RPGばかりを増やすわけにもいかない

――ミニファミコンのお話も含めてなのですが、そもそもタイトルの選定はどのように進められたのでしょうか?

西 基本的には販売実績やお客様の評価をベースにしていますが、そこにジャンルや発売元、ひとり用かふたりでプレイできるか、そういったことのバランスも見て、どういった組み合わせがいちばん喜んでいただけるかを考えて絞り込みました。

――ミニファミコンの30本、ミニスーファミの21本という本数は、もともと決まっていたのですか?

西 ミニファミコンは開発期間も短くて開発部分での制限があったのと、ミニファミコンの値段を考えたときに各ソフトの価値を毀損しないようにしないといけない。そのバランスを見て、30本という数に落ち着きました。

――そこから国内と海外でどの程度差をつけるか、というところを調整していったと。

西 そうです。ミニスーファミが21本になったのは、ソフト1本ごとの容量が増えていること、それに伴って開発の負担も大きくなること、そしてバーチャルコンソールでもそうですが、やはり『スーパーファミコン』のタイトルのほうが1本あたりの価値が大きいと私たちも考えていますので、そのバランスを見た結果ですね。

――ミニスーファミも国内と海外とでの収録タイトルの違いが反響を呼んでいます。たとえば、『MOTHER 2 ギーグの逆襲』はミニスーファミには収録されていませんが、こちらの選定理由についてお聞かせいただけますか?

西 単純に日本だから『MOTHER 2』が入らなかったというわけではないのですが、各ジャンルやIP(知的財産)、キャラクターのバランスがあって、『MOTHER 2』のほかにも収録したいRPGはいっぱいあったんですよね。また、今回はお子さんやお友だちといっしょに遊んでいただくということもコンセプトにあったんです。

――となると、基本的にひとりで遊ぶRPGの数をあまり増やすわけにもいかなかったわけですね。

西 そうです。そこで収録しているタイトルが変わってくるのは、やはり地域性を出すという意味もありますし。

――いろいろな制限がなければ、全部入れてしまいたいくらいですよね。

西 もちろんです。本当に可能であればすべて入れたいですね(笑)。ジャンルだけでもアクションにRPG、シミュレーションなどたくさんありますし、自分で選んでいってもだんだん偏ってしまいますから。たとえば『スーパーフォーメーションサッカー』なども、刺さる方には必ず刺さるタイトルですし、スポーツという貴重なジャンルでもありますから、そういうタイトルもしっかり入れておきたいなと。

清水 ミニファミコンやミニスーファミが「ゲームは楽しい」ということを再認識するきっかけになればいいのかな、と思っているんです。完璧に満足してくれたらそれはそれでいいのですが、「足りないな」と感じたら3DSのバーチャルコンソールで買ったり、スイッチで出たソフトを買ったり、そういう流れができたらいいなと。そういう意味で、これらの製品が完璧である必要はないと思います。

――実際に、初めてボタンで操作するゲームを触るきっかけになったという人もいるわけですしね。

清水 ですので、海外版に収録されている『MOTHER 2』や『カービィボウル』も入れて欲しいというのは私も言いたいんですけど、そこはいいじゃないかと。ゲームを盛り上げよう、と。そのきっかけのひとつになったらうれしいです。ここで初めてボタン操作のゲームに触れた人が、つぎはニンテンドー3DSやニンテンドースイッチに触れてくれたらうれしいなと。

――確かにその通りですね。国内と国外でタイトルを変えるということについては、何本は違うタイトルにして何本は同じものにしようという基準があったのでしょうか?

西 開発の負担もあるので、ある程度「ここまでにしてください」ということは開発側から言われていました。それを受けたうえで、海外の営業担当と調整を進めていきました。

――海外限定のタイトル選定は向こうに任せたんですね。

西 基本はそうですね。とくにアメリカと欧州では情勢が違ったりします。サッカーとアメフトの温度感の差などですね。そのあたりのバランスは米欧で調整していただきました。そこで問題があれば私が入っていきましょう、ということで。

――でも、本数の基準があるとはいえ、やっぱりなかなか絞れませんよね。

西 本当にそうですね。日本でもまとまりませんでしたから(笑)。

――こちらでもミニファミコンが発売したタイミングで読者にアンケートを取ったり、『ファミコン通信』でクリエイターの方に「1本だけ入れられるなら何を入れるか」といった質問をしましたが、見事にばらばらでしたからね(笑)。

西 やはり皆さんそれぞれ、思い入れがあるでしょうからね。

――最終的なラインアップの決定は西さんが構成なども考えて決定されたのでしょうか?

西 そうですね。バランスを取って決めました。たとえばですけど、私の100点というのはほかの方にとっては100点ではないのが当たり前で、誰にとっても100点というのは最初から目指さず、逆にいろいろな人にとってのボーダーラインを超えるのはどんな構成かという方向で考えました。

――確かに、収録されているタイトルを見ると、王道を押さえつつも幅が広いですよね。

西 偏りが出ないようにして、多くの方に「これは昔遊んだぞ!」と刺さるような構成を目指しました。単純な売り上げ順ではなく、「このタイトルとこのタイトルでは刺さる人が違うかもしれない。でも入れよう」といった風にも考えましたね。

――任天堂さんのタイトルだけでなく、サードパーティーさんのタイトルも入れるというのは、最初からそのような構成にする予定だったのでしょうか?

西 最初はいくつか案があって、任天堂発売だけのタイトルで“ニンテンドーコレクション”という形で出すことも候補として挙がってはいました。ただ、やはりこの時代を象徴するタイトルと考えたときに、やはりソフトメーカーさんのタイトルは必要不可欠だろうという結論に至りました。そこで各タイトルのメーカーさんのもとに行き、商品の説明をしてご協力いただけたものが、今回収録されているタイトルになります。

――各メーカーさんにお話を持っていったときの反応はいかがでしたでしょうか。

西 ご担当の方と最初にお話をしたとき、ここにあるモックを持っていったのですが、ご担当の方がファミコン世代ということもあって、見た瞬間にすごく感動していただけたんです。おかげでビジネスとはまた別の観点で、感情という意味ではすごく協力的にしていただけて、すごくありがたかったですね。

――やっぱり直撃世代からすると、こういう製品を作ってくれるだけでもうれしいですもんね。

西 弊社としても、ミニファミコンがまだ販売実績もなくて、どれくらいの価値があるかわかっていない段階でしたので、メーカーさんや流通さんにそうやって評価していただけたことは、予想外なのもあってうれしかったですね。

――「ファミコンがあったからこの業界に入った」という方も多いですからね。その復刻に協力できるなら喜んで、という部分はあると思います。

西 本当にそういったメーカーさんもいらして、逆に「このタイトルを入れてほしい」と言っていただけたりして、うれしい限りです。ただ、権利的な面で出したくても出せないタイトルもありますので、「なんでこれが入ってないんだ!」という声もあるとは思います。

――そこはさまざまな事情があるでしょうからね。

ミニスーファミ発売記念インタビュー(中篇) 『MOTHER2』が海外版のみに収録された理由は?_04