主人が55歳で、突然、脳卒中で倒れ、生活が180度変わってしまったとき、

それまで、見えていたはずの漠然とした、何事もない未来が、暗黒になって、何も見えなくなった。

それまでは、私は、なんとかして、人並みの幸せがほしいと、願っていました。

弟が、精神障碍者で、父が、脳卒中で身体障碍者で、実母は発達障害で・・・

なんで、私だけ、いったい、何のバチ?と、ずっと、不満だった。

人並みになりたいと、思っていた。

50歳になったころには、だいぶ、あきらめができて、それはそれでも、今まで、一生懸命生きてきた手ごたえを感じ始めていた。

やったら、やっただけのことはある、と、思い始めていた。

その自分が、いかに、甘かったか、思い知らされた。

私には、何の資格もないし、いわゆる手に職が無い。

さあ、一家の大黒柱に倒れられたら、明日から、どうやって食べていけばいい?

息子は、就職していたけど、結婚させなければならない。私だけの力で。

娘は、大学を出たばかりで、職も収入もない。

実家には、精神障害の弟。父は、これより前に亡くなっていたけど。

今まで、自分は、何物でもなく、何もできないくせに、なんという厚顔無恥な、えらそうな生き方をしてきたか!!

思い知ったわ。

本当は、天下の皆々様のお情けにすがって、生かしてもらうしかないのに。

もう、人並みになりたいとか、言ってられない、今日をしのぐ糧だけあればいい。

その日までも、私は、いつも、誰かに、付け狙われて、いつも、引きずり落とされている心地がしていた。

万歳!と叫びたくなるようないいことがあると、必ず、直後に、なにか不吉なまがまがしいことが起きる。

いいことが、いいことだけで収まったことが無い。

なにくそ、この罠から脱出してやる!と、つねに歯を食いしばってきた。

私には、仕合せになる権利があるはずだ。

でも、主人が倒れて、最悪寝たきり、よくても、杖を突いて歩けるが、片腕は使えない・・職場復帰はかなわない。

この状況になり、その結果、婦人会事務局に拾ってもらったのだけど、そこは「大奥・第7サティアン・狸御殿」だった。

いくなり、顔中蕁麻疹になった。ストレスよね。

それでも、生きていくためには、何が何でも、食らいつくしかない。

もはや、これまで。・・・私は、自分を付け狙い、突き落とそうとしている悪霊に、言い返したわ。

「わかった。私が不幸になれば、あなたは気がすむのでしょう。もう、二度と幸せなんか望まない、不幸になってやるよ。不幸しかのぞまないさ。
これで、気がすんだか!
金輪際、仕合せなんか望まない。いくら不幸になっても、平気さ。なんぼでも、不幸にさせるがいい。決して、落ち込んだり、悲しんだりしない。

頭をあげて、どんな不幸でも、真正面から受け止めてやる。もう、逃げない。」

でもね、この不幸は自分の代までで十分だと思った。

子どもや、孫に、同じ悲しみを味合わせたくない。

つまり、先祖のお徳が、無いわけでしょう?

だったら、私が、自分の身を粉にして、尽くして尽くして尽くし切り、仕えで仕えて、つかえ切り、働いて働いて、働き通せばいいのね。


どうやら、私には、前世からの大きな借金と、先祖が残した大きな借金があるようだから、今後一切、着飾ろうとか、いい格好しようとか、仕合せになろうとか、人並みになりたいとか、思わない。


そういう気持ちを封印して、ただ、他のために生ききってやる。

そのあげく「あの人が、あんなに熱心に人のために尽くすのは、よっぽど、カネがもうかるからよ」と、証拠もなくそしられ、なおひどい目に遭った。


もうね、下種な人間なんて、自分が考えることしか、他人も考えないと思うから、ほっとくしか仕方がない。

それに、私は、その報いが欲しいとも思ってはいない。

少しでも借金を返したい、生涯かけても、返せそうにないけど、ひたすら、前世と先祖の借金を返したい。それだけ。


それが、普通の生き方になって身についてしまったから、ともかく、何か、人の役に立てそうだと、そこへ走っていく。

私はね、普通の生き方では、普通の人と同じにはなれないんだから。

100倍払って、やっと、同じになれるぐらいなんだから。

だから、目の前に、大事な仕事が見えてくると、苦労は顧みないで飛び込む。それが、習慣になった。


えらいね。と、言ってもらえるけど、自分では、えらいなんて思ってない。まだ、足りないと、思っている。

ものすごい、借金だからね。お徳の借金。怖いよ。払わなければ、地獄の底まで追いかけてくるよ、鬼がさ。

自分には、お徳が無い。
だから、人と同じことをしていては、人と同じになれない…そう肝に銘じた。

そういうことなの。

これとは、別の問題だけど、「他人に尽くす」って、難しいのよ。自分では、これでいいと思っても、かえって、相手を傷つける、ただの自己満足ってのがあるからね。

そう、私が生き方をかえたのは、自分の本当の姿を知ったから。
自分の小ささ。
おろかさ、
たりなさ、

自分が、どれだけ足りないか、はっきり知った時、そこで、開き直った。
よし、この小さな5尺の身体、命がけで、戦ってやろうじゃないの。
結果は、求めない。

その時、少しだけ「とらわれ」「執着」を、離れることができたの。

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