●オープンエアーで変化するストーリー展開

――新たに公開された動画(3rdトレーラー)では、以前よりも強いストーリー要素が見られましたが、今回の『ゼルダ』では、ストーリーはどのように進んでいくのでしょうか?
藤林 そこがひとつのミソです。広大にフィールドを冒険する“オープンエアー”のゲームで重厚なシナリオを作るというのは相性が悪いんですよね。当然、その要素は開発の初期段階から懸案事項でした。でも、その問題を打開すべく、我々『ゼルダ』スタッフなりのシステムの答えがありまして、今回はそのための独特なシステムを用いました。いまはまだお話できませんが、それも楽しみのひとつになっています。ゲームが始まってすぐの序盤をプレイしていただければ、おのずとその楽しみかたも見えてくるようになっていますので、ストーリー要素を“オープンエアー”でどう料理しているのか、楽しみに待っていただきたいと思います。

自由な行動と受け止めるフィールドが生む“掛け算の遊び”。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』開発者インタビュー【Nintendo Switchインタビュー特集】_09
自由な行動と受け止めるフィールドが生む“掛け算の遊び”。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』開発者インタビュー【Nintendo Switchインタビュー特集】_10

――それは楽しみです! 一方、いわゆる“クエスト”などの、短い目的を果たしていくものもありますか?
藤林 私たちは“チャレンジ”と呼んでいますが、そのチャレンジもたくさん散りばめられています。ゲームの本筋を遊びたいけれど、あまりにもオープンすぎて何をしたらいいのかわからなくなるかというと、そうではなく、きちんとゲームの本筋を明示するようになっていますので、初心者の方や、『ブレス オブ ザ ワイルド』のストーリーをまず楽しみたいという方は、なんとなく示唆される場所に素直に従っていただくと、本筋のストーリーを味わっていただけますし、目玉にしているチャレンジも見ていただけるようになっています。

――以前おうかがいしたお話では、ゲームを開始してすぐに、最後のボス、いわゆる“ラスボス”に向かうこともできなくはないとのことでしたが……。
藤林 はい。まずは今回体験していただいている台地から降りないとダメですが、その後すぐにボスに向かえます。この仕組みは、最初のうちから「どうせなら、いきなり行けるようにしよう!」と、ゲームの仕組みを考える前から決めていました。最初からボスのところに行けるというのも、見直した“当たり前”のひとつです。

――映像を見ていると、村もあるようですが、買い物もできるのでしょうか?
藤林 村も存在しますし、買い物の要素も、これまでに配信している3つのPV(プロモーション映像)の中に、ところどころ情報が入っています。海外で配信されている動画も含めて、たくさんの情報を出していますので、そういった映像も見ていただいて、発売前にいろいろ想像していただければうれしいです。

――確かに映像を見ていると、「いまのはあのキャラクターだな」とか「ああいうことができそうだな」と想像が広がりますよね。
藤林 ええ。基本的には想像していただいていることはできるはずですので、実際にプレイしていただいて、「やっぱり俺が思った通りだった」と答え合わせをしていただくのも、今回の『ゼルダ』の楽しみかただと思っています。

――では、それを踏まえて改めてPVを見直すと、何か発見があるかもしれませんね。
藤林 はい。ぜひ、細かく見てみてください。

自由な行動と受け止めるフィールドが生む“掛け算の遊び”。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』開発者インタビュー【Nintendo Switchインタビュー特集】_11
自由な行動と受け止めるフィールドが生む“掛け算の遊び”。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』開発者インタビュー【Nintendo Switchインタビュー特集】_12

――今回は、着替えられる服のバリエーションが豊富なようですが、防御力や暑さ、寒さへの対策など、着るものによって効果が異なるという考えていいのでしょうか?
藤林 映像では鎧などもありますが、どういう効果があるのか、いろいろ想像していただけるといいですね。ただ、服に関しては、そんなにひねくれたことはしていませんので、だいたい想像通りだと思います(笑)。

――(笑)。体験会のステージで行われた青木瑠璃子さんの体験プレイでは、リンクが裸で飛び出していましたね。
藤林 はい。ステージでも言いましたが、裸のままでもクリアーはできますよ。

