●役割とともに遊びが変わる3すくみのブキ

——ブキの種類について、教えてください。
野上 大きく分けると、 ショット、ローラー、チャージショットの3タイプです。いちばんベーシックなのは、ショットです。塗るという行為と敵を倒すことをバランスよくできますので。
天野 共通しているのはインクが塗れる武器ということで、もっとも異なるのはインクの届く距離。状況に合わせて得意不得意があるようにしています。距離といっしょに操作感も変えていて、そこでもバリエーションをつけています。
阪口 3タイプにはそれぞれバリエーションがあって、たとえば“筆”はローラーの1バリエーションですね。
天野 プレイヤーに長く遊んでもらうために、いろいろな状況を作りたいというのが根幹にあって。「このステージでこういうブキがあれば、こんなことが起こるんじゃないか?」と、考えながら増やしていきました。
阪口 基本的にはヒトがジャンプできる距離、イカで飛べる距離、ショットの距離の3つを基準にしてチューンアップしています。そこから、性能を偏らせたブキを作っていくことで、長く遊べるように調整しました。
天野 みんなが同じブキだけで戦う場合、平等ではありますが、腕の差だけになってしまいます。そこで、近距離に強い、オールマイティーだけど特定の状況ではどちらにも弱い、遠距離から援護ができる、といった具合にジャンケンのような関係を作りました。
阪口 仲間が個性の違うブキを持っていても、塗るインクの色はチームでひとつなので、塗った状況はチーム全員に共有されるようになっています。
野上 限られた要素を自分なりに考えてクリエイティブに遊んでもらうために、毛色の違うブキを用意しているんです。ステージの地形を把握する喜びや、持っているブキや置かれている状況によって遊びが変化する新鮮さを楽しんでほしいですね。
阪口 いちばん短いプレイサイクルは、“銃を撃って、インクをピチャッと塗るのが気持ちいい”という部分だと思います。 そこから少し進むと、ただ攻めるだけではダメだという戦略的な部分が楽しめるはずなんですね。そして、その先の長いプレイサイクルを考えたときに、カスタマイズ要素は必要だと考えて、ブキ以外にも“ギア”と呼ばれる装備を用意しました。アタマ、フク、クツの3種類があって、移動や攻撃力の補正といった付加効果はありますが、あえて一長一短の能力にしてバランスを取っています。

——見た目と能力がカスタマイズできるわけですね。たとえば、足が速くなる、攻撃力が上がるといった能力があるのでしょうか?
阪口 はい。そういうイメージのカスタマイズです。
——なるほど。ギアはお金で買うのでしょうか?
野上 そうです。ただ、お金が貯まるのは対戦モードだけで、ヒーローモードでは貯まらないようにしています。ずっとひとりで遊んでいた人が、初めて挑んだ対戦でいきなり強い装備が使えるのもバランスがおかしくなりますし。
阪口 対戦終了時に表示されるポイントが、レーティング用の経験値とお金に換算されます。ですので、対戦でポイントを貯めて、アイテムを買ってカスタマイズを楽しみ、また対戦に挑むというサイクルになります。
——その対戦用のステージの数は?
天野 大量のステージを用意するというよりも、先ほどお話したように、同じステージでも装備を変えたら遊びが変化するという部分を意識しながら、ステージを作り込んでいます。
野上 床を塗って戦うというゲームの性質上、ステージに意味のない部分はまったくありません。隅々まで神経を使って、最初はこのあたりが激戦区になる、そこから裏をかくとこうなるといった具合に、さまざまな展開が起こるように考えて作っています。
——ちなみに、ブキはメイン、サブ、スペシャルといった区別がありますよね?
