島根県警が13日、県内の警察署に勤務する男性巡査長(26)が自宅で大麻を所持していたとして大麻取締法違反(所持)の疑いで松江地検に書類送検し、懲戒免職にしたと発表した。逃走の恐れがないなどの理由で逮捕はしておらず、プライバシー保護を理由に氏名や勤務先の警察署は公表していない。 (古瀬弘治)
書類送検容疑は9月23日、県内の自宅で微量の大麻を所持した疑い。県警監察課によると、同日の家宅捜索で大麻を押収。巡査長も所持を認めているという。
調べに対し、巡査長は「落ち込むような気持ちから解放されたかった」などと話したという。大麻は2020年6月ごろから吸引する目的でインターネットを通じて入手したといい、複数回、購入や使用を繰り返したとみられる。
勤務態度に問題はなく、大麻などの捜査に関わってはいないという。今年5月中旬ごろ、巡査長が大麻を購入しているという情報提供があった。捜査の結果、警察内部での転売や譲り渡しはなかったとしている。
石川博昭警務部長は「極めて遺憾であり、県民の皆さまに対し、深くおわび申し上げる」とのコメントを出した。
県警によると、過去5年間で大麻所持による警察官や警察職員の懲戒処分はない。懲戒免職は2018年、益田市内で飲酒運転事故を起こしたとして20代警察官を処分している。
県民と向き合う姿勢に疑問
現職警察官が犯した大麻所持という不祥事。懲戒免職という最も重い処分と同時に明らかにした島根県警の報道向けの会見は、新聞、テレビとも「カメラ禁止」の制限付きで行われ、薬物犯罪捜査にも協力が不可欠な県民と向き合う姿勢に疑問を残した。
13日午後、県警で行われた会見冒頭で、松本好尚首席監察官は「警察官としてあるまじき行為で、言語道断。県民の信頼を損ね、深くおわびする」と頭を下げた。
ただ、あくまでも「補足説明の場」とし、カメラ撮影は禁止。正式な謝罪は、印刷された警務部長のコメントの形で配布された。逮捕しなかったことについては逃走の恐れがないなどとし、実名公表もプライバシー保護などを理由に勤務先の警察署を含めて伏せた。
飲酒運転事故による2018年の懲戒免職処分はカメラを入れた会見だったが、この日の取材に対し、監察課は「個々の事案を考慮した結果」「カメラは入れないが、謝罪したい気持ちを表現した」などと釈明した。
大麻に絡む国内の摘発人員は右肩上がりで増えており、社会の厳しい目が向けられている。折しも、10月は厚生労働省の「麻薬・覚醒剤・大麻乱用防止運動」がスタート。取り締まる側の呼びかけも、県民の信頼回復なくして、十分な理解も協力も得られない。
(報道部・古瀬弘治)