シトー会 西宮の聖母修道院(4)『カロリンクッキー』『ガレット』

兵庫県西宮市、山の中にひっそりと佇む、トラピスト会女子修道院。村野藤吾設計の礼拝堂で有名ですね。
苦楽園育ちのクボタの話では、鷲林寺近くのこの辺りの子供は昔はずっと南の夙川小学校まで通っていて、“山の子”と呼ばれていたのだとか。今では開発が進み、間に3校も小学校が増設されていて、すっかり様変わりの世の中です。
が、この世間から隔絶された世界だけは昔の価値観を保たれているようです。木々が生い茂る木蔭の道を歩いて行くと、心が洗われるような気分に。そして、おとないをしてお菓子を購入するのがなんだかゆかしくて、大切にしたいなぁと思うのです。
とはいえ、今回は余りの暑さに負けて、購入は阪急・夙川駅近くの酒屋さんにて。


●『カロリンクッキー』  3.5×3.5cm 厚み0.5cm 1枚5gほど。
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四角四面の黒糖入りのクッキー。卵白が入るので軽くサクサクとした食感。
ところどころ、ほんの少し黒糖の粒がカラメリゼされていて、やや繊細なカリッとした食感が心地いい。ふっとシナモンと黒糖の香りが広がって、そこがまた魅力です。たしかに黒糖メインのお菓子なのですが、よくある黒糖の駄菓子のような剥き出しの黒糖ではなく、シナモンに覆われた奥床しい甘みとコク。この抑制を利かせたところに惹かれるのです。
ちょっと他では出会ったことのない風合いで面白いし、クセになるなぁ。こういう地味に美味しいお菓子が黙々と作りつづけられていることに頭が下がります。
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成分表に香料、香辛料と書かれていたので電話でお訊ねしたところ、「シナモンです。私どもではあまりいろいろ入れないんですよ」とのこと。まだほかにも入っているように感じるのですが、黒糖と香りが混じっているからかもしれません。
ちなみに菓名の“カロリン”についても訊いてみましたが、「さあ、よく分かりませんね。深い意味はないと思いますが」とのおっとりしたお答えでした。私たちもミクロネシアのカロリン諸島くらいしか思いつかず、昔、ここの黒糖が使われていたのかなあなどと想いを巡らせていますが…。
目を細めてニコニコと1枚ずつそっと口へ運べば、うーん、頭で食べずに、素直に美味しいねぇといただくのが、どうやら正しいようなそんな気がしてくるのです。


●『ガレット』  径6cm 厚み1.6cm 30gほど。
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以前にも登場していますので、ごく簡単にご紹介しましょう。なにせガレットブルトンヌを見たら、素通りできない質でして。
定法通り、小麦粉、砂糖、卵黄、バター、塩、BPのみ。サクサクホロホロの小気味のいい食感に、粉とバターと卵黄の豊かな香り。中は、奇麗な黄色です。
ラム酒を入れるレシピも多いですが、入っていないあっさり加減がより滋味深く感じられますね。
ストレートの冷たいダージリンティーと合わせてみました。午后の心落ち着くひとときです。

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世俗を捨てるというのは大きな決断でしょうし、それを迫られるだけの重荷を背負われていたのでしょう(勝手な想像です)が、電話でお聞きする声は、現状をすべて受け入れた一点の曇りもない晴れやかさで、人を受け入れる優しさに溢れていました。
お菓子作りも少しの迷いもなく余計なことはしない。欲を捨てたところに生まれる美味しさに満ちているのでした。

●『カロリンクッキー(19枚入)』380円 『ガレット(3個入)』400円  (※外税)
●「(宗)シトー会西宮の聖母修道院」
 兵庫県西宮市鷲林寺町3-46  TEL0798-71-8111