野上 はい。メインがショットなどのもの、サブがボム系のもの、スペシャルがゲージが溜まると一定時間使える強力なものですね。その3つはセットになっていて組み替えることはできません。ブキ屋で購入する際も、3つセットになっています。
阪口 たとえば、メインA、サブA、スペシャルAというセットや、メインB、サブB、スペシャルBというセットがあるとして、選べるセットの中には、ショットA、サブウェポンB、スペシャルAというように、その中の装備がかぶることはあります。
天野 自由に選びたい人もいると思うのですが、自分が選んだ武器にメリットとデメリットがないとジャンケンにはならないので。
阪口 オンラインマルチでブキが選びたい放題になると、強力なブキを選べる人が幸せになる半面、どこかの誰かが不幸になってしまうんですよね。
野上 対戦ゲームなので、そういった仕様はゼロサムゲーム(ゲーム参加者の得と損の和がゼロになり、誰かが得をするぶん、誰かが同じように損をするという理論)になってしまって。このゲームは、敵を倒すのが得意な人も、インクを塗るのが得意な人も、みんなが幸せを分け合うゲームを目指していて、システム的にはフェアにして、腕前で差がつく部分はレーティングで平等になるようにしたいと思っているんです。
天野 「あんな装備使って!」とユーザーさんどうしが憎み合うよりは、「なんで自由に組み合わせを選べないんだよ」と、僕らに怒ってもらうほうが健全かなと(苦笑)。目指しているのは、ユーザーさんがステージに合わせて、ブキと装備を悩みながら選んでいくものですので。
阪口 各ブキセットには得意不得意なものがあるので、そういったメリットデメリットを補完するためのカスタマイズとしてギアを使ってほしいですね。
——苦手なところを補ったり、得意なところを伸ばしたり。
阪口 そうですね。どういう風に選ぶかは、人によって違うと思います。
——公開されている映像には、ヒトの姿をしたタコ軍団もいましたよね。
野上 ヒーローモードで登場するキャラクターですね。
阪口 あれは、タコの中でも特殊な能力を持っている敵です。ちなみに、プレイヤーをタコにしてもよかったんですよ。墨を吐きますし。でも、イカだと、マップ上にアイコンで配置したときに、頭が尖っているので矢印代わりになるんですよね。タコだと丸くて方向がわからない(笑)。
——なるほど(笑)。ちなみに、本作の舞台は、イカとタコが争っている世界なんでしょうか?
野上 いや、基本はイカが幸せに暮らしている世界です。その裏で、タコと争っている地下世界もあるらしい……という感じです。イカのおじいちゃんがいるんですが、彼に「エネルギー源をタコに奪われたので、それを奪い返して来い」と言われて戦いに行くんですね。
——そこに、ショップにいるような、いろいろな海洋生物がいると。
野上 登場人物も基本的に海洋生物です。ひとり調理済みですが(笑)。
天野 新規IPなので、そのへんはフレキシブルにいきたいなと。どこまでいけるか確かめながら風呂敷をどんどん広げているところですね(笑)。
——音楽も特徴がありますよね。 ロックやスカなど、いろいろなジャンルがあって、あまり任天堂らしくない印象がありました。
野上 設定としては、ナワバリバトルに参加している14歳くらいのイカの若者たちを中心に流行っている音楽なんです。イカ世界でヒットした曲を、携帯型音楽プレーヤーで聴きながら戦っているというイメージです。
阪口 ステージで流れる曲は毎回変わっていて、イカの若者たちが好きな音楽をランダムシャッフルで聴きながら戦っているということなんです(笑)。ですので、毎回違った雰囲気で遊べるのではないかと思います。多くの楽曲は『ゼルダの伝説』や『スーパーマリオ』でも音楽を担当していた峰岸(峰岸透氏。 本プロジェクトでも音楽を担当)が作曲しています。でも、最初は天野が作った曲を入れていたんですよ。
天野 えー、それ言うの恥ずかしくない?(笑)。僕が、もともと音楽が好きで、最初に井上(井上精太氏。本作でアートディレクターを担当)や阪口と、はっちゃけた感じのパンクなゲームにしたいと話していて、そのころはサウンド担当がまだいなかったので、僕がギターで作った曲を入れたりしていたんです。そのころの名残りもあって、ギターサウンドのイメージが強く残っているんだと思います。
阪口 このインタビュー読んだら、めっちゃカッコいいんじゃない? ディレクターもできて、作曲もできるって、スーパークリエイターに見える(笑)。
野上 (笑)。僕も含め、スタッフ自身がそういった音楽が好きだというのもありますが、いままでの任天堂のシリーズ作とは違うイメージの絵作りをしているので、それに見合った音楽にしたいという想いもあって、少し毛色が違ったものになっています。
阪口 峰岸に「くねくねした感じにしてほしい!」と、 かなり漠然としたムチャクチャな要求をしていましたね(笑)。
天野 サウンドチームのあいだでは、「『スプラトゥーン』のチームは、やたらと音楽に注文をしてくる!」と言われていたみたいです(笑)。
野上 峰岸は『どうぶつの森』でとてもたくさんの曲を作っているので、今回もいろいろなジャンルで作ってくれています。
阪口 あと、残り1分になったら曲が変わったりして、3分間の遊びの中で、どういった音楽をかけたら盛り上がるかということも心掛けていますね。たとえば、インクのペチャペチャという音と音楽が干渉しないようにしていたりと、ビデオゲームの音楽としてどうあるべきか考えていますので、曲のジャンルとしては任天堂らしくないイメージがあると思いますが、ゲームと音楽の関係としては、いつもの任天堂らしいものにしていると思います。
——あと、気になるのが『スプラトゥーン』というタイトルの意味ですが。
野上 ピシャッという音を表す“Splat(スプラット)”と、 小隊を意味する“Platoon(プラトゥーン)”を足した造語です。ビシャビシャチームという感じですね(笑)。
——『スプラトゥーン』というタイトルは、世界共通ですよね?