――とはいえ、雪山に行くと寒くてダメージを食らうということがあったんですが、裸で雪山に行っても工夫次第で何とかなると?
藤林 先ほど山に登る方法について、回り道をするか、あいだで休みながら登るかといった話をしましたが、寒さを耐えるのに原始人はいったいどうしていたでしょうか? ……と言ってパッと思いつくのは焚き火を起こすというのがあるでしょうし、服を着るということもあるでしょうし、たいまつだってある。たいまつがあれば火を持ち歩けますが、それを持っているあいだは武器が使えませんよね。じゃあどういう進めかたをすればいいのか……というのがゲームの根本になっているわけです。序盤で体験していただいた掛け算が、スケールを広げつつ、最後までいろいろな掛け算を生んでいく。これが、掛け算の遊びのひとつですね。

――なるほど。同じく青木瑠璃子さんのプレイでは、敵のボコブリンがイノシシを狩ろうと追いかける場面が見られました。あの世界の中で、いわゆる生態系ができているのでしょうか?
藤林 先ほど街もあると言いましたが、本作には人間がいるんですね。そして、魔物がいて、さらに第三の勢力と言いますか、生態系のひとつとして動物がいます。プレイヤーが動物たちに襲われる場合もありますし、自分が襲う場合もあって、青木瑠璃子さんのプレイでもあったように、魔物が動物を襲っていることもあったりと、彼らの生活の一部などが見られるようになっています。ですから、こっそり覗いてみると、彼らは勝手にいろいろなことをしていたりと、それを眺めるだけでも楽しいですよ。

――魔物とイノシシが戦っている横から倒したりと、横取りのようなこともできるわけですね。
藤林 はい。ほかにも、彼らの武器を取り上げるとちゃんと怒ったりしますし。

自由な行動と受け止めるフィールドが生む“掛け算の遊び”。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』開発者インタビュー【Nintendo Switchインタビュー特集】_13
自由な行動と受け止めるフィールドが生む“掛け算の遊び”。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』開発者インタビュー【Nintendo Switchインタビュー特集】_14

――いろいろな反応が見られる、と。魔物と言えば、草原を歩いているときに、岩が合体するボスのような敵に出会ったのですが、ああいうボスのような敵も世界中に点在しているのでしょうか?
藤林 ふつうに存在しているものもいれば、擬態しているものもいるので、どのように登場するのかもそれぞれ異なります。ただ、どのタイミングで出会うかはプレイヤーによって異なる可能性が高いですね。

――ああ、では、目的とは関係なくそういう敵と出会ったりする。
藤林 はい。突然出会ったりすることもあります(笑)。

――それは怖い(笑)。ちなみに、今回はストーリーとして“100年前”という単語が出てきますが、やはり100年前にあった何かが重要なポイントになるのでしょうか?
藤林 ストーリーに関わる、キーワードですね。

――『ゼルダの伝説 時のオカリナ』に登場したシーカー族や、彼らのマークも出ていますね。
藤林 シーカー族も同じくキーワードになっていますね。継承されたマークがいろいろなところに使われている部分もシナリオに絡むところで、“100年前”も含めて、今回公開させていただいたPVの中の情報は、いろいろと重要な要素になっています。

――今回のPVは、初めて顔が明かされたゼルダが、白い衣装だけでなくリンクと同じような青い服を着ているシーンもありましたし、ゴロン族やゾーラ族、リト族のようなキャラクターもいたりと、シリーズを知っているファンなら、いろいろ気になるものが満載でした。
藤林 ありがとうございます。ゼルダも着ていたあの青い衣装などは、いろいろと意味がありますし、登場した様々な種族は、フィールド上に溶け込んでこの世界にいる人たちなのですが、敵か味方か……というところも含めて、いろいろと想像をして楽しみにしていてください。

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――敵か味方か! 戦っているシーンもありますしね。いろいろと想像したいと思います。なお、本作はWii U版とNintendo Switch版がありますが、機種による違いはあるのでしょうか?
藤林 Nintendo Switch版のほうが画質がいいなど、ハード自体のスペックに関わるところは違いますが、ゲームとしての体験は同じです。ですので、どちらか迷われている方がいらっしゃいましたら、遊びたいハードに合わせて選んでいただいて大丈夫です。

