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この作品「ミラルビ短編まとめ 1」は「ミラルビ」「百合」等のタグがつけられた作品です。
ミラルビ短編まとめ 1/さくらの小説

ミラルビ短編まとめ 1

8,840文字18分

Twitterの方で書いてたミラルビの短編数本です。
未来捏造や史実を匂わせる話など有。割と色々自由に書いてます。

Twitter → @922_13kk

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2022年10月2日 20:41
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絵空事を願う


「あの方の、自分を厭わない優しさを私は心より尊敬しているのです」

あの方、といいながら彼女が見つめる窓の向こう側には、自分の想像通りの子がいた。彼女はまた誰かのために身を費やしては、それが本望だと心から思ってるかのように穏やかに微笑む。

「責務を全うする為に己を研磨する私と同じように、あの方にはあの方の信念があります。同室である私はそれを日々実感しておりますし、あの方のその信念はとても美しいと思います」

ただ、と。ルビーは零した。それは淡々と卒なく言葉を綴る彼女にしては珍しく、ほんの少しだけ弱々しい口調だった。

「……あの青色の瞳に映るのがもし私だけなら、と。空想してしまうのです」

彼女の表情はいつも通り乱れのないものではあるけれど、零す言葉がほんのり震えているような気がした。感情の起伏がわかりにくく、何を思っているのか分かりづらい彼女から、罪悪感の色をした感情が薄らと滲んでいる。その感情は悪などではないはずなのに、己を律していたい彼女は、まるで罪を懺悔するみたいに声帯を震わせ続ける。

「あるわけない事は十分承知しております。……ただ、もしもあの優しさが私だけに向けられたのなら、私があの人のなにかになれたら。……私はきっと、」

きっと、の先を彼女は何も言わなかった。それを言ってしまえば彼女を保たせている薄氷は跡形もなく粉々になってしまうだろうことは痛いくらいにわかりきっていて。だからこそ自分も、その先を無闇に追求しなかった。

窓の向こう側、自分たちの視線の先にいる彼女が笑っている。ルビーでは無い誰かに優しさを向けながら。

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