天寿を全う?治療を断念? 日本の死因3位は「老衰」、診断は適切か
2018年以降、日本では死因の3位に「老衰」が位置しているが、実は世界では一般的な死因ではない。ウォール・ストリート・ジャーナル日本版の論考「老衰は死因? 日本の医師に異論少なく」は、高齢を理由に施すべき治療がなされていない懸念もあるとして、「老衰の使いすぎ」に警鐘を鳴らす。
今回の論考
今月の論考
Miho Inada 「老衰は死因? 日本の医師に異論少なく」(ウォール・ストリート・ジャーナル日本版、9月16日、 https://jp.wsj.com/articles/can-you-die-of-old-age-more-doctors-are-saying-yes-11663304190 )
世界の死因上位10位には含まれず
老衰を死因とする「老衰死」が増えている。厚生労働省の調査によると、18年、老衰は脳血管疾患を抜いて死因の3位に浮上。21年まで4年連続で1位はがん(悪性新生物)、2位は心疾患、3位は老衰だった。
論考のなかで、老年学が専門の井口昭久・名古屋大学名誉教授は「『いろいろ病気はあるけれども、おばあちゃんだから老衰にしましょう』。最近はこんな感じだ」と述べている。関西で終末期医療に携わる長尾和宏医師は、老衰は「自然な最期」と考え、毎年署名する死亡診断書のうち、約半数の死因を老衰としているという。
一方、世界保健機関(WHO)による世界の死因上位10位(19年)に老衰はない。論考は、医師が死因を特定する時に用いるWHOの国際疾病分類に老衰が加えられたのは、最近になってからとしている。
論考は「(老衰の)使い過ぎには懸念が残る。(略)医師や医療スタッフが高齢患者の不調の原因を見つけようとしなかった、あるいは有効だったかもしれない治療を断念した可能性をにおわせる場合はなおさらだ」と指摘する。
■明確な診断プロセスなく、標…