――なるほど。Wii U版でも、Wii U GamePadを使った特別な要素などはないということでしょうか。
藤林 今回は2機種同時発売で、同じ体験ができるようにしていますので、Wii U GamePadならではの使いかたはしていません。

――では、グラフィックの違いがちょっとあるというくらいの差なんですね。
藤林 あと、Nintendo Switchは、データ的にもいい音質のものを使っていますので、Wii U版と比べるとNintendo Switch版は、音がよくなっています。とくにヘッドホンで聴く音の臨場感がいいです。もし、Nintendo Switch版を買おうかなと思われているお客さんがいらっしゃいましたら、ぜひヘッドホンを着けてプレイしていただくとより楽しめると思います。また、これだけのゲームを外に持ち出して遊べるということもNintendo Switch版ならではですので、ぜひ外出先でもプレイしていただきたいですね。

――今回のサウンドは、ピアノの音が印象的ですね。フィールドでは、自然の環境音が流れるようになっていて。
藤林 “オープンエアー”のゲームにふさわしいBGMはどういうものかと考え、没入感を重視して作っていった結果が今回のBGMになっています。ふだんは環境音ですが、ここぞというときには気分を盛り上げるようなBGMに変わりますし、フィールド上にいろいろな仕掛けがあって、その何かが見つかる瞬間であったりというのを音楽で表現しています。そこも楽しんでいただけると、仕掛けた甲斐がありますね。

――昨年のE3でamiibo対応が発表されましたが、今回新しく、ゼルダやボコブリンのamiiboの発売が発表されましたね。『ゼルダの伝説』30周年のamiiboへの対応など、多くのamiiboに対応しているようですが、それぞれ異なる効果があるのでしょうか?
藤林 あります。もちろん、amiiboがなくても遊べるんですが、より楽しく冒険していただけるような効果が用意されています。今後、詳細を発表していきますので、楽しみにしてください。

――同じく昨年のE3で発表された今回のタイトルロゴですが、『時のオカリナ』以前の、初期『ゼルダの伝説』シリーズのロゴに戻りましたね。これは、原点回帰というイメージなのでしょうか?
藤林 今回のロゴについて、主要スタッフと話し合いをする中で、いつものアルファベットから、シリーズ初期の日本語の書体に変えたいという話をしていたんです。このロゴに戻すということが、まさに“原点回帰”であり、“『ゼルダ』の当たり前を見直す”ということの、象徴的な事象、掲げる旗としてのイメージを込めて作りました。

――確かに、このロゴを見たときは、「おおっ!」と思いました。
藤林 いままで『ゼルダ』を遊んだことのない方だったり、自分には合わないと思われている方に「違うんですよ! 取っつきやすいゲームになっているよ!」というイメージで、多くの方に遊んでいただけるようにアピールしていきたいです。

――では最後に、発売を楽しみにしているファンにメッセージをお願いします。
藤林 『ゼルダの伝説』シリーズでありながら、新機軸の要素を数多く実装しています。たとえば、リンクのおなじみのアクションなんだけど、それがいままでと異なるフィールド上で使った場合に、これまでと違った遊びに展開していく。今回は、マニアックなパズルを解く思考ではなく、ふだんの生活で「自分ならこうするよね」というものを自分で考えて、プレイヤーが10人いれば10通りの遊びが実現するようになりました。回答が何個もありますし、自分なりの遊びかたというものを見つけて、私はこういう方法でクリアーした、と掘り下げていただくプレイができる『ゼルダ』になっています。ですので、いままでにない遊びを生む掛け算や、見直された新機軸の遊びを楽しんでいただけたらうれしいです。

――ありがとうございました!


 ついに発売を迎える『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』。広大な世界でどんなことができるのか、とにかく早く思う存分プレイをしてみたいものだ。週刊ファミ通2017年2月16日号(2017年2月2日発売)で掲載中の、Nintendo Switch6号連続特集の第2回では、Nintendo Switchの期待作『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』&『ARMS』の最新情報をお届け。ぜひチェックしていただきたい。

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