今回取り上げた2つの例でおわかりいただけたかと思いますが、まずは「コストありき」なのです。
私が食品開発の現役時代は、たとえば「200ccを200円で売る」などと先に決めて、それに合わせて作っていました。コストを念頭に置きながら、上記の要領で材料を「より安いもの」に「置き換えて」いくのです。
コスト優先で「より安いもの」にしたことで味が物足りなくなったり、風味がなくなったりしても構いません、それを補うのが「添加物やエキス類」の力なのです。
もちろん、すべての「鍋の素」がこのようなコスト最優先で作られているとはいいません。それにコストだって大事です。コスト度外視で作ったら、値段が高くなって売れませんから。
しかし「食品開発のプロ」「添加物のプロ」を自認する私が、売り場に並んでいる「鍋の素」の原材料を見れば、「どんなコスト意識で作られたものか」がすぐわかります。
みなさんはコスト最優先の「置き換え」で作られた「鍋の素」を、それでも平気で買うでしょうか?
「鍋の素」がなくても「絶品鍋」は簡単に作れる!
もちろん私は「鍋の素」を買ってはいけないと言っているのではありません。忙しいとか、味のバリエーションを増やしたいとか、それなりの理由があるときは使ってもいいと思います。
ただ、私が言いたいのは「鍋をするときは『鍋の素』を使うのが当たり前」というのは思い込みにすぎないということです。
「鍋の素」を買わなくても、家にある調味料で十分、おいしい鍋ができます。
『安部ごはん』では、私が開発した「魔法の調味料」のひとつ「かえし(しょうゆと砂糖を合わせて寝かせたもの)」と「和だし」、それに酒で具材をサッと煮るだけで作れる「野菜たっぷり節約鍋」を紹介しています。「かえし」と「和だし」だけ用意しておけば、10分で簡単に作れます。
具材はお好みの野菜や豆腐を中心に何でもいいのですが、野菜だけでなく鶏肉を入れると、鶏肉から出るだしで、さらに旨味がアップして、おすすめです。
キムチ鍋の場合は、「和だし」に、豚肉と鶏肉を両方使ってください。これで中華風・韓国風のだしになります。それと、もちろん本物のキムチを入れてください。キムチ鍋本来の「乳酸発酵のおいしさ」が楽しめるからです。
どうも「鍋の素」を使う人の多くは、お鍋を「素材の旨味」ではなく「つゆ」で食べる傾向にあるように思います。でも本来、鍋料理は「つゆ」だけではなく、「素材の旨味」を楽しみ、食べるもの。
「絶品鍋」は自宅で簡単にできるので、みなさんもぜひ「体も心も温まるおいしい鍋料理」で、この寒さを乗り切ってくださいね。