ミニディスクシステムも検討していた!
――ミニファミコンは品薄になるほどのヒットになりましたが、ミニスーファミの生産数はやはりミニファミコンよりも多くなっているのでしょうか?
西 ミニファミコンの初回出荷時よりも初回出荷台数は多い予定です。前回品薄になってしまったことも踏まえて、弊社もできる限りの準備はして、全力で需要に応えられるようにしていきます。
丸山 生産していただいている協力会社の方も、すごくがんばって準備してくれています。
――ミニスーファミは、現役で遊んでいた世代が多いですから、そういう意味ではミニファミコンよりもさらにアツいかもしれませんよね。
西 私もちょうどその世代なのですが、やはり20代後半から30代の人が今回のメイン層になるかと思います。それぐらいの方々は情報に対するアンテナも敏感だと思いますので、予約を開始したときにも注目していただけていることは実感できました。
――かなりの注目を浴びていますよね。ミニスーファミは10月5日の発売ですが、年末商戦まで余裕があるぶん、年末に遊びたいという声には応えられそうですか? 正直品切れになりそうではありますが。
西 なるべく先のことも見据えて、できる限りの数は用意する予定です。
――ちなみに、ミニスーファミ発売に併せてミニファミコンを再生産する予定はありますか?(編集部注:取材は2017年8月末に実施)
西 一時生産終了させていただいておりましたが、2018年に生産を再開することが決定いたしました。2017年はミニスーファミの数をしっかりと用意して、そこから先は市場の状況を踏まえて、できる限りの対応をしたいと思います。
――そもそもミニファミコンを作った段階でミニスーファミを作ることは想定されていたのでしょうか?
丸山 発売するかどうかはわかりませんでしたが、ミニファミコンに使っている技術を活かすことができる方向性を考えるとミニスーファミなども視野には入っていましたから、検討自体はほぼ同時に始めていましたし、エミュレーターの開発については同時に進められていたんです 。
清水 ミニファミコンがある程度できあがってきたらミニスーファミにすぐ取り掛かっていったというような流れですね。
丸山 喜んでいただけるかはわかりませんが、初期検討をしていたころの手作りモック(模型)を持ってきました。これは本当にオリジナルのファミコンの50%の寸法なんですね。それと同じ尺度で作ると、こんなに小さくなるんですよ。

――ファミコンはもともと小さいだけに、かなりコンパクトになりますね。
丸山 あと、今日持ってきたオリジナルのNESなんですが、じつはこれ僕の私物なんですよ。

――ずいぶん保存状態がいいですね。
丸山 僕が入社したころに本社が移転したのですが、そのときにいろいろな過去のサンプルが処分されることになったんです。その処分品の中にあったNESを譲ってもらい、とっておいてあったんですよ。綺麗なサンプルが手元にあったおかげで、商品化もはかどりました(笑)。
――写真でなく実物を見ながら製作を進められるのは大きいですね。モックではNESクラシックのコントローラーコネクタがUSBコネクタになっていますが、これも当初予定されていたのでしょうか?
丸山 すでに世にあるものを流用して使おうと検討していたときの名残ですね。けっきょく、規格や安全の面でなかなか折り合いがつかなくて採用を見送りました。
――何を使うかで動作確認などの作業が一気に増えてしまいますもんね。
丸山 そうなんです。そこでいろいろと探したところ、Wiiリモコンで採用していたコネクタが使えることがわかって、部品メーカーさんに再生産していただきました。過去に採用されていたコネクタだったので、おかげでいろいろな評価やテストがぐっと楽になりました。
――NESクラシックのコントローラーがオリジナルサイズなのに対し、ミニファミコンではオリジナルより小ぶりになっていますが、この違いはどのように生まれたのでしょうか?
