〈社説〉教団と政策協定 「影響せず」となぜ言える
旧統一教会と自民党議員のつながりの深さを示す事実が、新たに見つかった。
選挙運動で教団の協力を得た議員が、事実上の「政策協定」に当たる文書を取り交わしていた。
教団側は全国で数十人に署名を求めていたという。少なくとも4人の議員側が署名を認めた。
岸田文雄首相は国会で野党の追及に対し、政策への影響は「ないと確信している」と強調した。
なぜそう言い切れるのか。根拠を示していない。団体などが実現してほしい政策を政治家に伝えるのが政策協定である。署名した議員がいる以上、一定の配慮はあったと受け止めるべきだろう。
自民党が所属議員に求めた教団との接点に関する自己点検の結果では、政策協定の存在は明らかになっていなかった。実態を詳しく調べ直す必要がある。
点検などで判明した各議員と教団との接点の多くは、会合への出席やあいさつといった表面的な内容だ。政策協定となると問題の次元が違う。どんな団体か知らずうっかり接点ができてしまった、といった釈明は通用しまい。
霊感商法や高額献金で信者らの家庭崩壊を招いてきた教団だ。政治家との結び付きの強さが教団のアピールに利用され、被害を助長させた可能性がある。
協定の文書は「推薦確認書」と題するもので、教団の関連団体が出していた。憲法改正、同性婚合法化への慎重な対応、共産主義への対抗―などの項目が並ぶ。自民党が掲げている政策との共通点が多い。教団側は組織として取り組んできたことを認めている。
同じ考えの政治家と政策協定を結び、選挙で支援すること自体に問題はない。宗教団体の政治活動は憲法上も保障されている。
だが、それが反社会的な活動をしている団体で、意向が政策にも反映されていたとすれば、政治家は批判を免れない。
選挙を巡っては、死亡した安倍晋三元首相が教団関連の票を差配していたとの指摘がある。同じ派閥の領袖(りょうしゅう)だった細田博之衆院議長は状況を知る立場にあったのではないか。説明責任がある。
2015年に統一教会から「世界平和統一家庭連合」に名称変更した際、当時の下村博文・文部科学相が影響を及ぼしたとの疑念も未解明だ。事実なら「正体隠し」に政治が関与したことになる。
自民党は教団との「関係を断つ」と強調している。未解明の問題を放置したままでは清算できない。そう覚悟すべきだ。