苦戦挽回は不透明=ウクライナ占領地に戒厳令―プーチン氏
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【10月20日 時事通信社】ロシアのプーチン大統領が20日付で、ウクライナ侵攻・占領を経て「併合」した東・南部4州に戒厳令を発動した。ウクライナ軍の南部ヘルソン州の州都奪還を阻止すべく強制措置に踏み切った形。24日で侵攻8カ月となるのを前に新たなカードを切ったが、苦戦を挽回できるかは不透明だ。
「特に南部ヘルソン、ザポロジエ両州は破壊工作員やスパイだらけ。夜間外出禁止令が出されれば、あぶり出しが容易になる」。2014年に併合された南部クリミア半島選出のロシア上院議員が、政府系紙イズベスチヤに解説した。
ロシア軍は侵攻での死傷者・行方不明者が「9万人以上」(独立系メディア)と伝えられる。占領地の部隊は、前方では米国がウクライナに供与した高機動ロケット砲システム「HIMARS」の攻撃に、後方ではウクライナのパルチザンの破壊工作に悩まされているとみられ、強硬な政治家はプーチン氏に戒厳令を提案していた。
発動への契機は、侵攻を統括する総司令官の任命。スロビキン上級大将は、メディアで「ハルマゲドン(最終戦争)」の異名を取り、チェチェン紛争に従軍し、シリア軍事介入の総司令官も務めた。いずれの戦争も「焦土作戦」が試みられたことから、ウクライナでの再現を懸念する声もある。戒厳令が発表された19日、ヘルソン州で住民の強制移住が始まり、総攻撃の予兆として警戒されている。
侵攻の建前は「特別軍事作戦」のままだ。しかし、最大100万人と疑われる動員令が9月21日に出され、今回も4州の戒厳令だけでなくウクライナ国境近くやモスクワでの治安強化が可能になった。事実上の戦争状態に近づいている。
戒厳令は軍に権限を握らせるもので、ロシア軍が占領政策を実施する現状を既成事実化しようとしているにすぎない。ウクライナのポドリャク大統領府顧問は「わが国にとっては何も変わらない。(占領地から)解放し続ける」とツイッターに投稿し、反転攻勢を弱めることはないとロシアに警告した。(c)時事通信社