アメリカの会社で働くオランダ在住の会社員が、リモート勤務中にウェブカメラをつけるのを拒否したということでクビになりました。これついてオランダ裁判所は、7万5000ユーロの慰謝料を同社に請求しました。もしあなたがウェブカメラをつけることで自分のプライバシーが侵害されたと感じたとき、オランダ裁判所はあなたの味方かもしれません。
クビになってしまった経緯
今月の頭にNLタイムズが報じた裁判報告書によると、オランダ裁判所はアメリカ資本の会社Chetuに7万5000ユーロ(約1100万円)の慰謝料を請求しました。これは「リモートワーク中の同社の従業員が、勤務時間中ウェブカメラをつけっぱなしにすることを拒否したから、会社をクビにした」という同社の判断が不当だとするものでした。
裁判所の報告書によると、経緯は以下のような感じです。
リモートワークを1年半オランダで続けていた従業員は、研修を受けることを命令され、その勤務時間中、彼は常にウェブカメラをオンにして、PCの画面共有をすることを命令されました。けれど彼は常にカメラをオンにすることを断りました。「9時間もカメラによって監視され続けるのは不愉快、プライバシーの侵害だ。PCの画面共有をしているので、私が何をしているかはわかっているはずだ」と言って断ったのです。
悲しいかなその数日後、彼は「労働拒否」及び「業務命令違反」として会社をクビになってしまいました。
プライバシー権に反すると訴え、認められた
同従業員は今回の解雇理由が正当だと感じておらず、それはオランダ裁判所も同じだったようです。「カメラを常時オンにする、という指示は従業員のプライバシーの尊重や権利に反するものだ」としました。
最初の訴訟提起でChetuは、ウェブカメラを使ってモニタリングするということは、従業員が実際にオフィスに来て働いていることを確認することと何も変わらないと主張しましたが、特に裁判官の意見を変えることはできませんでした。同社はフロリダに本社があるとはいえ、今回の裁判の進行には参加しませんでした。米GizmodoもChetuにコメントを求めましたが、すぐに返答はありませんでした。同裁判所の判決は、2017年の欧州人権裁判所で発表された規定に基づくものでした。「職場におけるビデオでの従業員の観察は、それが内密であったとしても、プライバシーの侵害を疑う必要がある。欧州人権保障第8条『すべての者は、その私的および家族生活、住居ならびに通信の尊重を受ける権利を有する。』が適応される。どのような侵害においても、第8条に基づく判断を行なう」(ヨーロッパ人権裁判所 ヨーロッパにおける人権および 基本的自由の保護のための条約 p.6)としました。
裁判所は、解雇した従業員に失業補償、支払われるはずだった給料、有給分の給与、そして訴訟費用の支払いをするように同社に要求したのです。こうしてオランダ在住の彼は裁判に勝利、大金を手にするするわけですが、残念ながらアメリカに住むリモートワーカーが同じような訴訟をもし起こしたとしても、「働くのは正義」「利益のために」という空気をもつフロリダでは全く違った結果になったはずです。
フロリダでは法的に不当な扱いを受けた場合でなければ、どのような理由でもクビになる可能性があるということです。