使うと、跳ね返ってくれる"かも"というものなんです。
――"かも"なんですね(笑)。
北林 そういう形で相手を妨害したりとか、自分のチャートに作用させて有利に
"こと"を進めたりとか、いろいろな効果があるものになっています。
安藤 じつは"悪魔の見えざる手"は空売りをするときに使えば自分が有利になるんです。空売りというのは、株価が下がったほうが有利になるので。ですから、たいていのトレーディングアーツで、ふたつの使いかたができるわけですよ。値が下がったほうが儲かるなんていうところは、株ゲームだからできたおもしろさという感じですね。
――ゲームの難易度はどれぐらいを想定されていますか?
安藤 一応、プロデューサーのほうからは、「たいていの人がちゃんと最後までいけるものを」と言われています。
北林 実際の株だと負けてしまったりとか、損してしまったらつぎができないですけども、ゲームなんで、何度でも挑戦してぜひクリアーしてもらえればと思います(笑)。
――チャートが現実のものとは少し違いますね。
安藤 チャート自体は、1画面で見やすいようにアレンジしています。基本的に太さが出来高を表していまして、太いということは大勢の人が参加しているということなんです。だから太いほど、動きが激しくなります。上がるときは跳ね上がって下がるときは一気に落ちる、と。そういった株価の変動のしかたなどは、リアルに再現していますよ。あと、内部的に抵抗線というものを細かく設定しています。実際の株でトレードをしているのは人間ですよね。人は何で判断をしているのかというと、たとえばキリのいい数字で売りたいとか、前回上がったところと同じところまで株価が上がったら売ろうとか、ということなんですよ。そうすると、一度上がりきった株価の位置に抵抗線ができて、今度はそこまで上がってもそれより株価がなかなか上がらなくなるわけです。
――それを毎回内部で計算しているということですか?
北林 そうですね。そういうのを本当のチャートで、人が考えそうな動き、こう動くだろうというシミュレーションをしているようなシステムになっています。ですので、株をよく知っている人たちも「なるほどね」と思うようなタイミングで上がったりもするだろうし、逆に裏をかかれるようなこともあると思います。
安藤 実際の株のチャートでも法則があるような、ないような微妙なところなんですけども、これはゲームですので、実際の株にある法則のようなものをより強調して表現しています。だからよりわかりやすい動きをしていますね。その分誰でも儲けやすい作りになっていますよ。
――最後に読者の皆さんにひと言メッセージをお願いします。
北林 株というのは、興味があっても、実際にやるにはきっかけがなければ、なかなかできないものだと思います。このゲームはストーリーの部分から入っていけるゲームですので、瞬たちの活躍する物語を楽しむことによって、株や経済にも興味持ってもらえれば、という気持ちで作っています。ぜひとも、チェックしていただければと思います。
安藤 ゲームとしてとにかくおもしろくというのがまずひとつ。それと自分の命題として、実際の株取引にも役に立つようにしたいな、と思っています。そのふたつを両方追うのはすごい難しいことではあるんですけれども、単にゲームとしておもしろいだけでは、ユーザーさんに対して申し訳ないなという思いがありますので、おもしろくてかつ役に立つソフトになるようにがんばっています。よろしくお願いいたします。
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