野上 そうですね。E3でイカ型のチャームをノベルティで配ったんですが、E3の後に、そのノベルティをつけてゲームショップ巡りをしていたら、お店で現地の子どもに「スプラトゥーン!」って言われたんです。英語がわからなくても、“スプラトゥーン”と言っているのはわかったので、そういう風に、世界で“スプラトゥーン”と言えばこのゲームと認識してもらえるようにしたいと思います。
阪口 インターネットで検索したときに最初は0件でしたが、増やしていって、将来的に“任天堂”、“イカ”で検索すると、最初に出てくるようにしたいですね。
野上 “目指せ、ゲッソー超え”です(笑)。
——ゲッソーは、身内ながら手強い敵ですね(笑)。いまE3のお話がありました、E3で発表された当時の反響はいかがでしたか?
野上 自分たちでは、“この方向で正しい”と思って作ってはいたのですが、まだ世に出ていないものでしたから、どういう反応が来るかわからなかったんです。そんな中で、“E3で目立つ”というのが僕たちの目標ではあったのですが、E3で発表した途端に、自分たちの予想以上に反響があって。しかも、好意的な意見をいただけたので、大きな手応えがありました。
——突然の発表でしたので、衝撃的でした。E3では試遊もありましたが、うまい人のプレイは見ているだけでも楽しそうですね。
阪口 うまい人だけでなく、どんな人のプレイも見ているだけでおもしろいんですよ。インクが塗られたマップを見るだけでも、どこでどんなことがあったかがわかりますし。
——発売日が5月と発表されましたが、いまは最終的な追い込みの時期でしょうか?
野上 そうですね。現在は最後の磨き上げをしているところで、世界同時発売を予定しています。
阪口 発売直後はだいぶ混沌とした状況が見られると思います。セオリーも確立されていないでしょうから、すごく楽しみですね。
野上 長く遊んでもらうために、発売後のフォローや施策なども考えていますので、発売まで、期待してお待ちいただきたいですね。
——任天堂のタイトルとしては、発売月を発表するのはちょっと早く感じますね。
野上 新規IPなので、皆さんに親しみを持ってもらおうと思っていて。それでちょっと早めに発表をして、Twitter(『スプラトゥーン』のTwitterアカウントは→コチラ)などもやっています。徐々にファンアートを描いてくださる方も増えたりと、少しずつ広がっている実感はありますので、発売までもっと広げていきたいですね。
週刊ファミ通で『スプラトゥーン』イラストコーナー始動!
多くのファッションアイテムが登場する本作。そこで、週刊ファミ通では、読者の皆さんが考えたイカファッションのイラストを募集します! イカス作品は、今後週刊ファミ通の『スプラトゥーン』記事内でご紹介。募集する部位はアタマ、フク、クツの3種類。すべてをコーディネートした作品はもちろん、シャツのロゴだけでもオーケー。下の高橋きの先生のイラストを参考にしてみてね。掲載された方には1000ガバスを進呈。下記のあて先まで、はがきに住所、氏名、ペンネーム、イラストを書いて送ってください! なお、詳細は、週刊ファミ通2015年3月5日増刊号(2015年2月19日発売)に掲載。『スプラトゥーン』のオリジナル4コママンガなども連載しているので、こちらもご確認ください!
■アタマ
キャップやニット帽などのアタマに装備するもの。ゴーグルやヘルメットなんかもアタマ装備になるので、いろいろ考えてみて!
■フク
シャツやパーカーなどのフク。前と背面のデザインがあるとうれしいですが、TシャツにプリントするイカらしいロゴだけでもOK!
■クツ
クツに当てはまるのは、スニーカーやブーツなど。そのほか、足に似合うものなら、なんでもアリです。オシャレアイテム求む!
■イラストのあて先はこちら
〒104-8441 エンターブレイン 週刊ファミ通 イカスポ係
Splatoon(スプラトゥーン)
メーカー | 任天堂 |
---|---|
対応機種 | Wii UWii U |
発売日 | 2015年5月 |
価格 | 価格未定 |
ジャンル | アクション |