丸山 ミニファミコンの開発段階では、本体に付いているコントローラーは飾りにして、それとは別にコネクタで本体に接続するコントローラーを用意しようかという構想もあったんです。でも、それだとただの飾りになってしまい、シンプルな商品にしたいという方針と相反すると思ったんですよ。
清水 その場合飾りのコントローラーと操作に使うコントローラーの両方を作ることにもなって、生産面でも使用面でも効率が悪くなってしまいますしね。
丸山 ですので、ちょっと挑戦ではあるけれど、サイズを抑えつつも十分に遊べるコントローラーを作ろう、ということにしたんです。
清水 コントローラーの違いで言えば、そもそもNESにはオリジナルからマイクが付いていないんです。なのでファミコン版の『ゼルダの伝説』ではマイク入力が弱点になっていた敵も、NES版では弓矢で倒すように仕様変更していたりするんですよね。
――もともと開発していたNESクラシックにマイクがないのだから、ミニファミコンもマイクなしでいこう、と。
清水 そうです。NESクラシックに準じた形ですね。ハードの開発といっしょにソフトの開発も進んでいましたので、ソフト側からもハードの開発を支援できないかと考えるんですよ。まず必要な機能と必要ない機能を考えようということで、最初に「リセットボタンは何に使ってた?」ということをみんなに聞いたんですね。
西 そうしたら「カセットが接触不良を起こしたときにリセットをかける」ぐらいだったんですよ(笑)。
清水 ミニファミコンでは当然接触不良はありませんから、だったらリセットボタンは遊ぶソフトを切り替えるのに使えるんじゃないか、という話になったんですね。
丸山 最初はイジェクトレバーを奥に動かしてソフトを切り替えたいな、という話も出てしていましたが、NESとファミコンの共通する機能で考えると、電源とリセットボタンというふたつがアクセスしやすいだろう、と。
清水 ですから、リセットボタンを押したらメニューに戻って、もう一度同じゲームを選べばリセットと同じ動作になるということでいいんじゃないかと、ソフト側から提案させてもらったんですね。
丸山 僕としてはイジェクトレバーの動作を実現したかったのですけど、ちょっと複雑にもなりますし、そのぶんコストも上がりますからね。
――「カセットのイジェクトレバーを動かしたい」、「カセットカバーを開けたい」という声はユーザーから挙がっていましたが、手軽さを考えると、いまの形がいいのかなとも思えますよね。
清水 お客様にとってもコスト面でメリットがありますし、量産を考えた場合にもメリットがありましたから。そこはシンプルにしていこう、となりましたね。
――ちなみに、ミニファミコンの流れでディスクシステムを出すことは検討されていなかったんですか?
西 検討はされていましたね。
――編集部でも「ディスクシステムがあればもうひとつ商品ができるのに」とか考えていたんですよ。
清水 ただ、アメリカではディスクシステムが発売されていないんです。それに、作るとするとミニファミコンには最初『ゼルダの伝説』や『メトロイド』などが入っていない状態になるじゃないですか。その場合、商品としての魅力はどうなのか、という話もありまして。
西 完全に新しいものとして生み出すことになるので、NESクラシックからの流れを考えると、うまく組み合わなかったんですよね。
清水 ただ、最初はディスクシステムを引き出しのようにしてカセットを入れたりしたらおもしろいねという話はしていたのですが、遊びとしてはおもしろいけど、最終的に多分ゴミになるよね、と(笑)。
――インテリアとして欲しいというのは希望としてあったんですよね。『ファミコン通信』を作ったときにペーパークラフト風のディスクシステムを付けたりして(笑)。
西 やっぱり置きたいんだなぁ、というのは感じました。
――でも、確かに海外事情を考えると難しいですね。逆に「これが日本のファミコン文化にあったディスクシステムです!」と海外に出してもおもしろそうですが。
清水 ミニファミコンにはディスクシステム版のソフトを何本か入れていますよね。あれを社内のデモンストレーションで見せたら、みんな大受けするんですよ、ディスクのデモ画面が出たときに。「そこまで入れるのか」とか「悪ノリだ」とか言われて(笑)。
――あれはすごくいい演出でした。
清水 ロード画面にしても、時間を短くはしているんですけど、きちんと確保はしました。今回は中断ポイントでセーブができるので、最初のロードをクリアーしてしまえばその後は中断ポイントを使えば問題ないですからね。そういう意味でも、当時を思い出すという意味でも、あれはやってよかったと思います。(中篇に続く)